「和葉、これはどうしたらええん?」 「あ、それはこうやって・・・こう 」 「あ、そうかそうか! それでこうしたらええんやね 」 「そうそう。 あ、ほな これはどないしたらええの、華月?」 「えーっと・・・それはなぁ・・・。 なぁ服部くん、これどうやって解いたらええの?」 「・・・き、木更津っ!・・・なんでオマエがオレん家におんねん―――??!!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ぽかぽか小春日和の日曜日。 いつものように和葉は、平次に勉強を教えてもらっていた。 高校2年生ともなると受験という響きも気になるところで。 理数系が苦手な和葉はそれを克服するため、受験など全く心配のない平次に いつもいつも頼ってばかりいたのだった。 ・・・まぁ、平次はこの臨時家庭教師を密かに楽しんでいたのだけれど・・・。 先日、華月の協力の甲斐あって無事幼馴染を卒業した二人。 さっそく平次は、ずっと頭の中でだけシュミレーションしていた あんなことやこんなことを 和葉に試みようとしたのだが・・・、 なにせ、今まで漫才のような痴話喧嘩ばかりしていたもの同士だから いざムードを作ろうと思っても上手くいかないのは仕方のない話で。 散々悩んだ結果、 ”これはジックリ攻めるしかない” という結論に至る。 その思惑を知って知らずか、いつものように のこのこ平次の部屋にやって来る和葉。 その愛しい彼女を、あれやこれやと少しずつ慣らしていこう。 ・・・そう決めた平次であった。 付き合いだしてもこの幼馴染は、平次のことを男と思っているのかどうか。 いつもと変わらず和葉は無防備極まりない格好でやって来て、お色気をふり撒いて帰っていく。 それが誘っていると分かれば、平次も即 手を出すのだが、 和葉に至っては、それを無意識にやっているのだから手の付けようがないのだ。 仕方なく数式を教える振りをして後ろに回りこみ軽く抱きしめてみたり、 英語を翻訳する時、わざと耳元で囁き 顔を近づけたりと 少しずつ少しずつ、その距離を縮めようと平次は努力を積み重ねていたのである。 そして、そんな二人の愛の巣に、なぜ華月が来たのかというと・・・。 『 なんや、最近二人の仲がしっくり行き過ぎて、 からかい甲斐がないからおもんない 』 ・・・・・・からだそうだ。 和葉のためと思い長年苦労をし、ようやく二人が恋人同士になるという念願が成就した華月だったが。 こうなったらなったで、何か物足りないような気がする。 (大好きな和葉が幸せそうで、満足なはずなのに・・・どうして?) そこで華月は、なぜ今自分が違和感を感じているのかを考えてみることにした。 すると、一つの答えが導き出されたのだ。 「・・・そうや、服部くんや・・・」 Q、なぜ平次なのか・・・? その理由は? A、和葉とラブラブになったせいで、平次がかなり調子に乗っているから。 和葉のことで焦ったり怒ったりする平次をからかうのが自分の生きがいだった華月。 よって、そんな鬼のようなことを考えてしまう・・・。 自分の欲望を満たすため (注:平次をいじめること) ラブラブカップルに一矢を投じようと思った。 ただそれだけの為に、華月はこうして二人のところにやって来たのであった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「なんでここにおるんって、服部くんの教え方が上手って和葉に聞いたからに決まってるやん 」 「そうや平次。 ケチ臭いこと言わんと、華月にも教えたったらいいのに 」 「・・・・・・・・・」 そんな華月の思惑を知らない和葉は、一緒になって平次に抗議をする天然振りで。 一方平次は、華月の考えていることが手に取るように分かるので、和葉に分からないように 華月を睨みつけた。 ( くっそー!