―イケイケ悪女ちゃんシリーズ2―




「はぁ〜、行ってしもた・・・。」
白いハンカチを振ってあたしは平次を見送った。
平次はこれからの4年間を、東都大学のある東京で過ごす。
あたしは阪大やから、もちろん大阪や。
2人の関係は、ただの幼馴染のまんま。それ以上でも、それ以下でもない。
あたしは手に持っていたハンカチを、クシャクシャに丸めてゴミ箱へ放り込んだ。

「  よしっ!!リセット完了や!  」

平次への気持ちを綺麗に白紙に戻して、バイバイあたしの初恋。

・・・・・・・初恋に18年間て・・・・・・・ちょ〜青春使い過ぎたわ・・・・・・・。

これから、ちょっと早いけど第2の青春や!
早よ、あの鈍感男に使うた分の春を取り戻さな!


髪を下ろし、薄くお化粧もして、あたしは新しい場所でスクールライフを満喫した。

そこで、気ぃ付いたんやけど・・・・・・・・あたしってモテルん?

最近よく、色んなタイプの男の子から声掛けられるんやけど。
コンパや合コンのお誘いも多いし。
見た目は高校ん時とあんまし変わってへんと思うんやけど、何でなんやろ?
ポニーテールが似おうてへんかったんかなぁ?
それとも、改方のセーラーがあかんかったんやろか?
高校時代にモテタいう記憶は無いんやけど・・・。
何が違うんやろ?

まっえっか。

今、モテルんにこしたことはないわ。

今度こそ、絶対ええ男捕まえるんやから!


そんなこんなで、あっという間に夏休み。

今日は服部邸で、おっちゃんやおとうちゃんたち府警の人らが集まって宴会するいうから、あたしはいつものごとくお手伝いや。
おばちゃんや家政婦の人らと慌しく準備しとる最中に、ひょっこり平次が帰って来た。
「帰ったで〜〜〜。」
あたしはお盆を持ったまま、廊下の角から顔を出して、
「あっ、お帰りぃ平次。」
言うて笑顔で迎えたんや。
それやのに、平次はあたしの方見て固まってしもた。
「どないしたん?」
「えっ、あっ、なっ何でもないわ。それより、お前は何してんねん。」
「見て分からへん?」
「おかんの手伝いか。今日は何や。」
「おっちゃんらの宴会やねん。平次も参加する?」
「何時からや。」
「多分7時くらいやと思うけど。」
「やったらそれまで寝とるから、時間になったら起こしてくれ。」
「ええけど・・・・平次ちゃんと寝てるん?目の下クマ出来てんよ。」
あたしはそっと平次の顔に触れた。
すると平次はピクッってしたんや。
「ほっほな、頼むわ。」
そのまま、階段上がって行ってしもた。

あたしはまたお手伝いに戻っていった。

平次はバイクを取りに帰っただけやっていうてたのに、何やすぐには向こうに帰らんかった。
しかも、妙によそよそしかったり、不気味に優しかったり。
何なんよもう・・・。
あたしは色んなお誘いとかがあって、帰りが遅うなることが多かったんや。
そしたら、平次は決まって電話して来て迎えに来る。
送ってくれる人がいる言うても関係なしにや。
ほんまに何なんよ・・・・。
今更、構うてくれへんでもええのに。
ただの幼馴染なんやろ、あたしら。

・・・・・・・・・・優しくされたら、あたしはまた動かれへんようになってまうやん。

・・・・・・・・・・やっと自由を手に入れたのに。

もしかして、逃した魚は大きかったって思うてんの?

そんなん認めへんよ。
あたしが今まで、どれだけあんたに振り回されて傷付いてきたか知らへんくせに。
あたしの青春返せ!ぼけっ!

平次無視して、あたしは遊び続けてやった。

「お前、大学入ってからずっとこんなんか?」
「毎日ってわけやないけど・・・・・結構誘われんねん。」
「おっちゃん何も言わへんのか?」
「お父ちゃん?お父ちゃんは学生の本分さえきちんとしとったらええって言うてくれたわ。外泊はあかん言われたけど。」
「あたりまえや! ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  !」
どこのおやじやねん!いうくらい平次の小言は延々続いたんやで。
「こらっ和葉!聞いてんのか!」
「はいはい、ちゃ〜んと聞いてます〜。」
「お前なぁ〜・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
いきなり黙り込んでしもた。
今度は何なん?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・男・・・・出来たんか・・・・・・・・・・・。」
はい?
おとこ・・・・・・・・・って言うた?
急に声小そうなるから、よう聞き取れへんかったけど。多分、彼氏のことやんな。
「まだ、やけど・・・・。なかなか、ピンと来る人が現れへんねん。平次こそ、モテルんやから彼女くらい出来たんちゃうの?東京やったら、可愛い子ぎょうさんいてそうやし。」
「・・・・・おらへん・・・・・・。」
まだ、彼女おらんのや・・・・。
何やちょっとドキドキしてきたかも・・・・。
「・・・・・・・・・・・俺・・・・は・・・・・・・・・・・・。」
俺は?
「・・・・・・・・・・・そ・・・・・の・・・・・・・・・・・。」
その?
「・・・・・・・・・・・アレや・・・・・・・・・・・・・・。」
どれ?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だ〜〜〜〜〜〜〜〜やっぱあかん。俺帰るわ。腹出して寝んなや和葉。」
・・・・・。
そのまま、帰ってしもた。
しかも、次の日にはあっちに行ってしもた。


あ〜〜の〜〜へ〜〜た〜〜れ〜〜〜〜!!ふざけんなぁ――――――――――――――――――!!!


せっかく、あたしが平次振り切って新たな青春を見つけようとしとるのに、なにさらすねん!

どうしてくれるんよ!この中途半端なイライラは〜〜〜!!

あ〜〜そ〜〜!よ〜〜〜分かった!

そっちがその気なら、あたしんやって考えがあんで!

この恋やっぱ一度きっちりカタつけなあかん。
そやないと、あたしは本当の自由を手に入れられへん。


落としたる。


絶対、平次をあたしの前に跪かせたる。




覚悟しいや、平次。






noveltop contens
読んでくれてありがとうございます。
「イケイケ悪女ちゃんシリーズ 2 」でした。
和葉はきっと、その気になれば服部をふっきれると思うんですけど・・・・・ちゃう?
で、そうなったら今度は服部が和葉のことが気になりだすはず。
和葉にはきっぱり振って欲しいものです・・・・・・・・・・鬼。
ってか、しっかり蹴散らしてんですけどね・・・・・・・・・・あそこで。
by phantom