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「すまんな、待たせてもうて」 「こちらこそ急に呼び出して、悪かったわね」 「かまへん、長い付き合いや。……ほれ、例のモノ」 「thank you ……」 「――private eye(探偵さん)」 ■ 秘密厳守 ■ by yuna もう何年になるかしら。 私達が、こうして連絡を取り合うようになったのは。 顔をあわせることはほとんどなく、もっぱらメールでのやり取りだけだけど。 たまに、こうしてお酒を酌み交わす。 もちろん、お互い変装してね。 「でも、今日はまったえらいセクシーなカッコでんな」 「あら、あなたもゾクッとするほど良い男よ」 そう。 彼に少年の面影はもうどこにもない。 初めて会った時も、どこか大人びているところはあったけど。 見た目はまだ子供。 こんなに、私を欲情させる色気は持ち合わせてはいなかったわ。 「やっぱりかなわんわ。お世辞も超一流やで」 「あらずいぶんね。じゃあ聞くけど、私あなたに嘘ついたことあったかしら?」 「腐るほどな……」 でも、今は信用してんで。 そう言って、彼はチャームポイントでもある子供っぽい笑顔で煙草の煙を吐いた。 今日、直接会った目的は、私達が追いかける男の過去を洗うため。 当の本人は、香港で姿を目撃されてから見つかってはいない。 その男は、アジアを中心に暗躍するスパイの1人でもあるんだけれど。 盗まれた情報がまたやっかいなモノでね。 それを守ることが、今の私達FBIに課せられた最大の目的だった。 そして、過去に男が潜伏していたのが。 この大阪ってわけ。 「難儀したで。顔も名前も分からん男を調べてくれいうんやから」 「でも、見つけた。 ……充分でしょ?あなたにはそのぐらいの情報で」 「かなわんなぁ、先生には」 名前も、会うときにはお互い本当の名前を呼び合わないようにしている。 私は『先生』で、彼が『ブラック』。 私の『先生』は、初めて会った時そう呼ばれていたからすんなり呼び名は決まったけど。 『ブラック』は、私がそう呼ぶと決めたとき、彼の右眉が怪訝そうにピクリと動いたのを私は見逃していない。 今では、そう呼ばれることに違和感はないようだけどね。 「……で、そっちの今回の成果は?」 「残党の一部を確認したわ。 ”そこにあった”っていう形跡だけだったけど」 「充分や。 こっちは手探りで闇ん中探し回っとる状態やし、跡だけでも分かったらそっから繋げる事が出来る」 「もし見つかったとしたら……あなたはどうするの?」 「んなもん、即飛ぶに決まってるやんけ」 「今の生活に戻れなくなるかも知れないのよ?」 「そんなん、この仕事についた時から……いや、アイツ(工藤)に会うた時から覚悟はできてる」 「…………」 本当は私。あの時あなたが刑事じゃなく、探偵という仕事に就いたのには驚いたのよ。 あなたは探偵としても素晴らしかったけど、クールキッドとは真実を追うスタイルが異なっていたから。 迷わず、警察という国家組織に行くと確信していた。 そうしたら私達とも方向性が違って、もう会うこともなかったと思うのにね。 あれから10年。 黒の組織との決着もつかず時が過ぎ。 薬の解毒剤も見つからず、そのまま歳を重ねている元高校生探偵は。 正真正銘の高校生の姿になって、今を生きてる。 あなたが探偵になったのも、そのためでしょ?平次。 以前そのことを聞いたら、あなたは笑っていたけど。 終わらないのね。 このままでは、何も。 江戸川コナンとして生きる彼のために。 その帰りを待ち続ける、彼女のために。 あなたは、これからも生き続ける。 ふと空になったグラスに、目を落とす。 私は、先日会った女性の笑顔を思い出し口角を上げた。 「なんや?」 「そういえば、もうしたの?結婚」 「な、な、な、な、なに言うとんのや、先生?!」 「遠慮する必要ないじゃない、この事と彼女の事は無関係なんだから」 黒い顔が、見た目でもはっきり赤くなったのが分かった。 相変わらず、コッチの方は奥手みたいね。 でも頭の良い彼は、私の言いたい意味を即座に理解すると。 残り少ないバーボンを一気飲みし、切なげに目を伏せた。 「巻き込みたくない訳ね」 「オレは……」 「ここまで引っ張ってきたくせに、往生際の悪い」 「――っそれはアイツが勝手に!」 