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− キリ番「20000」リクエスト − ■ 盗聴器に注意! ■ −春夏冬中シリーズE− by phantom 「おう、帰ったで」 「お帰り〜平次」 あたしは事務の手を止めて、笑顔でお疲れの探偵さんを出迎えた。 それなんに何や浮かない顔しとる。 「どしたん?何かあった?」 「うん?あ・・・まぁ・・・」 「何やのそれ?それともあたしに言えへんこと?」 平次は仕事上ではあたしに秘密にしとることもあるけど、その場合はこんなあからさまな態度はとらへん。 「あっ!もしかして夏穂ちゃんに手ぇでも出して、見捨てられたん?!」 「お前なぁ・・・どっからそんなアホな発想が出てくんねん」 「やって、夏穂ちゃん居てへんやん」 「あのなぁ・・・今日はもう晩いから直帰させたんや・・・ったく・・・」 「そうなん?」 平次がめっちゃ力抜けた〜いうみたいに、ソファにどかって座り込んでしもた。 「やったら、ほんまにどしたん?」 あたしもテーブル挟んだ平次の向かいにあるソファに移動する。 「お前最近いつおっちゃんに会うたんや?」 「おとうちゃん?そやなぁ・・・確かぁ〜先週の土曜日やったと思うけど・・」 「そん時何ぞ言うたか?」 「何ぞ・・・てどんなこと?」 「その〜あれや・・・」 「?」 あれや・・・言われてもさっぱり分からんのやけど? 「お・・俺が夜寝かせてくれへんとかやな・・」 「はぁ〜〜〜???」 何言うてんのこのオトコ? 「そんなん言う訳ないやん!!」 「そんな怒鳴るなや」 「やって・・」 「お前がそんなこと口が裂けても言えへんことくらい分かっとるわ」 「やったら何でそんなこと聞くんよ?!」 「おっちゃんがやなぁ・・・」 「お父ちゃんが?」 平次は少し間ぁ置いてからぼそっと答えた。 「おっちゃんに・・・たまには和葉をゆっくり寝かせったってくれや・・・て言われた」 「・・・・・・・・・・・・」 何ですと? あたしは自分の顔が真っ赤になるんが分かったけど、それ以上に頭の中は?のオンパレードやった。 お父ちゃんは何を思て、そんなこと平次に言うたんやろか? 確かに言うてることは当たってるんやけど、何でお父ちゃんにそれが分かるん? オトコ同士やから平次がお盛んやって分かるんやろか? このオトコはどっこからどうみても自粛するタイプと違うし、見るからにストレス貯めてへんしなぁ? しかもお肌スベスベやん! ムカツクわ・・・ 「おいっ!」 「へ?」 「へ?やないわ!何ヒトのほっぺた撫で回してんねん?」 「ありゃ・・・」 気付けばテーブルの上に乗っかて、右手で平次のほっぺた突付いてるやん。 慌てて離れようとしたんやけど、そのまま平次に腕引っ張られてしもた。 「誘ってるんやったらそう言え」 「ち・・ちが・・・んんんんん」 反論する間も無く、口塞がれてしもた。 「せっかくの和葉ちゃんからのお誘いや。遠慮のう頂きます」 「んんん〜〜〜!!」 そのままソファの上で、美味しく頂かれてしもた。 次の日、平次と夏穂ちゃんが出掛けた後におばちゃんがやって来た。 「和葉ちゃん!元気やった〜?最近全然顔見せてくれへんから、淋しうなって押し掛けて来てしもたわ〜」 「すみません、御母さん。わざわざ」 「もう、そんな他人行儀な挨拶せんといてや」 言うておばちゃんはテーブルの上に大きな風呂敷包みをドカッと乗っけた。 「今日はな、ぎょうさん差し入れ持って来たんよ」 「わぁ嬉しい!」 あたしはお茶でも淹れようとキッチンに向おうとしたら、 「そんなんええから」 とおばちゃんの隣に強制的に座らされた。 