■ 今何処にいるの? ■ by 月姫
 

今日は事務所は臨時休業。
ここの所働きづめやったし、気分転換を兼ねてアタシは久しぶりに買い物へと繰り出した。
 
ホンマはね、折角のお休みやからデートしたかったんやけど、オジチャンとオバチャンに呼び出されて昨夜から実家に帰っとる平次はどうにも出かけられる様子がなさそうやったから諦めた。
そもそも、今日の休暇やって、実家から平次に緊急招集がかかったから急に決めた事やったし。
 
「何やったんやら」
 
仕事は順調で実家に迷惑かけるような事もしとらんハズやし、お祝い事なら前から予定しとるやろから急に呼び出しなんないやろし、弔事ならそれこそ待ったなしやから直で行くし……。
学生ん時ならいざ知らず、この歳んなって両親から呼び出される理由て、何かあったっけ?
 
つらつら考えながら歩いてたら、自分のものを買うつもりで来たんに、気が付けば紳士服のコーナーで平次のシャツを選んだりしとる。
スーツはやっぱり本人に着せてみなな、なんて考えとる自分に苦笑しながら時計を見ると、お茶に丁度いい時間になっとった。
 
「あ……」
 
ショッピングモールのカフェで外を眺めながら冷たいハーブティーを楽しんでいたら、ポケットの中で携帯が震えた。
メールのアイコンに開いてみれば、送信者名は平次。
件名はなしで、本文には『脱出成功!』とだけ書いてあった。
 
「脱出て事は、途中で抜け出したんやね」
 
逃げ出したらまた呼び出されるだけやと思うけど、オバチャンからの追撃のメールはまだアタシんトコには来とらんし、今日の所は大目に見たってもええて事かな?
 
そんなら、気疲れしとるやろう名探偵殿呼び出して、何かおいしいものでもご馳走したろ。
晩ゴハンにはまだ早いから、それまでは買い物に付き合うて貰てもええな。
……どっちが主になるかは、平次次第やけど。
 
くすっと笑って、平次の携帯を呼び出す。
2度目のコールが終わる前に、ちょっと疲れた平次の声が聞えた。
 
「今何処に居るん?」




「呼び出しの内容は秘密v今でも両親と遠山父には頭が上がらない名探偵殿です(笑)」 
                                                 by 月姫