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和葉んヤツは結局ねぇちゃんと同じ大学に行ってしまいよった。 俺があれほど、うちに来い言うたのにや。 あいつあれでも十分にうちに入れるだけの頭があんのやで。 それやのに・・・・・それやのに・・・・・・・何でやねん。 「・・・・じ。ちょっと平次!!」 「・・・・・・。」 「服部平次!!」 「へっ?」 「へっ?ちゃうよ!!あんた何やってんの?」 「何っておまえ・・・・・。」 俺は自分の手元に視線落とした。 ありゃ・・・・こらあかん・・・・・・・・芋がペラッペラになっとる・・・。 「まったくもう。何でお芋の皮むきが出来へんのぉ?スライサーでシュッシュッってやるだけやんかぁ。」 和葉が呆れた顔で覗き込んで来た。 俺が抱えとるボールん中には、皮も実ぃも一緒になったうっすいモンがぎょうさん入っとった。 「これやあかんかぁ?」 「・・・・・・・。」 「新一!そのまま切っちゃダメ〜〜〜〜!!」 ねぇちゃんの声に顔上げたら、工藤がにんじんをぶつ切りにしとるとこやった。 「なんでだよぉ蘭?!切りゃいいんだろ?切りゃ?」 「皮も剥がずにどうするのよ!」 「はぁ?にんじんの皮って剥くのか?」 「・・・・・・・。」 工藤ん前のまな板の上には、元はにんじんやったんやろう物体が転がっとる。 しかも、大きさも形もバラッバラや。 「こんくらい構わねぇだろ?」 「にんじんの皮って硬いのよぉ〜。そんなコトも知らないの新一?」 「・・・・・・・。」 ほぉ〜、工藤でも知らんコトがあるんや。 俺も知らへんかったけど・・・・にんじんの皮は硬い・・・・覚えとこ。 「あかんわ〜〜蘭ちゃん。これやったら、カレーすらまともに出来へんわ〜。」 「和葉ちゃんの言う通りね。でも、他に何かある?この2人でも作れそうなモノって?」 和葉は腕組みして眉間にシワまで寄せて考え込んどるし、ねぇちゃんは腰に手ぇ当てて俺らを見比べとる。 天下の名探偵と歌われとる俺と工藤が、何が悲しゅうて台所で野菜片手にこんなにコケにさなれなあかんねん。 そもそも料理は、お前らの担当やろが。 工藤も俺と同じこと思うてたんやろ、しっかり目が合うてしもた。 そんで、同時に溜息や。 この状況に陥った原因が、俺らにあるんやからな。 そもそもの敗因は和葉に、「合格祝いは何がええんや?」て聞いたことやな。 今更後悔しても遅いんやけど、あれは聞くんやなった・・・。 あれさえ聞かへんかったら、こん状況は訪れんかったはずや。 「何でもええん?」 「おお、何でもええで。」 「あんな・・・・平次と工藤くんの手料理。ずっと食べてみたかってん・・・・。」 あんまりに予想外の答えやったから、俺も工藤も固まってしもた。 やってそうやろが。 普通お祝いで欲しいモン言うたら、時計とかバックとかやろ? それが何で俺らの手料理やねん。 「やって・・・・いっぺんも作ってくれたこと無いやんかぁ・・・・。」 そらぁ、お前らがおるからなぁ。必要無いやんけ。 「やっぱあかん・・・?」 ・・・・・・・・。 そんなウルウルした目ぇでお願いすんな・・・。 「新一もお願い!和葉ちゃんのお祝いなんだから。ねっ。」 「・・・・・・。」 工藤もねぇちゃんのお願い攻撃には、勝てた試しが無いんや。 「しゃ〜ないなぁ。」 「特別だぜ。」 俺らはそう言うて、それから台所に篭ったんや。 1時間程やったけどな。 ドンガラガッシャン!! たったそんだけの時間で、工藤ん家の台所は見るも無残な状態になってしもた。 和葉もねぇちゃんも開いた口が塞がらんのか、ポカ〜ンちゅう顔して入り口に突っ立ったとったしな。 