新学期。

俺と和葉は同じクラスに。

和葉の親友の華月も同じクラス……。

俺は一番後ろの席で和葉と華月が楽しそうに話をしているのを、外を見る振りをして聞き耳を立てて…ちゅうか聞こえてくるんやから仕方ないやろ？

「そのペンダントについている指輪…もしかして服部君からなん？」
華月が興味津々で聞いていた。

和葉は頬を染めて
「あ…うん」
小さい声で返事した後、チラリとこっちを見た。

そして華月の耳元で
「他のみんなには黙っといてな…。ホンマは学校にはつけてくんなって言われてるねん」

「なんで？」

「からかわれるのが嫌なんやて…。でも…アタシはいつでも身に着けときたいし」

大事そうに指輪を両手で包みこんだ。

「ええなぁ…そんなに思われて」

そう言ってこっちをみた華月と俺は目が合った。

怖いくらいの笑顔を向けて手を軽く振っている。

ハハ…後で何言われるんやろ。

放課後。

部活が終わると和葉が教室で待っていた。

「なんや…まだ帰ってなかったんか？」

「アタシも部活が今さっき終わって・・・平次もそろそろ帰る頃や思うて待っててん」

「ふーん。さよか・・・」
黙々と荷物をまとめる俺の方へ、和葉が近づいてきた。

その時、和葉の制服の胸元に光る指輪に目が止まった。

「和葉は・・・その指輪気に入ったんか？」

「だって平次からのプレゼントやし・・・それに可愛い色やん…ピンクのような黄色のような色で…これ石の名前はなんていうんやろ？」

「・・・知らん」

言える訳がないやろ？

俺との恋愛にいつも不安がっている和葉に送った石の名は

オレンジムーンストーン。

一ヶ月前のちょうど今頃やった。

ホワイトディには和葉とデート。

バレンタインのお返しが決まらんまま、時だけが過ぎていっていた。

いろいろ考えたんやけど・・・結局、無難に指輪かペンダントにしようと思うてた。

たて続きに事件を片付けて、3月14日は和葉の為に空けておこうと必死で頑張ってた最中の事やった。

事件現場近くにアクセサリーショップがたまたまあって・・・中に入ってみたんや。

目がチカチカするくらいのアクセサリーに、カップルや女同士の妙に高いテンション。
（やっぱこの空間は…俺には無理や。出直そ・・・）

そう思い直して店を出た所で…嘘やろ。

偶然、華月とバッタリ会ってしもうた。

気まずい・・・。

こっちメッチャ見てるやんけ・・・。

俺は気づかない振りをしつつ、横を通り過ぎようとした。

「はは～ん。ホワイトディやもんね！もちろん和葉にあげるやつなんやろ？」
俺の話かけるなオーラを完全無視し、お構いなしに話しかけてきたんや。

嫌そうに振り向きながら
「お前に関係あらへん・・・」
素っ気無く答えてみたんやけど・・・。

「どんなん買ったん？まだ？一緒に選んであげよか？」

俺は腕を引っ張っられて、また再びあの店の中へ・・・。

「選ぶポイントに石の意味なんかも考えるとええんとちゃう？」

華月のアドバイスに1個1個石の意味を書いたコメントを読んでいったんや。

和葉の願いってなんやろ？

華月が俺の気持ちを知ってか知らずか
「和葉が不安に思っているのは、アンタとの恋愛ちゃう？だって幼馴染をやっと脱出してこれからや言うても今の今までやからなぁ・・・」

金運・・・健康・・・厄除け・・・勝負・・・

なんやいろんなジャンルがあるんやなぁ・・・。

しゃあない…………これでええわ。

はよここから出たいし。

「それ・・・」
華月の呆れた顔をよそにレジへ。

ええねん。これで。

「平次どないしたん？」
和葉が横から俺の顔を覗き込んできた。

「まぁ・・・和葉が頑張ってくれたら俺も頑張るちゅ～事でええんとちゃうか？」
独り言のようにつぶやいた。

「？」

「そうや。今度見たい映画あるんやった。和葉どうせヒマやろ？」

似合わへんけど俺も頑張ってみるわ・・・そやから。

「『どうせ』はいらんやろ！何の映画なん？……まさか推理ものとか…そやったら1人で行ってきいや」
顔をしかめて俺をみている和葉に、思わず笑いがこみ上げてくる。

不思議そうな和葉の顔。

「今日の平次変やで？」

隣にいる幼馴染兼恋人の手を握った。

ここは学校や。

もしも見られたら、えらい騒ぎになるかも知れへんけど・・・。

「和葉」

教室はオレンジ色

「ちょっと！待っ・・・」

「もうええわ・・・待ってられへん」

重なる2つの影

和葉が俺との未来に不安がらへんように・・・。

この幸せがいつまでも続くよう・・・。

ー和葉にこの指輪を託してー