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「大和屋」の麗葉さまから、我が家に頂きました!
これは、もしかしなくても”イケイケ悪女ちゃん”では。
とても私好みの和葉だ!和葉はこのくらいしても、十分許されます!
和葉に呼び出される服部だなんて・・・・しかもその呼び出しを待ちわびてるだなんて・・・・・ブラボ〜〜〜!!
麗葉さま、GoodJob!!
素敵なお話をありがとうございました!!
by phantom
今日もいつものように鳴り響く、無機質な電子音。
 気だるげにベッドに投げ出した体を少し右側に傾け、サイドボードの上で小刻みに震えその存在を主張し続ける携帯に手を伸ばす。
 ディスプレイに浮かぶのは、可愛くて、憎たらしくて、愛しいアイツの名。
 鳴り続ける携帯を暫く見つめ、小さく息を吐く。

「……なんやねん」
『あっ……平次?』
 機械越しに伝わる甘い声。
「……俺ん携帯に、他のやつが出たらそれこそ問題やろ」
『それもそうやね。なあ? もしかして、もう寝てるん?』
「んな訳あるかいっ 幾つや思てんねや」
『もー冗談やのに、怒らんといてぇな』
 くすくすと笑う声。その顔を見れない事が、酷く悔しいと感じた。
「で? なんやねん」
『ん? ああ、あんな今まで友達と飲んでたんやけど、終電逃してしもて……帰られへんのんよ。まだ起きてんのやったら、迎えに来てくれへん?』
 またか……嬉しいのに、ムカつく、こんな呼び出しを何度食らっただろう。

 手を伸ばせば、簡単に触れられる距離に居たのに、いつの間にか遠のいてしまった俺らの関係。
 いつまでも同じ関係では居られない。そんな事は、当の昔から知っていた。
 知っていても、行動に移さなければ、知らないのと一緒だ。
 分かっている。分かっていたのに……



 周りの奴らは、俺がアイツを振り回しているとか、アイツの気持ちを考えてやれとか勝手な意見ばかりを言ってくる。
 振り回してる? 誰が? 俺が??
 気持ちを考えてやれ? それは俺のセリフだろう?
 俺の気持ちを考えてくれてないのは、他ならぬアイツだ。
『迎えに来て』その言葉だけで、真夜中の街へと飛び出してしまう自分が、酷く悲しいと思う。
 いつもそうだ。
 アイツの何気ない一言に振り回され、走らされ、翻弄されている俺。
 可愛くて、憎たらしくて、愛しいアイツの我侭。
 その我侭を全て受け止められるのは、自分だけだと信じているし、酷く誇らしく思う。



 目的の店の前にバイクを乗り捨て、荒い呼吸のまま店内へと入っていく。
 薄暗い店内、流れる音楽。
 角の席でこちら向きに座って、携帯を眺めているアイツ。
 視線を上げ、俺に気づくと華やかな笑みを浮かべる。
「平次っ 迎えに来てくれたん?」
「……あほっ呼び出したんは、おまえやろっ! 白々しい事ぬかすなや」
「やって、ほんまに来てくれるなん思て無かったし……」
 俺が来る事など、分り切っているはずなのに、そんな事を言うこいつが酷く憎らしくて、歯痒い。
 お前に頼まれれば、嫌とは言えない俺を知っているくせに
 知った上で、俺を翻弄してくる可愛くて、憎たらしくて、愛しいおまえ。


「他の奴らは? 帰ったんか?」
「うん。男の子らがそれぞれ送ってってくれるゆうから、みんな帰ったで……あたしん事も送ってくれるて、ゆうてくれてんけど……遠慮しといたわ」
 右手で頬杖をつき、手元のグラスの淵を左の人差し指でなぞり、チラリと向けてくる視線。
 口元に細く刻まれる笑み。
 好戦的で、艶やかな表情。

 いつからこんな表情をするようになったのだろう?
 手を伸ばせば、簡単に触れられる距離に居た時は、見る事の無かった表情。
 遠のいてしまった今の関係になった途端。
 見せ付けられるその表情に、情けないほど振り回され、走らされ、翻弄される。


「友達て……男もおったんか……?」
「そやけど? それがどしたん?」
 わざとらしいまでの無邪気な笑み。
 その目には、挑発的な誘惑を含んでいて、酷く憎らしく思う。


「安心しーな、あたしはただの客寄せパンダや、もともと数には入ってないて」
 ケラケラと笑う。
 そんな事を思っているのは、おまえだけ……数に入っていないのは、むしろ一緒に居た女友達の方だろう。
 何度忠告しても、誘われる飲み会を断らないこいつが、酷く歯痒い。
 飲み会がある日は、携帯が気になって仕方が無い。
 何も出来ないまま、呼び出されるその時をじっと待っている。
 もし、呼び出しが掛からなかったらと思うと、酷く苦しくて、胸が軋む。
 情けなくて、心が痛い。


「おまえもうええ加減に、こんな飲み会には参加すんなや」
「なんで? ええやん別に……みんなでワイワイ飲むん楽しいし、色んな人に出会えるし」
「飲むなとは言わん。せやけど、男がおる飲み会には参加すんなっ!」
 言った後で、はっとした。
 こんな嫉妬丸出しのセリフ。
 全身の血が全て顔に集まって来たかのように、熱く火照っていく。
 不覚にも顔を赤く染めた俺を、キョトンとした表情で見上げてくるアイツ。
 丸くなった目を、すっと細め
 口元に淡い笑みを刻み。


「それは……平次次第やね……?」
 妖艶で、好戦的で、誘惑を含んだ表情。
 ぞくりと背筋が粟立つ。
 俺次第? それはどういう意味?
 行動に移せば、受け入れてくれるの?


 可愛くて、憎らしくて、愛しいアイツのからの呼び出しを
 今夜も祈る事しか出来ない。
 情けなくて、哀れで、虚しい俺。

 待ち望む呼び出し……こんな日々は、いつまで続く?



 END