するとおばちゃんはいそいそと風呂敷を開き、出てきた物を一個づつ説明し始めてしもたやん。 「これはな中国の漢方薬でな、滋養強壮・精力倍増にええんよ。ほんでこっちがな、京都のうちの実家に代々伝わる・・・」 ノンストップで続けられる商品説明は、どれもこれも所謂夜に関係するモンばっかりや。 「あ・・あの・・・」 「あの子元気なんはええけど、どうも淡白みたいやから、これなん丁度ええ思うんよ」 「・・・・・・・・・・・・」 まだ・・・午前中なんやけど・・・ 外はピーカンのお天気で雲一つ浮かんでへん。 少し風もあって気持ちええから事務所の窓は全開。 爽やか〜を絵に描いたようなこの状況で・・・ タンパク・・・て・・・・・・何? 無理矢理手に持たされたソレは、ドギツイ赤に金色の龍が描かれてるどっからどうみても怪しいドリンク剤。 「普通なら1本飲んだらええみたいやけど、あのアホには2本くらい飲ませた方がええかもしれませんなぁ」 ・・・・・・これを・・・2本・・・ 考えただけで、顔から血の気が引いていった。 「お・・おかぁ・・」 「そんで和葉ちゃんにはコレな」 あたしの様子にまったく気付いていないおばちゃんは、空いている左手に今度は小さな小瓶を握らせた。 ラベルは・・・うっ・・・見なかったことにしょ・・・ 「寝る前に数的飲み物に入れたらええだけやから」 「・・・・・・・・・・・・」 それからもおばちゃんの勢いは止まらず、全部聞き終わったころにはお昼はとっくの昔に過ぎ去っとったわ。 「あら、もうこんな時間やないの。うちちょっとお買い物して帰りたいから、これで失礼さしてもらうな」 とそのまま帰ろうとするから、あたしは慌てて引き止めた。 「待って!おかぁさん!こ・・これ、どうしろと?」 「もちろん2人でぜ〜んぶ使いなはれ。そんで早う孫の顔を見してな。もし足りひんようやったら言うてな、また買って来るさかい」 これ・・・全部て・・・ テーブルの上を改めて見て、処狭しと置かれている薬や怪しいドリンク、挙句の果てにはよう分からへんDVDなどに顔が引き攣った。 ほんで今度こそ持って帰ってもらおう思うて前を見たら、 「・・・・・・・・・・・・」 おばちゃんの姿は影も形も無うなっとった。 逃げ足早過ぎやでおばちゃん。 ど・・どないしょ・・・これ・・・ 「平次に見せる訳にもいかへんし・・・」 ちらっと時計を見ると、そろそろ平次と夏穂ちゃんが帰って来る時間やん。 「あ〜〜〜!!もう帰って来てまうやん!!とにかく、どっかに仕舞まわな!!」 平次にこんなん見付かったら、今以上にあたしの睡眠時間が無うなってまうやん! 「え〜〜とどこに隠そう?」 上の部屋にはこんなにぎょうさんあったら、いっぺんには持って行かれっへんし〜。 あたしがおろおろと事務所ん中を隠し場所を探してうろうろしとったら、突然携帯が鳴り出した。 「は・・はい」 『俺や。・・・お前何しとったんや?』 「別に・・・」 『そんなら何でそんなに息が荒いねん?』 「ちょ・・と掃除してたんよ。そんでどしたん?」 『ああ、さっき急におっちゃんから電話があってな、たまには男同士で飯でも食わんか言うて誘われたんや」 ナイスやお父ちゃん!GOOD−JOB! 「そうなんや!ええやん!」 『ほうか〜?』 「お父ちゃんも息子居らんかったから、ほんまは平次とゆっくり飲みたかったんちゃう?」 『そう・・・なんか?何や突然やし、こん前忠告されたばっかやしなぁ』 「義父のご機嫌とるんも婿の務めや。しゃきしゃき行ってきぃ」 『・・・・・・。何や納得出来へんけど、まぁ、せっかくやからちょう付き合うて来るわ』 「うん。そうし。」 これで平次は当分帰っては来ぃへん。 