「服部はええよなぁ〜。チョコ食われへん程もらうんやからなぁ〜〜。」 「そやそや!ちった〜こっちにもまわせや!」 何やねんコイツラ。 「何言うてんねん。そんなん、ぎょうさん貰うたかて食われへんのやからしゃーないやんけ。」 今はチョコよりポテトやろが。 せっかくのホカホカが冷めてまうやんけ。 「相変わらずムカツク男やなぁ〜〜。明日はバレンタインなんやで!女からチョコ貰える日〜なんやで!」 「それなんに何でそんなお前だけが山の様にチョコ貰えて、こんな健気なオレらが手ぶらやねん!納得がいかん!!」 はぁ・・・・もう明日やったんかぁ・・・。 しかしあれやな・・・・野郎が3人マクドでバレンタインの話かい・・・・・・アホらし・・・・。 「それに確実に1つは本命チョコ貰えるんやからなぁ〜〜!」 今度はニヤニヤしだしたで。 「遠山のチョコレートはさぞかし美味いんやろなぁ〜〜!」 「な〜にが本命やねん!義理や義理!!」 ・・・・・・・・・まぁ義理でも何でも毎年くれとるんは確かやけどな。 「しかも、俺から欲しいなんて言うとらんで。」 「さいでっか〜〜。服部は幸せモンやなぁ〜〜〜。」 ・・・・・・・・・ったく!人の話聞けちゅうんじゃ! いつまでニヤニヤしてる気ぃ〜やお前ら・・・・・・やっぱアホらし・・・・・。 そやけど、今年は和葉がどんなチョコくれるんか考えてたりする俺も俺やな・・・・。 はぁ・・・。 溜息ついて、コーラでも飲もかとカップに手ぇ伸ばしたとき、後ろん方で聞きなれた声がしたんや。 「和葉〜今年はチョコどないするん?もち服部くんにはあげるんやろ?」 「今年はあげへんよ。」 へっ? あいつ・・・今・・・何言うた・・・・? 俺の全感覚は和葉ん次の言葉を待って、聴覚に大集合や。 「おっ!あれ遠山やんか!お〜〜いとう・・・・・や・・・・・・。」 うっさいんじゃ!!黙っとれ!! 俺は思いっきし横目で睨みつけた。 「・・・・・・・お前なぁ・・・・・・連れを威嚇するんはヤメや・・・・・・。」 そう言うて2人は引き攣った顔で、ポテトを摘みだしたんや。 おとなしゅう、そうしとれや! 「何でなん?ほんまにあげへんつもりなん?」 「そうや。」 「何かあったん?それか、お返しくれへんとか?」 「お返しなん貰うたことないよ。」 「そうなん?」 「そうやで。」 「服部くんてケチなんや。」 「それもあるんやけど、きっと平次の辞書にはホワイトデーなんいう項目は無いで絶対。」 「あ〜〜〜それありえるわ〜〜〜。」 こっ・・・・こいつら俺のこと何やと思うてんねん・・・・・・・・。 そやけど・・・・・・お返しかぁ・・・・・。 確かに、今までいっぺんもしたことないなぁ・・・・。 それって・・・・そんなにあかんことなんか? やってなぁ・・・・ホワイトデーなん菓子屋が勝手にいうとるだけやんけ。 「やったら、去年もチョコのお返しは無かったんや。」 「ないない!な〜〜んもあらへんよ。」 「ちなみに何あげたん?手作りチョコ?」 「手作りチョコレートケーキ。」 「ケーキ?」 「そうケーキ。のはずやったんやけどな〜。」 「はず?」 「やってな、平次が”チョコレートのケーキが食べたい”なん言うからがんばって練習して作ってん。そやのに、いつもん様に直前に”事件や〜〜!”言うて行ってしもたもんやからあげられへんやん。帰って来たんは4日後やし、ケーキなんとっくにカチカチや。」 「で?」 「結局、市販の平次に負けへんくらい真っ黒なチョコになったん。」 「お前・・・きっちり要求してるやんか。」 うっ・・・・・覚えてへん・・・・・・。 「しかも・・・アホ〜が遠山の努力を台無しにしとるし。」 ・・・・・・・・。 え〜〜〜と何やったかなぁ・・・・・・。 あっ。 そやそや、依頼があって九州に行ったんやった。 ・・・・・・・・・・これも・・・・・・・・・・・・・あかんのか? 「それでもな、”ありがとさん”言うて貰うてくれたんやけど・・・・・。あれは、絶対に自分が言うたこと忘れてるし、あたしの手作りケーキも市販のチョコもあの男には同じなんやっていうんがよう分かってん。どっちも食いモンくらいにしか思うてへんのや。」 げっ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それも・・・・・・・・・・あかんのか〜〜〜? 「服部くんて・・・・・・・・・・最悪・・・・・・・・・・・・。」 「そうやろ!ほんま最低やねんあいつ!こんなんやったら、何もあげん方がよっぽどマシやわ!どうせぎょうさん貰うんやろうし、あたしが上げへんかったって気付きもせ〜へんわ絶対。」 「うんうん。和葉ん気持ちよう分かるよ!そやったら、明日は2人で遊びに行かへん!」 「それええな!行こ!行こ!」 