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「あふ……」 「疲れたか?」 「ううん、全然。 退屈なだけや」 「いうやないか」 深夜2時。 街灯もまばら、月は見えず。 オレは手持ち無沙汰に停めてあるバイクに手をかけながら何かを感じ取ると。 相棒である和葉に向かい、そっと目配せをした。 ■ 事件現場にて ■ by yuna 真夜中の埠頭で、久々の張り込み。 今日の依頼は裏社会絡みの取引現場調査で。 オレはいつものように和葉を引きつれると、人目に付かぬよう雑居ビルの陰に身を潜めた。 えっ?何かマフィア映画のようやって? まさか。 オレは探偵を始める時、ポリシーとしてどんだけ金積まれても一応そういう依頼は丁重にお断りすると決めた。 っていうか、ヤクザ相手に商売するわけにはいかへんやろう? だが、大手の。それも幹部クラスの人間ともなると、時には”その筋”の媒体が絡むのがこの社会の成り立ちで。 やからオレの周りも多少それらしい繋がりは無きにしも非ず、っちゅうわけ。 深入りはせえへん、そこは情報収集ぐらいのお付き合い。 仕方ないやろ、ちゃんと清く正しいパイプは保持しとるから、心配はご無用。 ……まぁ、そこらへんはあんまり深く追求はせんといて欲しいいうんが。 今の、オレたちの現状やったりする。 そんなこんなで。 今夜の依頼相手は、そっち系の某大手メーカー。 さすがに、”今日はヤバイかな?” と思ったオレは和葉に、「今回は留守番しとけ」 そう告げたんやけど。 「なにアホなこと言うとん、ほら行くで?」 予想を裏切るくらいケロリとした一言で、オレは和葉にピシャリと切り替えされた。 (ホンマ、しゃーないやっちゃで……) 胸ポケットから煙草を取り出し火をつける。 そんな勝気な和葉を脳裏に浮かべほくそ笑むと、オレは数年前この家業を始めた頃の事を思い巡らせた。 『アタシはどんな時も、あんたの側におるから!』 オレが探偵になるって言うたとき、お前は反対するオレに涙を零しながらそう言ったんやよな。 しかしいくら今までオレの事件にくっ付いて来とったからいうて、本格的に仕事になればそういう訳にはいかへんから。 まぁ適当に事務なんぞやらせて、後はのんびりオレの側で花嫁修業でもさせとけばええか……。 なんて考え、そん時は和葉を側に置くことを快諾したんやけど。 それが……何の因果か。 今では和葉は探偵の所業をすべてを兼ね備え、オレの右腕として側にいるというのだから。 こんなことさせとうはなかったんやけどな、マジで。 でも、いくら言うても怒っても、このはねっ返りはオレのいうことなん全然聞こうとせえへん。 せやから、今となっては後の祭り状態なわけで……。 オレとの共存を望んだこのアホでしょうもない女は。 この生と死の綱渡りみたいな日常を、「幸せ」 なんて、サラリとぬかしながら。 今も、オレの側におるんやから。 依頼人を狙う黒幕の動向を、ただひたすら待つ。 本命の正体もわかり、後は目的を果たすだけ。 相手が動くとその後を追い現場の証拠を確保したら、それが仕事終了の合図なんやけれど。 そんな緊張した、けれども退屈といえば退屈な時間を。 今はオレたち、ただひたすら待ち続けるしかなかった。 「ふあ……」 「……お前なぁ、ちょっとは緊張感もてや」 「ふふっ」 「ったく……まぁ長期戦やからしゃーないけどな」 「ホンマ、じゃあちょっとだけ寝てよかな、アタシ」 「アホか」 コツンと軽く頭をコツくと、ペロリと舌をだすお前。 ――ちゅうか、たいがい順応しすぎやろ?! これが、黒幕を追いつめる前の様子か?なんて、一瞬疑ってしまう。 『オメー、緊張感ねぇな』なんて、東の友人によく言われたオレでさえ呆れるぐらいなこの和葉の態度は。 ある意味凄いと思えてまうから、時の流れとは不思議なもんや。 (来たか……?!) 先ほどまで静かだった倉庫から、人影が多数出てくる。 ようやく、ターゲットのご登場か。 1人、2人、3人……雑魚を引き連れて、場所を移動するもよう。 深夜ということもあり、さほど警戒心はないみたいやな。 オレはそんなターゲットの様子に呆れながらも、間合いが取れるのを確認しつつ、エンジンを入れるためバイクのキーに手をかけた。 「動いたん、平次?」 「おお、手はず通りや」 オレの動きに素早く反応する和葉。 その口調に、先刻までのダレた気配は全く見えない。 「ほな行くで!」 「オッケー!」 にやっと不敵に笑う和葉に、内心たいしたもんだとつぶやきながら。 オレはホシを追うため、思い切りアクセルを回した。 |
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「10年後、一緒に探偵業をやってる平和。(お手伝いじゃなく、相棒な和葉ちゃんでv) 平次をもっと渋く書きたかったんですが……見事に撃沈しました(汗)」 by yuna |
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