■ 本日休業 ■ by 月姫
 

「平次!朝やで!」
 
聞き慣れた跳ねるような元気のええ声と同時に、部屋が一気に明るくなった。
 
「……」
 
今日は事務所は休みやて言うてあるんに、起こすなや。
そんな抗議の気持ちを込めて布団に潜り込んだんに、力ずくで剥ぎ取られてもうた。
 
「……今日は休みや」
「せやね」
 
昨日、大きな依頼を片付けて、久しぶりの休暇。
それもたった一日なんやから、のんびり寝かせろ。
そんな気持ちをばっさり切り捨てるような明るい声に背を向けて、陽射しを避けるためにぱたりとうつ伏せになって枕を抱える。
 
「オレは眠いんや……」
「朝ゴハン食べて、それからお昼寝すればええやん」
 
背中をゆさゆさ揺さぶる手ぇは気持ちええ。
いつもならここでベッドに引き込むトコやけど、情けないが今日はそんな元気もない。
珍しく芯から疲れとる。
 
「メシは後でええ……」
「昨夜も食べとらんのやろ?ちょっとだけでも食べな、カラダに悪いやん。胃に負担にならんようにおじやにしたったから、食べてや」
 
確かにハラ減っとる気ぃもするが、起きる気力がない。
どうにも起きないオレにイラついたんか、和葉が背中に体重を掛けて乗っかってきた。
 
「ちゃんとゴハン食べたら、膝枕したってもええで?」
 
耳元で囁かれたセリフに、オレが跳ね起きたんは言うまでもない。
可愛え声上げて引っくり返りそうになった和葉を抱きとめて『添い寝もアリか?』と訊いたんも、お約束やと思う。
返事が平手やったのも、それをものともせずに強制的に抱き枕にしたんも、お約束や。
 
昼寝から覚めて元気一杯んなったオレが、そのまま抱き枕を脱がしにかかってケリ喰らったんも、まあお約束やった。
 



「今日も平和な一日でした(笑)」 by 月姫