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− キリ番「16960」リクエスト − ■ 引き出しの奥の小箱 ■ −春夏冬中シリーズD− by phantom 「ふふふ・・・」 「な〜に笑うてんねん」 隣の席から平次が目聡く声を掛けて来る。 「別に〜」 「何が『別に〜』や、さっきからずっとニヤニヤしくさって気持ち悪いで」 「失礼なオトコやなぁ。こんな可愛い娘捕まえてなんちゅうコト言うねん。素直に『可愛ええ』言うたらええやん」 「ドコに可愛ええ〜娘が居んねん?」 わざとらしく周りをキョロキョロせんでもええ、ちゅうねん。 「ここ。アンタの隣」 そう言うたら、反対側見てるし。まったく。 「そんなお決まりせんでええから」 「そやかて可愛ええ娘なら、俺かて見たいで」 ほんま、素直や無いんやから。 「ふ〜ん。やったらアンタは可愛ええ無い娘を奥さんにしたんや?」 「げっ・・」 「げって何やの?」 「あっ・・いや・・・娘?」 うわっ。アンタが気にするんは、ソコかい! 「もうええ!」 もう寝たるわ。 ビジネスクラスやから、ゆっくり寝るれるし。 「拗ねんなや。な?和葉ちゃん?」 「ちゃんなん付けんでええ。それこそ気持ち悪いわ」 「こっち向けや。ほらほらジュースやで〜」 どないしたろかこのボケは? せっかくええ気分やったのに・・・ なんや気付いたら結婚しとって、そやけど結婚式も披露宴も事件で流れてしもて、ばたばたしとる間に時間だけが過ぎとったけど、KIDや夏穂ちゃんのお蔭でやっと新婚旅行と結婚式が出来ることになった。 旅行先も式場も平次が勝手に決めてしもたけど、どっちも平次の好みやのうてあたしの行きたかったトコと憧れてる教会やった。 ぶっきらぼうで天邪鬼な平次やけど、本当はあたしのこととっても大事にしてくれてる。 やから忙しいのに仕事好きやのに、こうやって依頼断って事務所閉めてまでしてあたしを連れて行ってくれる。 ほんで、何であたしが思い出し笑いしてたか言うとやね。 旅行の準備するんに平次の部屋入ってパスポート探しとった時に、偶然見付けたモノのことやねん。 いつもやったら鍵が掛かってるその引き出しがその日は珍しいことに少し開いた状態やったから、ついつい興味本意で覗いてしもた。 何や訳の分からへんゴチャコチャしたもんと一緒に白い箱が奥の方にあったら、開けて見たなるのが人の性やねんなぁ。 そやけどあたしはそれに逆らい・・・な〜んて、んな訳無いやろ? 速攻開けたわ! そしたら、なんと! もうびっくり仰天するモンが入ってたんやで。 「へ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 ってな感じで平次には悪いけど気付かれへんように、ぱくってもうたわ。 「あ〜んなモン持ってたなんてなぁ・・・」 シートを倒すとすかさずアテンドさんが持って来てくれた毛布に包まって、また笑みが漏れてしもた。 「ま〜だ笑っとんのかい?」 「気にせんといて、寝言やから」 「・・・・・・」 「なぁへ〜じぃ?」 「それも寝言か?」 「うん」 「・・・・・・ほんで」 「平次はいつからあたしのこと好きやったん?」 「・・・・・・・・・・・・寝言はちゃんと寝てから言えや」 「シート倒してるし、毛布にも入ってるし、目も閉じてるからばっちしやで」 「ほな、さっさと寝ぇ」 「やから、もう寝てるやん」 「・・・・・・何で今それなんや?」 「寝言に理由なん無いよ」 「・・・・・・」 平次がコップに残ってたウイスキーを飲み干す音がした。 うん。うん。 平次やったら、勢い付けな答えられへんわな。 「なぁ〜いつから?」 「ほな聞くけど、お前はいつから俺んこと好きやったんや?」 あっ返しよったな。 「寝言やけどな、平次のこと好きなんかなぁて想いだしたんは小学校のころやねん。ほんで、好きっやって気付いたんは中学のころ。高校のころはもう好き過ぎて、どうしてええんか分からんかったわ」 「・・・・・・」 あ〜どんな顔して聞いてんのか見たなって来たわ。 あたしが振り向こうかどうしようか悩んでると、 「ほんで?」 て続きを催促されてしもた。 「ふぁ〜眠い・・・」 「寝てもええけど、寝言は続けろや」 「・・・・・・」 そんな器用なこと出来るかいな。 「あたしが先に聞いたんやけど?」 