PM21:45
「なにすんの!降ろして!」
いきなり車があたしの横に停まり、降りてきた男に抱え込まれるように助手席へ投げ込まれた。 そして車が急発進して走り出した。 「いやや!降りる!」 車のドアがロックされて開けられない。 絶対絶命...や。
「和葉...ちょっと黙っとれ」
その車の運転手は真っ直ぐ前を見たままこっちを見ない。
う〜どないしよう...。 友達の結婚式の2次会の帰り道。 遅くなったから帰ろうとしたら新郎の友達につかまってしもうて質問攻めにあってしもうた。 「和葉ちゃんて付き合ってる奴とかおるん?」 なんて直球に聞かれて 「好きな人なら...いるけど」 照れて答えたら 「残念...そやけど照れてる和葉ちゃんもカワイイ〜!」 とか言われて抱きつかれてしもうたその時...。 「平次!あんまり遅くなるとお父ちゃん心配してしまうから!」
「...うるさい。今日は友達の所に泊まるっていうとけ」
「なっ!なに言うてんの?」
赤信号になったとたん、平次が携帯を取り出し
「あぁ!オカンか?俺な今から東京に行くんやけど和葉がど〜しても一緒に来るって言うてな...。 上手いこと遠山のおっちゃんに......わかっとるから...当たり前や。じゃ頼んだで」 携帯を閉じて 「これで大丈夫や。安心せい」 なにが大丈夫なん?!
「帰る...帰る!か〜え〜〜る〜〜!!誘拐される〜〜〜!!!!」
あたしは車の中で絶叫していた。
「誘拐犯か...たまにはそれもええなぁ。身代金とれんのが残念や」
平次が口元を緩めて笑った。 あたりまえや!
あんた忘れてるかもしれんけど警察官やで! こんなに叫んでも喚いても平次は余裕の顔。
「なんか...疲れたわ」
あたしは深いため息をついて窓の外をみた。
けっこう暴れてて気がつかんかったけど...夜景がメチャクチャきれいやわ。 「平次...ほんまに東京いくん?」
シートに深く座り、平次のほうをチラッとみた。 「あ〜...ホンマは少しドライブしてから帰ろうと最初は思ってたんやけど」
平次があたしを見て 「他の男と抱き合ったとこ見てもうたしなぁ〜」 そうやった。
「平次...怒っとるん?」
なんか悪い事をしてしまったみたいで...悲しくなってしもうた。
「当たり前や。なんでそんなに無防備やねん。ちょっとは気をつけな...ホンマに頼むで」
左手で軽く頭を撫でた。
「平次...あたしな!」 「和葉!やっぱり今から東京に行こか!」 びっくりしたぁ!
いきなりなんなん? 「そんで...なんや...。今日は...ずっとそばにいてくれ」 嘘やろ? 「違う...今日から...の間違いやった」 平次が頭を掻きながらあたしをみた。 遠くの街の明かりがきれいすぎて涙がでそうや...。 そして車はそのまま東京を目指す。 いきなりいって蘭ちゃん達びっくりするやろな。 でもきっとわかってくれる。
「平次...幸せすぎるわ」 平次は笑って
「そうやろうなぁ。よかったなぁ」 なんていうてるし。 これからもケンカするやろうし、平次の事で泣く事もあるかもしれんけど...。
今日くれるキスの分だけ幸せにしてな...約束やで? |