■ 寝起きの笑顔 ■ ―KAZUHA―。。。 |
朝、目ぇ覚めたら、平次が居った。 絨毯の上で大の字んなって寝とる。 ここはどっからどうみても、あたしん家のあたしの部屋やんなぁ。 昨日はお父ちゃんが帰って来ん日やから、しっかり戸締りしてから寝たはずなんやけど。 何であんたがここに居るんよ? ただの幼馴染の分際で、乙女の部屋に不法侵入たぁええ度胸やね。 まったく、分かってんの? あたしら今はた〜〜〜だの幼馴染なんやで。 2ヶ月以上も音信不通の男なん、世間一般では彼氏とは言わへんねんで。 まぁ電波の届かへん未開の地とか、酸素のまったく無い海の中とかやったら別やけど、大阪なんばりばり電波圏内やん。 せっまい路地裏やって、薄暗い地下街やってアンテナ3本きっちり立ってるんやで。 それとも何、あんたの周りは妨害電波でも出とって圏外になってるとか言うんやないやろね。 有得へんわ。 それでも通天閣から飛び降りるつもりでそうやとしても、何ヶ月も彼女に対して音沙汰無しなん有得へんやろ。 線で繋がった電話も有るんやし。 メールやったら、パソコンからでも送れるんやし。 それでもあかのやったら、せめてお父ちゃんに言伝の一つでもしてくれたってええんやない。 そやろ? そやけど、あんたはそれすらせぇへんかったんやで。 それが、どういうことか分かってんの? 会いにも来ぇへん、連絡も無い。 会いに行っても居らへんし、電話もメールも返事が無い。 これは完全に破局やろ。 別れたい時に、別れたい相手に対して使う手ぇやろ。 あんたが大阪に帰って来てからは、東京ん時みたいに遠距離やないんやし。 彼氏やったら、どんなことしてでも会いに来るやろ普通?簡単に来れる距離やろ? 「あ〜何や腹立って来たわ・・」 朝っぱらからどうしてイライラせなあかんのよ。 ムカツク男やな、まったく。 「はぁ・・」 服持って降りて下で着替えよ。 起こさんようにベットから下りて、クローゼットから服出して、ドアに手ぇ掛けたら呼び止められた。 「どこ行くねん。」 「どこって、下に下りるんやけど。」 「そん格好でか?」 「あんたが居ったら着替えられへんやんか。そやから、持って下りて着替えんの。」 「ここで着替えたらええやんか?」 「あんなぁ・・。何でただの幼馴染ん前でパジャマ脱がなあかんの?」 あたしが呆れたように言うたら、平次は何でか飛び起きた。 「今・・・なんて言うた?」 「何でただの幼馴染ん前で着替えなあかんの、って言うたの。」 「・・・・・」 「だいたいやなぁ、何勝手に人の部屋に入って来てんの?玄関閉まってたやろ?どうやって家に入ったんよ?」 「・・・・・」 「黙ってへんと何か言いや。いくら幼馴染やからいうても、やってええこととそうやないことがあるやろ?何考えてんの?」 「・・・・・」 「この前なん、人のお見合いまで邪魔して。あんたのお蔭で、せっかくの玉の輿が駄目になってもうたやん。どうしてくれんの?」 「・・・・・責任・・・・・とったる。」 「ほんまやわ。責任とって、もっとええ男連れて来てや。」 「俺が貰たる。」 「はい?」 「俺が責任とってお前んこと嫁さんに貰たる。」 「・・・・・」 何言い出すかと思たら。 「あんたなぁ・・」 「すまん!ほんまにすまん!俺が悪かった!」 今度は行き成り土下座なん・・・ 「お前んこと放とって悪かった。もう絶対にそんなんせんから、帰って来て下さい。」 しかもその言葉使いおかしいやろ・・・ 「い・・」 「今更とか言わんといてくれ!」 「そ・・」 「そんなんもあかん!」 「あ・・」 「アホとかボケやったら、何ぼでも聞いたる!」 「・・・・・」 「ほれっ!好きなだけ言えや!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「お前こそ何か言えや!」 「・・・・・・どアホ・・」 「・・・・・」 「このドアホッ!!今更どの面下げてそんなん言うてんの?!!どんだけ、あたしのことコケにしたら気が済むんよ!!」 「・・・・・」 「2ヶ月以上もまったく連絡も寄こさへん男なん信用出来るかぁ〜ボケッ!!」 「・・・・・」 「どうせ、どこででも可愛い女の子に囲まれてるんやろ?それやったら、あたしなん要らへんやん!用済みやん!!」 「なっ・・」 「何やない!!あたしが何も知らへんとでも思うてんの?!府警の子らとのコンパに行ったやろ?それに同級生とのコンパも!!」 