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■ お夜食 ■ by 月姫 目が覚めたら、見慣れた平次の部屋にいた。 確か、下の事務所にいたハズなんやけど……。 腕時計見よう思て腕を上げたら、何故かぶかぶかな白いシャツを着とる。 アタシ、スーツやったのに……。 何だかだるくて起きたないし、頭もよう回らへん。 それでも何とか記憶を辿ってみた。 確か、内容的には大した事ないんやけどやたら時間掛かりそうな依頼があって、お世話になった人からどうにか受けたってくれへんかて口添えがあったから断るに断れんくて引き受けて、やっぱり長引くだけ長引いた依頼がやっと片付いて夕方遅くに事務所に帰って来て、平次に『お疲れ様』って言うた所までは覚えとるんやけど。 なのに、何で平次の部屋のベッドで寝とるん? ……ちょお待って、このぶかぶかのシャツって平次のやんな? ぐるっと部屋を見回すと、ハンガーに掛けられたアタシのスーツが壁のフックにぶら下がっとっ……って、スカートと一緒にぶら下がっとるのって、もしかしなくてもブラ!? 慌ててごそごそと確認してみたら、やっぱりシャツの他にはショーツしか着けてへん。 あんのエロ探偵、アタシの同意も得ずに脱がすってどーゆう事なん!? がばっと起き上がろうとしたんに何や身体に力が入らへんでそのままぽふんとベッドに逆戻りした時、コップ片手の平次が入って来た。 「目ぇ覚めたんか?」 「……こ……」 『これってどーゆう事なん!?』って言おうとしたんに、何故か声が出えへん。 これって、寝起きやからってだけやない。 ゆっくりとなら起き上がれたけど、やっぱりだるいし微妙に熱っぽい気もする。 「オマエなあ、調子悪いんやったらそう言えや」 コップをサイドテーブルに置いた平次が枕を重ねてクッションを作ると、アタシの両脇に手を入れて大きな人形動かすみたいに軽々とヘッドボードに凭れさせてくれた。 そのまま、平次が差し出してくれたコップを受け取ってこくこくと水を飲む。 冷たい水が喉に気持ちええ。 「事務所戻って来てから妙にフラフラしとる思たら、ちょお目ぇ離した隙にソファに座り込んでうとうとしとるし、起こそう思て触ってみたら熱出しとるし」 「そやったっけ?仕事しとる時は気ぃつかんかった」 水飲んで喉が潤されたからか、今度はちゃんと声が出た。 「まあ、疲れるばっかりの依頼やったからな。多分、疲労と風邪やろ。一晩様子見て、悪くなるようやったら医者行くで?」 「うん。ごめんな、面倒かけて」 「気にせんでええわ。着せ替え人形ゆうのも案外楽しかったから、それでチャラやし。それより、ハラ減っとらんか?」 さらりと聞き捨てならない事言われたような気ぃもするけど、今は流しておく事にしてベッドサイドの時計に目をやると、午前0時半を指しとった。 事務所に帰って来たのが確か7時前くらいやったから、たっぷり5時間は寝とったみたいや。 「平次は?何か食べたん?」 「コンビニで適当に買うて来て喰った。オマエの分もと思てうどん買うてあるし、胃が空なんもようないから煮たるわ。喰えるだけ喰うて、また寝とき」 「うどん煮るて、平次、料理苦手やん。アタシ、自分でやるから」 「世の中には、具もスープも入っとってあとは皿ごと煮るだけて便利なモンが仰山あるやろ。心配せんでも、そんなモンしか作らんわ」 「せやけど……」 「ええから、待っとり。ほんで、早よ治して、旨いモン作ってくれや」 空になったコップを持って、平次が寝室を出て行った。 大抵の事は器用にこなす平次やけど、唯一苦手なんが料理。 その気んなれば多分、人並み以上に出来るようになるやろに、どうやらやる気が出えへんらしい。 その平次が、温めるだけの簡単料理とはいえアタシのために作ってくれるのが嬉しくて、思わず頬が緩んでしもた。 実は、現金な事にお腹がぐうって鳴ったんは、平次には内緒にしとこうと思う。 それと、さっき早とちりして『エロ探偵』なんて心ん中で叫んでしもた事も。 |
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「平次は結構面倒見がいいと思います!」 by 月姫 |
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