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■ 今何所におるんや? ■ − 春夏冬中シリーズB − by phantom 「ぐぁ〜〜疲れた・・・」 依頼先のオヤジに付き合うんやなかったで。 車で行っとったんがせめてもの救いや。 そやなかったら今頃ぐでんぐでんで爆睡かましとるとこやで。 「怒っとるやろなぁ・・・はぁ〜・・・」 助手席の酔っ払い女に目ぇやって、我ながら情けなっちゅうような溜息が出た。 今日の依頼自体は大したモンやのうて、思うとった通りにあっさり解決したんやけどなぁ。 その後が不味かった。 依頼主がお得意様いうんもあって、飯ご馳走します言う言葉についつい断りそびれてしもて付いていったら立派な料亭や。 しかも何勘違いしとんか芸子までぎょうさん呼んどって、どんちゃん騒ぎ始めてもうた。 挙句の果てには、このガキまで調子に乗って飲めや歌えの大騒ぎやで。 悪酔いしたオヤジとこいつだけでも面倒やのに、厚化粧のねぇちゃんらが周りに纏わり付いて鬱陶しゅうてかなわんかった。 お蔭で和葉への連絡すら出来へんかったやんけ。 駐車場に車を止め、3階にある事務所見上げたら案の定まだ灯かりが点いとる。 「机で不貞寝しとるんに1000円」 どうせ暫らくは起きへんやろう五十嵐夏穂を助手席に残したまま車にロックを掛けて、取り合えず先に和葉のご機嫌をとることにした。 事務所のドアにはきっちり鍵が掛かっとったから、ポケットから車の鍵と一緒に付いとるそれで開け、和葉を起こさんようにそ〜とドアを開けた。 物音を立てんよう細心の注意を払うて中を覗いたんやけど、和葉が居らん。 「和葉?」 一瞬仮眠室かとも思うたが、俺の机の上にある見慣れんもんに気ぃ付いた。 急いで机に近寄ってソレを確かめたら、 「なっ!なんやと〜〜〜〜〜!!!」 大声も出るっちゅうねん。 KIDがいつも予告状に使うとるカードに和葉の筆跡で、『 KIDと不倫してきます 和葉 』やで。 どないなっとんねん?! 窓とういう窓、部屋いう部屋、それにロッカーや棚まで調べたんやが、やっぱ和葉は何処にも居らん。 しかもドアには鍵が掛かっとったし、窓にも全部ロックがされたままや。 ふと気になって和葉がいっつもバックを置いとる机の下を覗いたら、それはそのままそこに在った。 バックの中を確認しても、鍵の束も財布もそのまま在る。 「ほんまにKIDと・・・」 一概には信じられんコトやが、このカードはどっからどうみてもホンモンに間違いない。 しかもや、KIDのカードに和葉が自分で書置き残すて、どういうことやんねん? そもそも何でアイツが大阪に居んねん? KIDをずっとライバル視して追い掛けとるんは工藤や白馬であって、俺や無い。 その工藤からもアイツがこっちに現れるなん聞いてへんで。 だいたい和葉浚うて行くちゅうとは、どういうこっちゃ? いやいや、ひょっとしたら、このカードん通り和葉が自分から付いて行ったんか? 持っとるカードに視線落としたら、『不倫』ちゅう言葉がえらい目に付いてしもた。 「不倫・・・」 勿論意味くらいしっとる。 男と女の関係で道徳に反しとる行いのこや。 「和葉が不倫?」 何やピンとこん。 あの和葉が俺を裏切る? 絶対に有り得へんと言い切れるが、相手がKIDやと思うと違う不安が無いことも無い。 「まさか・・・な・・・」 俺の思考があらぬ方向に行きかけた矢先に、携帯が場違いな音を出しおった。 「和葉!」 それは和葉が勝手に設定した和葉専用のメール着信音や、ぽにょぽにょいうとる。 慌てて携帯開いて確認したら、 「・・・・・・・・・・」 どえらい写メを送って来よった。 「あんボケが〜〜〜〜」 俺以外の男にそんな姿を見せおって! 「俺かてまだ見てへんのやぞっ!!」 直ぐに和葉に電話した。 「こ〜ら〜和葉!!お前何やっとんねん!!」 『あっ平次?なぁなぁ写メ見てくれた?結構綺麗に撮れとったやろ?』 「な〜にが綺麗に撮れとったや!!