■ ポニーテールをやめた訳 ■ by 慧さま


「そういや遠山って昔ポニーテールやったよな?」

10年ぶりにみんなが揃った同窓会で、元クラスメトに言われた一言。

「うん、せやったね」
「今の下ろした姿も大人っぽくてええけど、なんちゅうか、あの『女子高生してます』
 って感じが好きやってんけどなあ」
「あはは。またうまいこと言うて」


懐かしいやりとりに、懐かしい話題。
気づけばアタシのトレードマークやったあの髪形をやめて、もう5年が経とうとしている。
そもそもアタシがポニーテールをはじめたんは、小学校の頃。
平次の「その髪型ええやんけ」という一言やった。
リボンくらいしか変化を楽しむことはでけへんかったけど、
それでも平次の好きな髪形やと思って、ずっと続けとった。


「そういやなんでポニーテールやめたん?」
「また服部がらみちゃうん?」

あの頃と同じように囃し立てる皆に

「残念ながら、そうちゃうんよ」

と返すと、「えー」という驚きともがっかりともいえない声が漏れる。
そんなに意外やったかな。
まぁ間接的には平次が関係ないこともないんやけど、
直接的には、アタシの東京の親友、蘭ちゃんが原因や。


工藤君が帰ってくるまでの間じっと待ち続けた蘭ちゃん、
その覚悟と想いの象徴があの黒く長い髪やった。
工藤君が帰ってきて想いを遂げたのちに髪型を変えた蘭ちゃんを見て、
「ああ、かなわんな」と思ったアタシは、今度は自分も覚悟決めなあかんと思って、
髪を解いたんや。

「大好きな親友にあやかってやねん」

そう答えながら、自分の胸に秘めている覚悟と想いを再確認する。
平次を想い続けるという覚悟と、何があっても屈しへんという想い。
もちろん恋人になって、仕事でも一緒におられる今の関係に不満がある訳ちゃうけど、
アタシの場合の「成就」はもうちょっと先の、一生一緒におれるという保証のもとにある。


―――まだまだ先やろうなあ・・・


軽く毛先を撫で、来るべき未来のことを思うと溜息が洩れたのは、ここだけの話。




「短文ですが、是非にと思い書かせていただきました。
個人的には髪を下ろした和葉ちゃんが好きなので、
目いっぱい、平次に撫でてもらえばいいのになんて思っています」 by 慧