− キリ番「10800」リクエスト −
■ 服部探偵事務所24時 − timeV− ■ −春夏冬中シリーズC− by phantom


20:00

平次はいつもすぐには席を立たへんから、あたしは先に部屋に戻ってお夕飯の準備をする。
ほんで、だいたい8時ごろに平次も事務所を閉めて帰って来る。
2人でいつもみたいに食べてたんやけど、どうもさっきの夏穂ちゃんの言葉気になってるんか会話が途切れ途切れになとった。
今回はいくら遠出やて言うても依頼やからなぁ、て思うてたら、
「お前はどう思うてんのや?」
て平次が主語の無い言葉を投げ掛けてきた。
「何が?」
あたしは箸を止めることなく、何気に答える。
「さっきのコトや」
「夏穂ちゃんが言うてたコト?」
「おう」
「あたしは別にええよ。それに今回は仕事で行くんやし」
「・・・・・・」
平次は何か真剣に考えてる顔したまま、箸も止まっとる。
「どしたん?あんたこそ何か言いたいコト有るんやったら、はっきり言いなや」
「その・・・あれや・・・」
「うん。何?」
あたしも真面目な顔で平次を見返して、何を言うてくれるんかちょっとだけドキドキしながら続きを待った。
「や・・やっぱ後でええ」
そう言うと、残りのお夕飯をかき込んで『ちょう部屋で調べモンするさかい』言うて、自室に篭ってしもた。
「・・・・・・・・・・」

平次のアホ。


21:00

あたしはお夕飯の後片付けを済ませると、洗濯物を畳んでお風呂の準備をする。
それと明日からの出張の準備もな。
これもKIDとのことがあったからなんやけど、『今度からは、依頼で遠出する時にはお前も連れてくで』て言うてくれてたからあたしも足りない物なん買い足しとったから、後はカバンに詰めるだけや。
「5日って言うてたから、こんなモンかな」
2人で行くいうても常に一緒に行動出来るとは限らんから、荷物はそれぞれのカバンに別々に詰める。
手はせっせと動いてるんやけど、頭の中は違うこと考えとった。
夏穂ちゃんが教えてくれた”平次の涙ぐましい努力”の数々。
「ふふ・・・」
思わず笑みが零れてまうわ。
やって平次が、あの平次があたしの為に影でこそこそそんなコトしとったなんて。
未だに半信半疑やけど、夏穂ちゃんに突っ込まれて赤なってたからほんまなんやろなぁ。
もっと分かり易うしてくれたらええのに、探偵いう人種はどうも回りくどうてあかんわ。
前に蘭ちゃんが『新一ったらね、私がいつも行ってるお店とかの調査って言うかどういうお店で誰が経営しててどんな人が来るのとか、仲良くなった人の人柄とか仕事とか密かに調べてるみたいなのよね』て言うてたから工藤くんて心配性なんやなぁて笑うてたけど、まさか平次も同じ様なコトしとるとは思うてへんかったわ。
これが探偵の愛情表現なんかなぁ〜。
ほんま分かりずらいわ。


22:00

物思いに耽っとたら、あちゅう間に10時になっとった。
平次は自分の部屋から出て来んし、明日の準備も出来たし、ゆっくりテレビでも見よ。


23:00

そろそろお風呂行こ。
明日は7時55分の飛行機に乗る言うてたから、こっから伊丹まで1時間弱で〜、30分前には行かあかんから。
げっ・・・5時半には起きなあかんやん。
寝よ寝よ。
「平次〜!明日早いからあたしもうお風呂いって寝るよ!」
声だけ掛けてさっさと入ろ思うてたら、
「俺も行く」
て声が聞こえた。
しもた・・・言わずにいくんやったわ。
「ほな先入る?」
「お前と一緒でええ」
「・・・・・・」


24:00

お風呂入るだけで何でこんなに・・・。はぁ・・・
1日の疲れをとる場所で、更に疲れてどないしてくれんの!!
髪乾かしたら速攻で寝よ。
絶対寝る!
て決めたのに、あたしの前に出された1枚の紙でその決心もあっさりぐずれてしもた。
「これ・・・」
思わず平次の顔を見上げた。
「さっき全部予約した」
もっぺんその紙に視線を落とす。
そこには”海外ウエディングのご予約ありがとうございました”と印字されとる。
「これって・・・」
「お前いっぺん行きたい言うてたやろ?」
「そう・・・やけど・・・」
「式と旅行が一緒になるけどな、まぁそこは目ぇつむってくれ」
涙出そうや・・・
「おとんとおっちゃんは無理やろけど、おかんやおばちゃん、それに今から言うとったら工藤らも来てくれるんちゃうか?」
「・・・・・・」
「やから、あの写真はもう仕舞うてくれ。こん時撮ったんを、お〜きゅう伸ばしたらええやろ」
「うん・・・」
堪え切れなくて、涙がポロポロ零れ落ちた。
「なんで泣くねん。嬉しいんやったら、笑えや」
「嬉し過ぎたら涙が出るの・・・」
ありがとうの気持ちをぎょうさん込めて、平次に力いっぱい抱き付いた。
「やから・・・もう・・・アホなコトすんなや」
返事の代わりに更にぎゅ〜って抱き付く。
そしたら平次もぎゅ〜って返してくれた。


01:00 〜 05:30

感動の余りすっかり平次のペースに乗せられて、気ぃ付いたら朝やった。
「行けるか?」
「大丈夫!」

今日もまた、新しい1日が始まる。




「和葉ちゃんが幸せなら、きっと平次にも幸せな日」 by phantom

春夏冬中シリーズ
@OFF19「春夏冬中」AOFF31「不倫や〜〜!」BOFF02「今何所におるんや?」
C仕事12「服部探偵事務所24時」DOFF25「引き出しの奥の小箱」E仕事21「盗聴器にご注意!」

material by アトリエ夏夢色