俺らはそんまますぐにそっから放り出されて、和葉らが台所を元ん状態に戻すまでに半日掛かったんや。 やから、昨日の夕飯は弁当やった。 そんで今朝、朝食喰うとるときに、 「やっぱ平次らに料理は無理やったんや・・・。」 「そうね。私もあそこまで悲惨だとは思わなかったな・・・。」 なんぬかしとる。 「あれはどう贔屓目にみても才能無いわ・・・。」 「もう才能以前の問題よ・・・。」 ほんで2人揃うて俺らを見てから、ワザとらしう大きな溜息吐きおってからに。 「諦めなあかんね。」 「しょうがないもんね。」 そこまで言われて、俺らが黙っとるワケないやろが。 「な〜に勝手なことぬかしとんねん。」 「やって事実やん。」 「オレに不可能は無い!」 「新一。格好つけても、ご飯粒付いてるわよ。」 「「・・・・・・・。」」 工藤はねぇちゃんの前では、ほんま決まらんヤツや。 ねぇちゃんに口ん横についとったご飯粒とってもろとるし、顔もニヤケとる。 「もうええて、適わぬ夢やったて思うて諦めるし。」 ・・・・・・・。 俺らの手料理は、そんなに絶望的なことなんか? 「お前らが教えんからやで。」 「「?」」 「俺らにやって作れるモンくらいあるやろが?」 あっ・・・こんセリフ・・・・・なさけな・・・・・。 「平次・・・料理教えて欲しいん?」 「おお。」 「新一もなの?」 「・・・・。」 工藤・・・・ここまで来て逃げんなや。 ジト目で睨みつけてやんねん。 一蓮托生やで工藤。 「・・・・・・・・・・ああ。」 それでええねん。さっさと返事せんかい。 和葉を悲しませるなん、絶対に許さへんで。 そんでこの状況や・・・。 しかも、さっきより悪なっとる。 和葉が悲しむ前に、俺が悲しゅうなってきたで。 この・・・この・・・・・・ ピラッピラッでヒラッヒラッのレースちゅうもんがぎょうさん付いてるエプロンは何やねん!!! 俺がピンクで、工藤が純白や・・・・・・。 「やっぱ格好から入らんかったからあかんかったんやわ。」 そういう問題か? 「ホワイトブリムもお揃いで買っててよかったね。」 こん頭に乗っとるモンのことか? 「「 ・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ。 」」 笑うんやったら、ちゃんと笑えや・・・・・・。 「「 ・・・・・・・・・・・・・・・ぎゃはははは〜〜〜〜〜〜!!!くっ・・・・・・・・苦しぃ・・・・・・・・・・・・。 」」 和葉とねぇちゃんは、涙流しながら笑い転げとる。 俺と工藤の額には、ピキピキと青筋がぎょうさん出来てんで。 「工藤。」 「服部。」 「俺らの料理言うたら。」 「やっぱそうだよな。」 俺らの殺気に気付いたんか、和葉とねぇちゃんは一斉に逃げ出しよった。 逃がさへんで! 絶対に料理したんで和葉! まずは、裸エプロンからやな。 工藤と目認し合って・・・・・・・・・・・って・・・・・・・・うげぇ・・・・・・キモ過ぎやで工藤・・・。 あん?何や?そん顔は? あかんあかん・・・・・お互いに気持ち悪なってる場合やない。 俺らは気ぃ取り直して、ピチッピチッの生きた食材を料理するべく収獲に向ったんや。 「 か〜〜〜ず〜〜〜は〜〜〜!!!そんカワ剥いだんで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!! 」 「 ら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!まずは水洗いからだ!!綺麗に洗ってやるぜっ!!!!」 料理なん愛情が篭っとればええんやろが! ぎょうさん愛情詰め込んだるからな〜〜〜〜〜和葉!! 心して喰えや!!! |