「お前の寝言が先や」 「・・・・・・気になるん?」 「ええから、さっさと寝言言え」 よっぽど気になるみたいや。 こっから先は聞かん方がええのに。 「大学のころは離れてしもたから、忘れよう諦めよう想うて男の人と初めて付き合うた」 「・・・・・・・そいつが始めての男か?」 「そやで」 「誰やねん?」 「あんたの知らん人」 「どんなヤツや?」 「優しい人やったよ。優しくて面白うて、ほんまにええ人やった」 「何で別れたんや?」 「・・・・・・」 「寝んなや」 「あたしが・・・あたしがあかんの・・・」 「何かしたんか?」 あ〜も〜思い出してしもたやん。 「あたしが平次のこと忘れられへんかったから・・・」 「ほうか・・・」 「その後もいろんな人と付き合うてみたけど、いっつも長続きせぇへんかったわ」 「・・・・・・何人と・・・したんや?」 「・・・・・・」 なんか平次らしゅうない質問やったから今度こそ振り向こう思うて体動かしたら、 「そんまま寝とけ」 言うて押さえ付けられてしもた。 「何人や?」 「・・・・・・そんなん聞いてどうすんの?」 「ええから言え」 「7人やけど・・・」 「そんなに居るかい・・・ったく」 やから聞くな言うたのに。 「ほんで?」 「まだ聞きたいん?」 「卒業してからはどうやねん?」 「OLになってからは仕事が忙しゅうて誰とも付き合うてへんよ」 「ほんまか?」 「付き合うてへんけど・・・」 「へんけど〜?」 「付き合うてへんけど、勢いで・・・」 「お前なぁ・・・」 「あんたが言え言うから言うたのに」 「まぁええ。もうすんだこんとや。今度やったら許さんで」 「あたしのことより、あんたはどうなんよ?」 「・・・・・・」 「平次?」 振り向こうにも押さえ付けられたままやから、身動き出来へん。 「へ〜じ?」 「・・・・・・寝て聞けや。そんで起きたら忘れろ」 「うん・・・」 絶対に忘れへんけど。 「高校んとき、工藤らと京都で窃盗団の事件があったやろ。お前が人質にされたヤツや」 「あんたが初恋の人見付けた時のやろ」 ああ〜また嫌なこと思い出せるんやから。 「・・・・・・あれ・・・お前や・・・」 「え?」 「俺がずっと探しとった初恋の人は、お前やったんや。和葉」 衝撃の事実やわ。 「そん時、俺がどんだけ嬉しかったか分かるか?それまで、いっつも側に居るお前のことを自分でもどう想うてるか分からんかったからな」 「子分言うてたやん」 「・・・・・・ま〜だ根に持っとんのか?」 「そらそうやろ?言うにことかいて『子分』やからな」 「今はちゃうんやから、ええ加減忘れてくれてもええやろ?」 「忘れて上げてもええよ。やから続けて」 「はぁ・・・」 「溜息なんいらんから。ほれほれ」 「・・・・・・それからはお前のこと好きなんやて自覚した」 「やったら・・・何ですぐに言うてくれへんかったん?」 「言えるか〜!今迄さんざんお前のこと『ただの幼馴染』言うとったんが、いきなり『好きや』言うても信憑性無いやろが」 「まぁ・・・そうやろね」 「そやから俺は・・・」 「俺は?」 ドキドキするわ〜。 何言うてくれるんやろ? 「お前に相応しい男になろうて決めたんや」 う〜わぁ〜〜〜!めっちゃ嬉しい! 「そんで東都大学行ったんや」 平次は始め京大やったのに、高3になって急に東大に行くて言い出したんや。 「まぁ・・な」 「ほんま言うてくれたら良かったのに。やったら、あたしかて苦しまんでもすんだのに」 「すまん」 「まぁええわ。もう昔のことやしな。そんで?平次は何人としたん?」 「お前も聞くんかい?」 「当然やろ?」 「・・・・・・」 「早う答えて?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒトリ・・・」 「へ?」 「しかも・・・・・・・未遂や・・・」 「はぁ?」 「どうしても・・・出来へんかったんや・・・」 「何で?」 「何で・・・て・・・」 「何でなん?なぁ?平次?」 「お・・お前が・・・・・・和葉が好きやからに決ってるやろが!」 「・・・・・・」 このまま天国に行ってまいそう・・・ 嬉し過ぎてあたしを抑えてる平次の手を捕まえると、そっと自分の頬に当てた。 温かい・・・ 「おおきに・・・平次」 「それやのにお前は・・」 「仕方無いやん。あたしはあんたがあたしのこと好きやなんて、夢にも思うてへんかったんやから」 「俺が悪いんか?」 