「ちっ・・」 「動くなっ!!言い訳なん聞きたないわ!!そんなんする時間はあっても、あたしにメール1コする時間は無かったんやろ?!!」 「かずは・・」 「気安〜人の名前呼び捨てにすなっ!!」 あ〜も〜ムカツくわ〜〜〜! 「あたしにやって我慢の限界はあるんやで!!これ以上あんたに付き合うてられへんわ!!」 「か・・・和葉ちゃん?」 「ほんまあんたには愛想が尽きたわ!!」 「・・・・・」 ばったん。 て平次はまた絨毯の上に寝そべってしもた・・・大の字で。 今度は何なんよ。 「何やってんの?!分かったんなら、早帰りや!!」 「・・・・・・・・・・・・・・俺死ぬ・・・・」 「はぁ?」 「ここでこんまま死ぬ。」 「アホなこと言うてへんと、とっとといね!!」 「動けへん・・・・・・息も止まってまう・・・」 「はぁ〜〜?」 「お前が居らんようになったら、俺、生きてられへん。」 「今迄平気やったくせに。」 「・・・・・」 この男の思考回路はどうなってんの? 「ほんまに死んでまう・・・・・心臓止まりそうや・・・・・」 「はいはい。」 「息・・・出来・・へん・・・」 「・・・・・」 ほんまに息止めてもうたわ。 どこまで頑張るんか放といたろ。 ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・。 いつまで、そうしてる気なん? もう結構時間経ったんちゃう? ・・・・・・・・・・。 「平次?」 ぐったりしたまま動かへん。 「ちょっと平次?」 え?え? ちょ・・ちょっと待ってぇな・・。 「平次!ええ加減にしいや!」 ほんまに動かへん。 慌てて近寄って、口に耳当ててみたんやけど。 「 ! 」 ほんまに息してへん! 「平次!!ちょう平次!!起きて!!平次!!」 冗談やろ? そうやろ? 「平次!!へ・・」 !!!! 「うっ・・・・んんんん・・・・・」 やっ・・・・・・・・やられた・・・・・・・・。 「・・・・・人工呼吸。」 「う〜〜〜」 捕まってしもて、逃げられへん。 「放せ!!」 「あかん。」 「触るな!!」 「いやや。」 もうなんでこんな単純な手ぇに、引っ掛かってしもたんやろ。 「俺はコンパなんぞには行ってへんで。府警の子らのは、結婚する子がおって最後やから顔だけでも出してくれ言われてほんまに挨拶だけして帰ったんや。高岡らのやつは、お前も来る言うから行ったのに、お前は居らんは派手な女はぎょうさん居るわで速攻帰ったんもほんまや。」 「・・・・・」 「連絡出来へんかったんは、大きなヤマ抱えとって、お前に危害が及ばんようにて思うてたんや。」 「・・・・・」 「俺かて辛かったんやぞ。そやけど、お前の声聞いてしもたら我慢出来へんようになってまうのが分かってたから必死で耐えたんやで。」 「・・・・・信じられへん・・・そんなん・・・」 「やったら、どないしたら信用してくれんねん。」 一度無くした信用が、そう簡単に取り戻せる訳無いやん。 「上着の右ポケットにあるモン出してみ。」 「なんで?」 「ええから。」 平次の右手があたしの左手を、無理矢理ポケットに突っ込んだ。 「お前のや。」 「あたしの?」 「そや。お前の為だけに選んだ。やから、それはお前のや。」 出て来たのは、綺麗にラッピングされた小さな箱。 「開けてみ。」 平次が放してくれへんから、そのまま平次の胸の上でその小箱を開ける。 「あっ・・」 「どや?気に入ったか?」 ・・・・・・・・・・。 「・・・・・きれい・・」 「お前の好きそうなん探すんに苦労したんやで。」 「これ・・・平次が選らんだん?」 「さっきからそう言うてるやろ。俺が和葉の為だけに選んで買うた。」 どないしょ・・・。 これ・・・・・・きれい過ぎるわ・・・。 「これでも信じられへんか?」 どないしょ・・・。 涙出そうや・・・。 「俺と結婚してくれ、和葉。」 ・・・・・・・・・・。 「”うん”て言うてくれや。」 ・・・・・・あたしはどうしても平次には勝てへんねんな・・・。 「もう・・・あたしんこと放っとったりせぇへん?」 「絶対にせぇへん。」 「一人ぼっちにしたりせぇへん?」 「一生離さへん。」 「約束してくれる?」 「誓うてもええ。やから、俺と結婚して下さい。」 しゃ〜ないから、とびっきりの笑顔で答えてあげるわ。 「 うん。ええよ。 」 Congratulation !! |
「寝起きの笑顔」−HEIJI− |