あたしはキッチンのあるスーパーの袋にテーブルの上に在る多種多様なソレラを小分けに詰めて、部屋に持って上がることにした。 それなりに詰め込んでも4袋分て、おばちゃんどうやってあの風呂敷に包んで持って来たんやろ? やっぱおばちゃんは侮れん存在やわ。 次の日、目が覚めたら隣で平次が爆睡しとった。 「いつ帰って来たんやろ?」 まったく気付かんかったわ。 今日は定休日やし、どうせ昨日おとうちゃんと飲み明かしたんやろし、ゆっくり寝させてあげよ。 そう思うてこそっとベットから出ようと体起こしかけたら、腰に巻き付いとった腕に力が入って引き戻されてしもた。 「平次?」 起こしてしもた思うて、平次の顔を覗き込んだけど目ぇは閉じたままや。 そやからもっぺん起き上がろうとしたけど、また同じ。 「平次!起きてるんやろ?」 「なぁ、和葉」 予想に反して真面目な声が返って来た。 「何?」 朝から平次がこんな真面目な声を出すなん、珍しい。 昨日お父ちゃんに何か言われたんかな? 「お前・・・妙な薬とか隠してへんか?」 「・・・・・・・・・・・・」 思わず顔が引き攣った。 「く・・薬て何の?」 「所謂夜の媚薬ちゅうヤツや」 「な・・なんであたしがソンなん・・・」 あたしは平次から離れようともがいたけど、巻き付いている腕はびくともせぇへん。 「ほんまに、お前は嘘が下手やなぁ」 もう一本の腕まで巻き付いてきて、あたしは平次にしっかりと掴まってしもた。 「うっさい!それより、何でそんなコト知ってんの?」 「昨日おちゃんがな、和葉に変なモン飲ますんやないで、言うて俺に何遍も言うさかいなぁ」 「お父ちゃんが?」 「そらぁ恐い顔で言われたんやで」 「・・・・・・・・・・・・」 何でお父ちゃんが知ってるんやろ? 「なぁ平次?」 「ん?」 平次はアタシの首筋に顔を埋めて、じっとしとる。 くすぐったいけど、今はそれどろや無い気がする。 「昨日、おばちゃんが事務所に来たこと知っとる?」 「オカン?いや知らん。昨日来たんか?」 「うん」 「何しに来たんや?」 おばちゃんが来るなん滅多に無いから、平次が疑問に思うんも仕方ない。 「それがな・・・」 あたしはほんまは平次に昨日のアヤレコヤレが在ることを知られるんは嫌やけど、自分の中で沸き起こった謎を解明したくて状況を掻い摘んで話した。 謎解きは平次の専売特許やから、あたしが悩むよりもきっと解決が早いはずやから。 「なるほどなぁ・・・」 平次はあたしを抱き締めたまま、何か考えてるようや。 「な?おかしいやろ?」 「おっちゃんもオカンも確かにタイミングが良過ぎやな」 「そうやろ!」 「ああ。しかもオカンが昨日持って来たばっかりの薬んコトを、おっちゃんが知ってるんも変な話や」 「何でやと思う?」 「そやなぁ・・・安直に考えて盗聴いうんが一番妥当やろなぁ」 「と・・トウチョウ?!!」 あたしは仕事がら聞き慣れたソノ言葉に、改めて驚いてしもた。 やって、おばちゃんは警察幹部の奥さんやし、お父ちゃんに至っては現役の警察官やで。 あ・・ありえへん・・・ 「幾らなんでも、それは無いんちゃう?」 「分からへんでぇ。おっちゃんはお前んコトになると見境のうなるし、オカンは何を仕出かしてもおかしゅうないしなぁ」 このオトコはなんでこんなに平気なんやろ? やって、やって、ほんまにソンなんが在るんやったら今までのアレやコレやぜ〜んぶ聞かれてたちゅうことなんやで? かぁ〜〜〜!て顔が真っ赤になるやん。 「な〜にを今更、耳まで赤こうしてんねん」 平次の含み笑いが余計にムカツク。 やから平次の腕を振り解こうとしたら、 「やったら賭けへんか?」 て言われてしもた。 「何を?!!」 