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■ 幸せな結末 ■ by micky 『ねぇ。いっそ和葉ちゃんから告白しちゃえば?』 「今更…もう無理やわ。こんな長い間一緒におったら、改まって告白とかしても笑われるに決まってる」 『絶対、笑わないって』 「まぁ、笑われてもええけど、気まずくなるのは嫌やなぁ」 『…どうみたって両想いなんだけどなぁ〜。なんでだろう?』 「なんでって…そんなんアタシの方が聞きたいわ」 『ん〜、2人とも照れ屋さんだから』 「ハァ…嫌や…。30歳になっても、こんなんやったらどうしよう」 両想い。 大人になったからかもしらんけど、そんな目に見えない想い(もの)は信じられへん。 もし信じているものがあるとすれば、昔も今も自分の思いだけ。 大人になっても、アタシは平次の傍にいる。 10年前に望んだ「平次の傍にずっといたい」という願いは、今も叶えられている。 それは昔も今も平次が好きという思いを信じてきた結果やと思う。 でもな。 ふっと考える事があんねん。 平次はアタシが傍におる事をどう思ってるんやろって。 この探偵事務所を立ち上げる時も、平次はすべてを一人で決めた。 そう…アタシには一言の相談もなしに。 悔しくて、平次に詰め寄った時、 「なんでオマエに相談せなアカンねん」 「なんでって……」 「…」 「…」 喧嘩にもならんほどに、平次はアタシを必要とはしてくれてへん事がわかった。 それでも一緒にいたいから、この事務所で働く事にした。 働くと決めた時も「…勝手にせい」との一言で採用となった。 いつも思うけど、平次にとって、アタシってなんなん? これからも幼馴染は、どこまでいっても関係は変わらへんの? 平次の傍にいて、これから何か変わる事はあるんかな。 アタシらに未来ってあるんかな。 夢とか…見てもええんかな。 薄暗くなった事務所の中。 種類の整理が終わりかけた手が止まったまま、アタシはため息を吐いていた。 「なにボーっとしとんねん」 「…ボーっとしてるんちゃう。考え事してんの」 蘭ちゃんとの電話をきっかけに、胸の奥にしまいこんでいた思いが溢れかけていたんや。 「……仕事せぇへんのやったら、とっとと帰れ。邪魔や」 「平次かて、仕事終わったんやろ?…それともまた勝手に別の仕事の依頼を受けてきた?」 アカン。 邪魔と言われ、可愛くない言い方してしもうた。 「なにカリカリしとんねん。遠山のオッチャンがエライお前ん事心配してたで。元気ないちゅーてな。仕事をさせ過ぎやっ言うて。ほんで今もボッーとしとるし……少し体を休めた方がええんとちゃうか。2、3日休んだらどうや?」 「いやや!休むくらいやったら、仕事してた方が……仕事して………平次の」 ―アタシ、何を言ってるん― 急に怖くなって、平次の方を見れなかった。 そして下を向いたままのアタシの横を通り過ぎて、平次は事務所のドアから出て行ってしまった。 「へ…いじ?」 アタシ……変やわ。 なんや情緒不安定になってしまってる。 自分の思いを信じてここまできたのに。 何んもかんもわからんようになってしまったみたいや。 何度もこんな思いを繰り返して、今までどうやって乗り越えてきたんやろ。 「……帰った方がええんかな」 身支度を簡単に済ませて、机の上の物を鞄に詰め込んだ。 カーディガンを手に取り、事務所を出ようとした時、ドアが突然開いた。 「……仕事、頑張るんやろ。…ほれ」 平次が手に持っていた2つの缶コーヒー。 その一つをアタシの頬に当ててきた。 「冷た……」 「…なに考えてんのかは聞かん。せやけど、少し頭を休ませたらどうや」 平次はアタシの腕を掴んで、窓際へと強引に引っ張っていった。 「ここの事務所の窓から、通天閣がみえるやろ?」 「…うん」 「贅沢やな」 「…そやね」 「この場所…オレの好きなものが、いつも見れんねん」 「うん」 「元気になれるちゅうか……そんなところや」 「平次はホンマに通天閣好きなんやね」 アタシの答えに、平次がフッと笑って「…せやな」と言った後、ライトアップされた通天閣をしばらく見ていた。 アタシはといえば、もらった缶コーヒーを開けて、壁にもたれながら静かな時をしばらく共有した。 「休み…2、3日もらってもええかな?」 少し冷静になった頃に、ポロッと口からそんな言葉が自然に飛び出した。 「せやな。2、3日あったら、どこにでも行けるし。ちゅーか、どこか行きたいとことかあるんか?」 「行きたいところ?」 「オマエがおらんと、必然と事務所も休みになるし…久しぶりに海までツーリングてのはどや?」 「…海」 「…なんや他にどっか行きたいとこがあるんか?旅行に行ってから、どっかに行きたい言うても却下やからな」 「海に行きたい」 「せやろ。行きたいやろ」 「メッチャ行きたい!」 「よっしゃ。ほんなら、ちゃちゃっと仕事終わらせるで」 「うん。任せといて!」 アタシ、傍におってもええんかな。 平次はちゃんとアタシとの事を考えてくれてるんかな? 両想いかと言えば、そうやとはハッキリ言えへん関係やけど、 幸せな未来を、夢見るんはええよね。 2人で楽しそうに旅行する姿を思い浮かべながら、アタシは仕事の資料を持ったまま、いつの間にか深い眠りについていた。 |
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「 この旅行で2人の関係が変わったら、それはそれでいいかも…なんて。そんなに簡単に関係が変わるなら、和葉は苦労しないって(苦笑)」 by micky | ![]() |