「うわっ・・・まず!」
冷蔵庫の牛乳を一口飲んで、吐き出してしもた。
「何やこれ?」
改めて賞味期限を確認すると、10日以上も前やった。
ありえへんで。

俺が東京の大学に進学して、もう2年や。
1人暮らしにも慣れてしもた。
それやのに、こんなアホなことを偶に仕出かしてまう。
だいたいが事件の依頼で、何日も部屋に帰ってへん時や。
「気持ち悪。」
何度かうがいをしてから、今度はビールに手ぇ伸ばした。
ついつい缶をひっくり返して賞味期限を確認してしもたんは、ご愛嬌や。

「あいつがおったら・・・・。」
ビール片手にベットを背凭れに座り込んで、そんな声が聞こえた。
それが自分の声やと認識するんに、時間が掛かってまう。

今更、何言うてんのや。

あいつを大阪に残して来たんは俺自身やないかい。
あいつも笑顔で俺を送り出してくれたやんけ。

こっちに来たばかりのころは、あいつも暇があったら遊びに来とった。
ねぇちゃんとこに泊めてもろて、嬉しそうに俺や工藤の通う大学を覗きに来たりしとったんや。
そやけど、いつの間にかその回数も次第に減っていって、もう半年以上もあいつの顔を見てへん。
顔を見てへんどころか、声すら聞いてへん。

「元気にしとるんかぁ・・・・和葉。」

これも無意識に出た声やった。
今の俺・・・・・めちゃくちゃ情けないんとちゃうかぁ・・・・・・。
こんなにあいつのことが頭から離れへんのは初めてや。

今回の事件がそういった怨恨やったからやと、自分に言い聞かせてみても最後には同じ状態に戻ってまう。
所謂、堂々巡りちゅうやつや。


「ええ加減、認めたらどうや服部平次・・・・。」

・・・・お前に足りへんのはあいつやと。


まさに自問自答してるで俺。
ほんま、あかんでこれ。

幼馴染言うだけで、あいつが側におってくれることはもう無いんや。
残念やけど、幼馴染の有効期限は切れてしもたんや。

やったら、自分で手繰り寄せるしか無いやんけ。

「あいつもナマモンやからなぁ、賞味期限があるかもしれへんなぁ。」

それやったら、尚更急がなあかんやんか。
突発的な行動力、フットワークの軽さは俺の十八番や。
俺は、飲みかけのビールを机に置くと、鍵を持って部屋を後にした。



最終ののぞみに飛び乗って、大阪で阪急に乗り換えて、あいつが居る神戸に辿り着いたんたんは午前さまやったんや。
俺はあいつが住んどる所に行ったことは無い。
電柱にある住所とあいつが言うとった建物の外観を頼りに、俺がなんとか目的のコーポを発見したんは神戸についてからさらに1時間以上経った後やった。
部屋の明かりは案の定消えとる。
とっくに寝とるんか、部屋に居らへんのか。
ここまで来て、迷ってもしゃぁない。
俺はあいつの部屋の前まで辿り着いた。
表札にはきちんと遠山と書いてある。
間違い無い。あいつが居る部屋や。


 ピンポ〜ン。

なんの反応も無いで。

 ピンポ〜ン。ピンポ〜ン。

何か音はしたんやけどなぁ。

 ピポピポピポピンポ〜ン。

「もう誰やの!!今何時やと思ってんの!!」

おっ!おった!!

「俺や!俺!」
「俺って・・・・だれ〜?」
「寝ぼけんなや!俺やっちゅうてるやろがっ!!」
「・・・・・・・・平次ぃ?」
ガチャリとドアのロックがやっと外れた。
「久しぶりやな和葉。」
和葉は大きな目ぇをさらに大きゅう見開いて、固まっとるで。
「しゃきっとせんかい。」
「へ〜じ・・・・・・何・・・・・・してんの?」
和葉んヤツはまだ夢でも観とる様な感じや。
「おまえに聞きたいことがあって来たんや。」
「あたしに・・・・?」
「そや。お前の賞味期限まだ切れてへんか?」
「はぁ?」
目ぇ擦りながら顔中に?撒き散らしとる。
「俺が和葉んコト喰うてもええかって聞いてんのや。」
「はぁ〜〜〜?!」
益々、?が増えたで。
「おまえ男おるんか?」
?な顔したまま和葉の首が左右に揺れた。
「やったら問題無いな。」
俺は訳が分かってへんままの和葉を抱き寄せた。
「これから先も無期限で俺の側に居ってくれや。」
そんまま俺は和葉の返答も待たずに、まずはその唇から喰うことにした。


こっからは、誰にも教えてやらへんで。
当然やろ。


まぁ、しいて言うなら、美味かったっちゅうことくらうやな。






noveltop contens
はい、「残念ですけど、有効期限は切れました」でした。
こっちも、もうご存知の方も多いと思います。
そうです。「やっと逢えたちゅうわけか」さまに投稿させて頂いたお題bQ3です。
「笑顔・・・」が和葉バージョンで、こっちが服部バージョン。
こっちは少しは私が出てるかなぁ?
どっちにしても、自サイトにUPするのは恥ずかしい/////。

by phantom