■ 和葉命 ■ by コロさま


8月ももう終わろうかという日曜日の昼下がり

事務所では、平次と和葉がたまりに溜まった書類整理に追われていた

RRRRR〜♪

カチャ

「はい服部探偵事務所です。ただいま調査に出掛けております。ご依頼の方は簡単な依頼内容とご連絡先をお入れ下さい。折り返しご連絡させて頂きます。ピーーー」

「平ちゃ〜ん大滝です!居ったら〜」

カチャ

「お〜おるで、大滝さん久し振りやな〜こないだは美
味い酒ごっそさんでした。今日はどうしたんや?」

「平ちゃん、和葉ちゃんもおりますか?さっき事情聴取の最中におやっさんが急に倒れまして」

「なんやて〜〜!?おっちゃんが??ちょっ大滝はん待っといて!おぃ和葉!!大滝はんから電話や!おっちゃん倒れたらしいお前も話し聞いとけ」

「へっ!?‥お父ちゃんが?」

パタパタと書類の束を手に持ったままで電話のそばに走り寄ってくる

平次は3人で会話が出来るように電話のハンズフリー機能のボタンを押し受話器を置いた。

「大滝はんお待たせ、和葉も来たし詳しい事教えてや」

「和葉ちゃんおやっさんやけど、最近休みもよう取らんとずっと働いとってな、ついさっき事情聴取しとる最中に倒れはって、今救急車で近くの警察病院に向か
っとるんや、意識はまだ戻らん状態やけど和葉ちゃんの名前を呼んどる、過労やと思うんやけど取り合えず知らせとこう思いまして」

「‥…」

「そうか、ありがとな大滝はん!俺らも今からそっち向うわ」

「分かりました、そしたらまた後で」

カチャ

「‥へい‥じ…」

和葉の頭を撫でながら話しかける

「大丈夫やから!お前が真っ青な顔しとってもしゃあないやろ!ほれ!はよ用意して出掛けんで」

「‥うん、そうやね」

30分後、警察病院に着いた平次と和葉は病院前に居た大滝と合流した。

「やっぱり過労だそうです、さっき気い付きはって今点滴打って貰って休んどる所です」

「話せるんか?」

何も答えない和葉に変わって平次が尋ねる。

「はい、少しやったら大丈夫やと思います」

「‥大滝さん…お父ちゃん倒れる程仕事しとったん?」

今にも泣き出しそうな表情で尋ねる

「そうですね、ここの所家にも帰らんで根詰めてたみたいですわ。『家に帰ってもどうせ一人やからな、今は仕事しとるのが楽しいんや』とよく言ってましたし」

「お父ちゃん…平次‥あたし‥」

和葉の大きな瞳から涙が零れ落ちそうなのを見た平次

「ああ分かっとる、暫く実家帰ったり」

優しい顔で頭をぽんぽん叩きながら話す

「うん、ありがとう平次」

「ほな大滝さんおっちゃんの部屋に案内してくれるか?」

◇◇◇◇

「ここですわ、私は廊下で静香さんら来るの待ってますんで」

「ありがとう」

コンコンコン

「お父ちゃん入んで」

カチャ

白い部屋、白いベットに青白い顔をした父親がいた

そっとベットに近付いて小さい声で話しかける

「お父ちゃん」

「ん‥?和葉か?来てくれたんか、驚かせてすまんかったな。直ぐ元気になるからな心配せんでええぞ」

起き上がろうとする父親を止める

「お、平次君も来てくれたんやな、忙しい所すまんかったな、もう大丈夫やから」

「おっちゃん和葉暫く実家に帰すし、ちゃんと静養してや」

「‥和葉はそれでええんか?」

「へっあたし?事務所まで通えん距離やないし大丈夫やで」

「そうか‥ほな甘えさして貰うかな、明日検査してなんもなかったら直ぐ退院や」

「暫くのんびりさして貰おう!溜まった疲れ取らなあかんよ!」

コンコン

「入りますよ」

看護士と医師が入って来た

「遠山さんお加減いかがですか?ご家族の方がいらしたと伺ったので、病状の説明に参りました」

医師からの説明によると何もなくても、3日は安静のため入院、一週間は静養するようにと説明されその後に入院に必要な物を教えられた。

「そしたら、あたし一度家に帰ってパジャマとか用意してくるから、また後で来るな」

和葉と平次は病室を出ていった

2人の足音が遠くなって行く


「フッフッフッフッフッワハハハハァーーー!!やった!やったで!遂にあの黒い悪魔から娘を取り返せた!!」

ガッツポーズで笑いを止める事が出来ない父

「フフフフフッ」

カチャ

「おっ、おやっさん!!」

大滝が大声で笑う遠山に驚き病室に入って来た

「お〜大滝!ええ所に来たな!やっと和葉が俺の元に帰ってくるんや!今日はめでたい日や〜祝い酒でも呑みたい気分やな〜♪たまには倒れてみるもんやでホンマ〜大滝すまんが明日にでも退院手続きしたってくれるか」

「おっ、おやっさん!!安静にしとかなあきまへんでぇ」

「なぁにもう!充分元気になったわ!!今やったらトライアスロンも完走出来そうやで♪」

その頃
和葉を駐車場に先に行かせ平次は一人、売店で水を買い遠山に渡す為に病室の前に来ていた。

「ホンマあの悪ガキと来たら、うちの可愛い可愛い娘を嫁にも貰わんと、同棲なんぞしてこき使いおってからに、帰って来たらなもう二度と手放すかい!!大滝
お前もそう思うやろぉ?」

「はぁ、まぁ〜平次君も和葉ちゃんを嫁に貰うタイミング測っとるんやと思いますよ」

「ドアホ!そんなわけあるかぃ!!あの色黒男はやな!平蔵に似て〜」

病室の外の廊下まで、勢いのついた遠山の声は響き渡っていた

廊下には…
冷や汗を流しながらたたずむ色黒男が一人


おわり




「読んで頂きありがとうございます。所員の皆様とてもステキな企画をありがとうございます。終わってしまうのが寂しいです。投稿締切間近で急いで書いた為、おかしな所や変てこな関西弁で申し訳有りません。和葉命の父でした♪」 by コロ