「自分が離したくなかったからでしょ?」 「いくじなし」 そう言って睨んだら、あなたは内ポケットに入れていた眼鏡をかけ、バツ悪そうに笑った。 「先生には参るわ……。せやな、都合よく側に置いとっただけかも知れん、自分のためにな」 でも、それもそろそろ潮時かも知れんなぁ。 多分、彼女のことを思ってるのね。そう呟き煙草に火をつけた彼の顔は私に見せたどの顔より柔らかかった。 「彼女と、離れるつもり?」 「付き止めたんやろ、ホンマは? 今日はその事を言いに来たんちゃうんけ」 「……まったく。感が鋭いのは相変わらずね」 そう。そのために来日して、ここに来た。 当事者である工藤新一じゃなく彼のところに。 まだ探りの状態だけど、ここからは彼の力が欲しい。 聡明で、度胸があって、そして何もかも把握してくれている彼の手が。 だからこそ、私は彼女に会いに行った。 「ある国の日本人街に、元黒幕の老人が住んでいるの。彼は誰にも心を開かないわ」 「そこにオレが潜り込んで親密になれと」 「ええ。これは強制ではないけど、出来れば協力してもらいたいわ。どうする?」 「答えは、yesや」 「もしかしたら、相手の懐に落ちるかもしれないのよ」 「覚悟は出来てる」 揺るぎない目ね。 彼女と、一緒だわ。 「じゃ、これパスポートね。1週間後、例の場所で待ってるから」 そう言って、私は2枚のパスポートを渡した。 「これはっ?!」 「夫婦で潜入、これが条件よ。彼女にも了解は取ってあるから」 「おまっ、……なに勝手なこと!」 「彼女はもうとっくに知ってたのよ、あなたが影で組織を追っていることをね」 「――なっ?!」 予想通り、彼は絶句したままその場に立ち尽くしてしまった。 ”彼が発つ時は、自分も一緒に” 5年ほど前、彼女『遠山和葉』は私のところに突然現れて、そう言った。 彼女が真実を知ったのは、ほんの偶然だったみたいだったけど。 でもそこから、彼女は覚悟を決め今日のためだけに人生を捧げた。 正直、「平次の足手まといにならないようにするにはどうすればいいのか?」と訪ねて来られた時は対応に躊躇したけれど。 彼がいなければ、この娘は確実に……。 平次のためなら火の海にでも飛び込む。 彼女の瞳に、そんな覚悟の色が見えた。 だから。 5年前、私はある条件を出し彼女を帰すことにしたの。 そして昨日久々に再会した彼女に息を飲んだわ。 風貌や彼女の持つ雰囲気は全然変わらなかったけれど。 ……ずっと彼には内緒にしていたのね。 彼女の真の姿を垣間見た私は。 想像をはるかに超えた存在に成長している彼女に。 その情熱の深さに。 驚きと、感動で震える心を隠すことが出来なかった。 「これを……和葉が……?」 見せたのは、数十ページにも及ぶカリキュラム。 それは私達や国家クラスのスパイが身に付けるべき過酷な手引きで。 それを彼女は5年という時間をかけ、彼と共に歩いて行く術を自分自身に叩き込んだ。 ――他でもない。 すべては、目の前にいる彼のために。 「これは彼女が望んでしたことよ。私達は力になる人間を受け入れるし、何も問題はないはずだけど」 「せやけど……オレのせいでアイツは」 それでもまだ、彼はこの現実を受け止められないでいる。 でも。 そろそろ自分の気持ちに素直になってみたら? 「どんな場所でも、どんな状況でも、一緒にいられるだけで幸せな人間もいるのよ」 あなたもそうでしょ? 私は、最後にそう駄目押しの一言を告げる。 すると彼は大きく目を見開き、暫し絶句すると。 私の言葉を噛みしめるように目を閉じ。 そして。 「……和葉のアホ」 辛そうに。 でもどこか幸せそうな顔で。 愛しい人の名を呼んだ。 ――10年の時を経て。 また、組織との闘いが動き出そうとしている―― |
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「「ジョディと平次。」――って、いったいどんな設定なんだ?!……いやはや。自趣味爆発ですみません(汗)でも、DVDだと組織は崩壊してなかったからこんな状況も考えられるのではないのかと……。何だかんだいいつつ平次は和葉のこと側においてるんだから。こうなったら生きるも死ぬもどこまでも一緒に行っちゃってください!(願望)」 by yuna |
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