「事務所に盗聴器が1コでもあったら俺の勝ち、何もなかったらお前の勝ち」 「え・・ええよ!」 絶対に何も無いに決ってるんやから。 「ほな商品は勝った方の言うことを今日1日何でも聞くコト、でええな?」 あたしは無言で頷いた。 それから平次が盗聴器を探す機材使うて、事務所を調べることになった。 仕事柄、こういう機材は色々持ってるんよ。 で、結果は信じられへんけど平次の圧勝・・・ 2箇所のコンセント内に1コづつ、それから電話機の中に1コ、更にはキッチンに在るテレビの中にまで1コ在った。 合計4コの盗聴器をあっさり発見。 マジですか? 「こらぁプロの仕事やな。差し詰め、科捜研辺りにやらせたんやろなぁ」 「・・・・・・・・・・・・」 科捜研て・・・どんなプロ集団なんよ・・・はぁ・・・ 「あんた何でそんなに余裕ぶっこいてられんの?」 「そやかてなぁ、いくら俺でも府警相手にしたら勝てんで」 「そういう問題ちゃうやろ!」 「お前もさっさと諦め、あったモンは仕方無いやろが」 「・・・・・・これ・・・どうすんの?」 あたしは平次が取り出した4コの盗聴器を指差した。 「おっちゃんもオカンもバレタことは知っとるやろうから、暫らくは大人しゅうしとるんちゃうか?」 「注意せぇへんの?」 「言うて素直に認める相手でも無いやろが?」 「そう・・・やけど」 それでも、やっぱ何か言うた方がええんとちゃうん? 「やったらオカンには俺から言うとくから、おっちゃんにはお前から言えや。その方がおっちゃんには効果あるやろし」 「そうするわ」 あたしは今までの父親像がガラガラ音を立てて壊れていく気ぃがした。 何か妙に疲れたから、部屋に帰ってもっかい寝よ。 そう思うて部屋に帰ろうとしたら、 「賭けは俺の勝ちやで」 と平次の勝ち誇った声が追い掛けてきた。 そうやったわ・・・ 何かもうどうでもええ気分やったから、「で、何して欲しいん?」と気軽に聞いてしもた。 「オカンが昨日持って来たモン出せや」 「・・・・・・・・・・・・」 「嫌とは言わせへんで」 「・・・うう〜〜」 「そんな顔して唸ってもあかん。何所に隠したんや?」 あたしは思わず上を見上げてしもた。 「くく・・・お前・・・ほんまに分かり易い・・・」 1人楽しげな平次に引っ張れるように部屋に帰ると、あたしは渋々昨日隠したアレやコレやを平次の前に晒す嵌めになった。 もちろんソレらを見た平次が目ぇキラキラさせて色々試してみたのは、はっきり言うて思い出したくも無い! 次の日に速攻、纏めて捨てたのは当然やろ。 そやけど、そのお蔭かどうかわ分からんけど、子供が出来たのも事実。 後日おばちゃんに、 「また要る時は言うてな」 と耳打ちされたのもほんまのこと。 結局あたしの妊娠でどたばして、盗聴器のことははっきりせんままになってしもたけど。 でも、月に一度は事務所をチェックすることにしたんよ。 やって、相手はあのおばちゃんとお父ちゃんやで? そうすんなり諦めるとは思われへんやん。 今度は孫が〜とか言うて、何仕掛けてくるか分からんしな。 気ぃ抜けへんわ・・・ |
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「皆様も盗聴器にはご注意を!(笑)」 by phantom ■春夏冬中シリーズ■ @OFF19「春夏冬中」AOFF31「不倫や〜〜!」BOFF02「今何所におるんや?」 C仕事12「服部探偵事務所24時」DOFF25「引き出しの奥の小箱」E仕事21「盗聴器にご注意!」 F仕事19「この子誰の子?」 |
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