どアホッ!!何勝手なことしくさっとんじゃっ!!」 『やって〜平次帰って来ぃへんから暇やったんやもん』 「お前は暇やったら、誰んでもホイホイ付いて行くんかいっ!!」 『そやで?知らんかった?』 「・・・・・・・・・・」 『平次は綺麗な女の人に囲まれて楽しそうヤッタネ』 「うっ・・」 『あたしなあん時、丁度真上から見とってん。アンタデレデレヤッタヤン』 語尾がだんだんトゲトゲしゅうなってるで。 『アンタカテ、スキカッテシトルンヤカラ、アタシカテスキなヨウニサシテモラウデ!』 下手にくっきりはっきり言われると、逆に分かり辛い。 「と・・とにかく、今何処におるんや?」 『ココ』 「・・・・・・・・・・」 ココで分かるかいっ! 「直ぐ迎えに行ったる!そやから、何処やねん?」 『迎えやったらいらんよ。KIDが送ってくれる言うてるし』 「ア〜ホ〜カ〜〜!!いつまでそいつと居るつもりなんじゃ!!」 『え〜と?もうちょっと?』 俺の剣幕なん何処吹く風で、和葉んアホが呑気に答えとる。 「つべこべ言わずに、さっさと場所言わんかいっ!!」 『イ〜〜〜ヤ!!約束一つまともに守れん男のお迎えなん、待ってられへんわ』 「なっ・・」 『あたしもうちょっとKIDと遊んでから帰るから、平次は先に寝とってええよ〜。ほな、おやすみ〜』 「おいっ!こらっ!」 勝手に切りおった。 そや、GPS! そう思うてアクセスしたのに、あのアホ携帯の電源まで落としおったな。 「まったく何が上から見とった・・や・・・・・・・・上から見とった?」 ちゅうことは北浜方面か? 上から見えたとなると、店出る時やな。 あの時間にその上空を通過したっちゅうことは・・。 俺はすぐさま地図を広げて、その場所を探した。 再度携帯の画像を確認する。 1枚目の和葉のアップには背景らしいもんは何も写ってへんかったが、2枚目の全身写しとるんに微かやけどそれらしい建物んが在る。 「ぼやけとるけど教会やな」 事務所から料亭までを直線で結ぶ。 「この延長上にある教会か」 ネットで検索すると以外にも多くがヒットしよったが、大阪でこの写メみたいな建物があるいうたら限られてくんで。 「これや!」 見つけたんは教会いうても、ホテルの屋上にある結婚式用の建物や。 「車で小1時間いう・・」 頭ん中で移動時間を考えとったら、またあのふざけた音や。 今度はメールを確認せずに、 「か〜〜ず〜〜は〜〜〜〜〜!!」 速攻電話して叫んだった。 『キャ・・・・・・・・・・。も〜鼓膜破れるかと思うたやん』 「うっさいんじゃ!そこはフランソワーズホテルのラムール教会やな!そやな!?」 携帯の向こう側で、『ここってラムール教会?』言うて聞いてる声がすんで。 お前は自分が何処に居るんかも知らんのかぁ? 『そうやて。流石平次やなぁ!よう分かったね』 凄い凄いを繰り返すに和葉に、何や頭痛なってきたで。 まったく・・・能天気にも程があるやろが〜〜! 「これから30分で迎えに行ったる!!絶対にそこを動くんやないで!!ええな!!」 そう言い聞かせて和葉の反論を聞く前に通話を終了させ、携帯をポケットに仕舞いながら俺と和葉のメットを掴み、そのまま事務所を飛び出した。 あのボケ女〜〜〜!! 見つけ出したら、嫌ちゅうほどお仕置きしたるからな〜〜〜〜!! 絶対に逃がさへんで、覚えとけや和葉!! |
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「和葉で頭がいっぱいで、すでにKIDと五十嵐夏穂は眼中に無い平次でした。(笑)」 by phantom ■春夏冬中シリーズ■ @OFF19「春夏冬中」AOFF31「不倫や〜〜!」BOFF02「今何所におるんや?」 C仕事12「服部探偵事務所24時」DOFF25「引き出しの奥の小箱」E仕事21「盗聴器にご注意!」 |
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