「そうや」 「・・・・・・」 「平次の初めてはあたしやったんや?」 「笑うんかい」 「ごめん・・・やって嬉しゅうて」 あっ!そや! あたしはごそごそと起き出して、機内に持ち込んだバックから例の白い箱を取り出した。 「これ」 「お・・お前・・・それ・・・」 白い箱は何度も開かれたんか、周りは薄汚れ角も丸まってしもとる。 「ごめん。中も見てしもた」 平次は真っ赤になって、口をパクパクさせてる。 「なぁ、なんでこん時あたしに渡してくれへんかったん?」 「さ・・さっき言うたやろ・・・」 「あたしに相応しい男になってから、渡そう思うたから?」 「・・・・・・」 「一緒に入とった紙もそうなん?」 「・・・・・・そうや」 あたしは箱を開きながら、クスクス笑ってまう。 やって嬉しいから。 白い箱を開けると中には、紙とジュエリーケース。 紙は婚姻届。 ジェリーケースの中には、お揃いのリングが2つ。 婚姻届には、平次の署名。 そして、その隣には鉛筆で書かれたあたしの名前。 大きいリングには『K to H』、小さいリングには『H to K』。 そして、その横にある日付。 日付は、18才のあたしの誕生日やった。 「これ・・・もう渡してくれへんの?」 リングを指を撫でながら、そう呟いてみた。 「お前が今ここに嵌めとるコレは、何やねん?」 平次があたしの左手をそっと持ち上げる。 「これはこれ」 「欲張りやな」 「やって・・・これも・・・欲しいんやもん」 平次がずっとあたしを好きやったって証やから。 「今嵌めたろか?」 「ううん。式の時に」 「2コするんか?」 「うん。おしゃれやろ?」 「ええけどな」 「もちろん平次もやで」 「俺もかい」 「当然やん。お揃いなんやから」 「へ〜へ〜」 「それにこれ」 あたしは書き掛けの婚姻届を開く。 「これも書きたい」 「これもか?」 「やって・・・この前の・・・字ヨレヨレなんやもん・・・」 「再提出は無理やで?」 「ええの。これはあたしの宝物にするから」 「安い宝やなぁ」 「やって・・・これは取り出して仕舞えんやろ?」 と平次の胸をツンツンと突付いてみる。 「取り出したろか?」 「いらんから」 「人がせっかく言うてやってんのに。即答かい」 「これはここにあるからええの」 平次の胸に耳をくっ付けた。 「この音が好きやし」 「・・・・ッ」 うん? 今・・・ごっくんって・・・ 「和葉・・・」 「へ・・!」 平次の名前を言おうとしたら、塞がれた。 「ん!ん!」 体も頭も捕まえられて動けない。 「ちょ・・へ・・」 「お前が誘うからや」 いやいやいやいや・・・ 「んっ!」 力任せに押し返して、 「何考えてんの?ここどこやと・・」 でまた塞がれてしもた。 しかも、 「誰も見てへん。気にすんな」 やで。 こらこらこらこら・・・ ウィスキーの味がするキスは、それから暫らく繰り返された。 「続きは向こうに付いてからやな」 「・・・・・・」 「おかんも工藤らも1日遅れやし、着いたらホテルに直行すんで」 「・・・・・・」 せっかく・・・ええ気持ちにやったのに・・・ それにあたしらが早う行くんは式の打ち合わせの為やで。 ちらっと平次を見ると、 「そん為にも寝とかなな」 言うてさっさと寝る準備しとるし。 「あんたなぁ・・・」 「お前ももう寝言はええから早寝え」 このボケ・・・ ま・・ええか。 あたしもほんま平次には甘い。 婚姻届とリングを白い箱の中に戻すとまた大切にバックに入れ、あたしもそっと目を閉じた。 その後空港に到着して入国手続きを済ますと、ちょこっと観光もさせて貰えずにホテルへ直行。 結局そのまま、次の日の朝に。 式で2つ目のリングを交換し、2枚目の婚姻届にサイン。 そやけど・・・あたしのサインはまたもヨレヨレになってしもた・・・ |
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「海外ウェディングに行く機中(ビジネスクラス)の2人です」 by phantom ■春夏冬中シリーズ■ @OFF19「春夏冬中」AOFF31「不倫や〜〜!」BOFF02「今何所におるんや?」 C仕事12「服部探偵事務所24時」DOFF25「引き出しの奥の小箱」E仕事21「盗聴器にご注意!」 |
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