「 色喰夜会 」 第 四 話 | |
オンナたちの声が煩い。 甲高い声でずっと『服部く〜ん!』言うて平次の名前を連呼しとる。 アタシがここに居るのに… ちょっと、席外してもええかな。 平次は急がしそうやし、平次のお友達に頼んだらお仕事の邪魔になってしもて、ええ子やのうなってまう。 「あの…」 アタシは仕方無く、隣の席に居る人に声を掛けることにした。 「あの…誰か居てはりますか?」 確かにそこに居るはずやのに、何も答えてくれへん。 「あの…」 「あたしたちに何かご用ですの?」 「あの、よかったらお手洗いまで連れ行って貰えたら思うて」 オンナたちはまた数人で何か相談でもしてるんか、直ぐには返事してくれへんかった。 「それくらいでしたら、喜んでご案内しますわ。どうぞ、掴まって」 良かった、ええ人みたいや。 アタシはその女の人たちに優しく誘導されて、お店になってるであろう部屋をそっと出た。 2人の女の人がアタシの左右の手を引いて、多分もう1人居るやろう人がアタシラが通り易いように人を除けてくれているみたいや。 「こないにまでしてもうて、ほんまおおきに」 「気にしないで。なんたって、あの服部くんの奥様だもの」 「ねぇねぇ。それより服部くんて普段はどんな感じなの?」 「あっそれ、私も聞きた〜い!」 この人らは関西弁やないから、もしかして今日は平次に会いに来たんかな。 「皆さんも京大に通うてはるの?」 「違う。違う。私たちそんなに頭良くないから」 「私たち今日ね。服部くんに会いに、横浜から来たのよ」 「だって、この学祭の3日間は私たち部外者でも生の服部くんに会えるチャンスだから」 大学に入ってから、平次のファンは増える一方や。 そんな遠くから、わざわざ平次を一目見るためだけに来るやなんて。 「………」 それからもお手洗いに着くまで、ずっと平次のことばっかりやった。 「着いたわ」 「なんか…えらい遠くまで来た気ぃするんやけど…」 「あっちのトイレは人が多くって、ちょっと離れちゃったけど隣の棟まで来たのよ」 「そうなんや…ほんまおおきに」 「さっ、どうぞ」 言うて個室の前まで、連れて来てくれた。 アタシはもう一度お礼を言うて、ドアを閉めた。 それから手を彷徨わせていると、 「あんたちょっと目が悪いからって何様のつもりなの?」 って声が聞こえた。 「どうせ、それで服部くんに取り入ったんでしょ?そうじゃないと服部くんがあなたみたいな子と、結婚なんかする訳ないものね」 「あ〜服部くんが可哀想〜」 「ほんと。ほんと。これでも被って少しは頭冷やしたら」 「ひゃ!」 頭の上からぎょうさんの冷たい水が… オンナどもの嘲笑う声が聞こえる。 『身の程を知りなさいよ』『早く服部くんに捨てられてね〜』言うて出て行く音がする。 「あ……あぁぁ……」 豹変したオンナのことなんて、どうでもいい。 こんなコト、今に始まったことやない。 「……んっ…あ…あん…」 あんなオンナがどんなに足掻いたかて、平次を満足させられる訳がない。 「はっ……う…んん……」 そんなん…よ…り………水が…… 「和葉さん?」 冷たい水が体中に刺すような痛みを… 「ん……」 「和葉さん?居てるんやろ?」 あ…誰かの声がする… オトコの声… 「和葉さん!俺や谷川や!居ったら返事してくれ!」 タニガワ… ヘイジノトモダチ… アタシは静かに鍵を外して、ドアを開いた。 「かず…は……さ……………」 そこに居ったのは、たぶんヘイジノトモダチ。 全身ずぶ濡れで、冷たい水がくれる痛みに酔い痴れてるアタシはヘイジノトモダチにどう見えるんやろ。 「っ…」 声に成らない音を発してヘイジノトモダチの気配が、段々タダノオトコのモノに変わっていく。 欲情したオトコ…に… 「んっ!んんん……」 気付いた時には口を塞がれ、後ろの壁に押さえ付けられとった。 オトコの舌が無理矢理入り込んで来て、アタシの口の中を舐め回す。 「はぁ…ん…」 濡れた服の上から胸を揉み上げられ、思わず甘い声が零れてしまう。 アタシを逃げられないようにする為なのか、ドアに鍵を掛ける音もした。 「っ…いやっ…」 逃れようとしても水の刺激に邪魔をされて、体に力が入らへん。 「誘ってるんやろ?」 「ち…ちが…んんん……」 太腿の間に足を入れられて、スカートの中に入って来た手をどうすることも出来ない。 「あっ…」 「もうこんなになってるやんか?」 オトコの指がアタシの中に… 「ああああ…あん…んん……」 痛みの悦びを感じていたアタシは、それだけで軽い快感を覚えてしまう。 「服部には黙っといてやるから。なっ?」 「へ…いじ…に……」 「ばれたら怒られるで」 平次に怒られる… 「い…いや……」 「そやろ?やから服部には内緒や」 ご褒美が貰えんようになるんは…いやや…… 「……ええ子に……しとらん…と……平次に…」 「そうや。俺は服部のダチやで。旦那の友達を持て成すんも嫁の務めや」 「アタシの…つと……め……あああんん」 オトコの指がアタシの中で… 「影から旦那を支えるんを、内助の功言うやろ」 「あっ……んん……へい…じ……の……はぁ……ため……」 「ええ子にしとるんやろ?」 「んんん………うん……」 ええ子にしとったら……ご褒美…… 「やったら、服部には内緒でええよな?その代わり、俺がさっきのオンナどもを懲らしめたるから」 「アタシ……ええ……子……や…もん……」 ええ子にしとったら……平次がご褒美……くれる…… それに……このオトコがオンナを懲らしめてくれたら……平次に纏わり付くオンナも減る…… アタシはオトコに言われるがままに身を任せて、一時の快楽に溺れていった。 |