あいつら2人で盛り上がってんけど・・・・・・・・。 俺はそれどころやないで・・・・・・・・・。 俺って最悪なんか? 俺は最低なんか? ・・・・・・・・・・・・・今年は和葉んチョコないんや・・・・・・・・・・・・・・・・・・あかんやんか・・・・・・・・・・・・・。 「おいっ!服部っ!生きとるか〜〜?」 「いや。死んでんでこいつ。」 「ほんまにアホやなぁおまえ・・・。今年は遠山からは絶望的やで・・・。」 「そやけど自業自得やで。成仏しいぃや服部。」 はぁ・・・・・とうとうバレンタイン当日や・・・・・・・・。 なんで、こんな時に限って事件起きへんのや・・・・・・・・・・。 俺は重〜〜い体を引きずる様にして登校した。 靴箱にも、机ん中にも、ぎょうさん何やかんや入っとる。 クラスの野郎どもが色々言うとるが、そんなんどうでもええ。 いつもやったら自慢するはずの俺が何も言わへんもんやから、逆に集まって来よった。 「どないしたんや色男?腹でも痛いんか?」 「へ〜〜ちゃん?もしかしてすでにチョコの食い過ぎかぁ?」 「お前はぜ〜〜たく過ぎやで〜〜〜!」 ギロッっと一瞥してやんねん。 「今日は服部に関わらん方がええで〜〜〜。」 「そやそや。今年は貰われへんのやからな〜〜〜。」 昨日と同じニヤニヤ顔や。 いっぺんシメたろかこいつら! 「「おお〜〜怖。」」 「何やそれ?こいつもうぎょうさん貰うてるやんか?」 「「ちゃうちゃう。」」 「お前らいらんこと言うなや!」 退散退散言うて、周りのやつら連れて教室ん隅で密談かい! チラチラこっち見とったら何話してんのかバレバレやで! はぁ・・・・。 和葉とはクラスが違うとるからあいつがどんなんか分からへん。 どうせ、いつもん様に義理チョコを配ってんやろなぁ・・・。 そやけど・・・・・・・・俺んのは無い・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・・。 それからも、俺んとこへはぎょうさんチョコが集まって来よった。 やけど、直接持って来るやつには断ったんや。 これは朝からずっとそうやで。 去年までは貰うてたんやけどな。今年はあかん。 やけど、俺がおらん隙に置いていったモンはしゃ〜ない。捨てるワケにもいかんやろ。 帰るころには持てへんくらいや。 いつもやったら和葉に手伝わせるんやけど、今日は昨日言うてた通りさっさとおらん様になってんのやあいつは。 どうにか家まで帰って、貰うたモン全部おかんにやった。 ここでもごちゃごちゃ言われたが、シカトした。 さっさと夕飯食うて、部屋に篭るが勝ちやな。 それやのに、8時ごろに和葉がやって来よったんや。 「こんばんは〜〜〜!おばちゃんおる〜〜〜?」 「和葉ちゃんいらっしゃい。」 「これ、おじちゃんに。」 「あらっ、チョコレートやない。」 「今年はお父ちゃんとおじちゃんにはあたしの手作りやねん!」 ほ〜〜〜〜〜〜。 「おおきになぁ。あの人喜ぶわ〜〜。」 「そうやろか?やったらええんやけど。」 「何言うてんの。和葉ちゃんからやったら何でも大喜びやわ。」 「もう、おばちゃん大袈裟なんやから〜〜。」 あのおやじに手作りで俺には無いんかい。 「お茶でも飲んで行く?」 「ありがとうございます。そやけど、今日はもう遅いから遠慮しときます。また今度、寄らしてもろてもええ?」 「和葉ちゃんやったら、いつでも大歓迎やわ。」 「ありがとう、おばちゃん!ほな、お休みなさい!」 「あっ、ちょっと待って和葉ちゃん。平次に送らせるから。平次〜〜〜〜、和葉ちゃん家まで送ってあげてや〜〜〜〜!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただ働きやんけ。 俺はそれでも、きっちり和葉を送っていっとんねん。 バイクやけどな。 「ありがとうな平次。あっ、そや。」 和葉は何かカバンの中をゴソゴソしとる。 「これ、送ってくれたお礼や。」 そう言うて和葉が差し出したんは、まだほのかに温かい缶のホットチョコやった。 今年はこれで我慢せ〜いうことか。 ・・・・・・・・・・・・・。 俺はメットを脱いで、それを一気に飲み乾したんや。 甘っ・・・。 ほな、お返ししとこか。 一応、チョコと名の付くモン貰うたんやしな。 バイクに跨ったまま、和葉ん腕引っ張って抱き寄せた。 「ホワイトデーにはちーと早いんやけど、お返しやるわ。」 驚いて俺を見上げとる和葉に、ホットチョコの味がするKISSを返したんや。 こうでもしとらんと、来年も貰えへんかもしれへんやんか。 「来年は和葉ん手作りのチョコケーキくれや!そん代わり、お返しも奮発すんで!」 和葉は赤こうなって頷いとる。 よしよし。 来年が楽しみやな! なっ和葉。 「 hot choco 」 おしまい by phantom |