コイツ絶対、わざと邪魔しに来たで。 あの何か企んでる顔が何よりの証拠や!) 和葉との時間を邪魔された平次の機嫌はだんだん悪くなる一方・・・。 だが、そんな平次を気にするでもなく、華月は楽しそうに和葉にこんな話を切り出したのだった。 「ところで・・・和葉は将来なんになるんか決めたん?」 「へっ?将来??」 「そうや。 服部くんは刑事になるっていう目標があるからええけど、和葉は何かあるん? 目標もなしに勉強したってアカンと思うんやけど、アタシは 」 「・・・せやなぁ、そう言われてみたら・・・アタシ将来何になりたいか考えてなかったわ 」 そんな二人の会話を興味ないような素振りでパソコンに向かっていた平次は、 (いったいコイツ、なにが言いたいんや・・・?) と、実は興味津々で聞き耳を立てていて、 ・・・そういえば、和葉って何になりたいんやろう?・・・などと、脳裏を過ぎらせていたのだ。 だが、そんな平次を横目に華月は尚も和葉に進路を考えろと迫る。 そして話は、だんだん平次にとって聞き捨てならない内容へと変わっていき、 それまで沈黙を守っていたいた平次は堪らず話に割って入っていった・・・・・のだが、 「アタシな〜和葉が何になりたいか、はよ決めてくれな困んねん。 やって、アタシは和葉と同じ仕事につきたいって、いっつも思とるんやもん 」 「お、同じて・・・オマエ、これからも和葉にベッタリ引っ付くつもりなんか?!」 「うるさい! 服部くんは黙ってて!!」 「・・・・・・はい」 軽くあしらわれる平次。 勢いづいた華月は、ようやく和葉に 今日ここに来た目的を話し出した。 「なぁ、和葉。 ちょう提案やねんけど・・・もしなんも考えてないんやったら、これから色々試してみいへん?」 「試す?」 「そうや。 まず、形から入ってみようや和葉。 アタシ今日はええもん持ってきてんねん。 それを今後の参考にしてみるっちゅうんはどうやろうか?」 「・・・・・・そういえば華月、何かおっきい風呂敷持ってきてるな? さっきから気になっててん、アタシ 」 「へへへ・・・これは後のお楽しみやvv な?ええやろ、和葉 」 「う、うん・・・なんや分からへんけど・・・華月がそこまで言うんなら やってみよかな・・・」 「よし決まりや! ほな服部くん、ちょっと和葉かりるね 」 そういうと、平次が何か言う暇もなく、華月は和葉を連れそそくさと部屋を出て行ってしまったのだ。 「・・・いったいなんやねん、木更津のヤツ・・・?」 訳が分からない・・・。 平次は甘い時間を邪魔する華月に毒づくように、チッと息を吐き出した。 ――数分後 「お待たせ〜〜〜vvv これから服部君には審査員を務めてもらいま〜す!」 「なんやねん、審査員って?」 手にはマイク代わりにペットボトルを持った華月が、満面の笑顔で平次の前に現れた。 ( いったい何が始まる言うねん?! ) いぶかしむ平次を他所に、ハイテンションの華月は なおも謎のショータイムの司会を続ける。 「同じ仕事をするなら可愛ええ方がええって服部くんも思うやろ?」 「・・・・・・そんなん」 「お・も・う・や・ろ??!!」 「オ、オモイマス・・・」 目力で威圧すると ニヤリと笑い、華月は平次にこのショーの説明を始めた。 「これから和葉は、色んな仕事の制服を着て現れま〜す。 その中で一番服部くん好みの 仕事が和葉の将来の就職候補になるから、真剣に審査したってな〜?」 「な、なんやて――?!」 ( ふふっ、思うたとおり 取り乱しとるわ、服部くん ) 想像通りの平次の好反応に、内心大喜びの華月。 大好きな和葉の可愛い姿と、平次の狼狽振りというご馳走を前に、 なおさらテンションは上がる一方だった。 「ほらっ、こっち来てみ 和葉!」 「で、でも・・・なんか恥ずかしいて、華月・・・」 モジモジと照れながら現れた和葉は、平次の想像を絶するほど キュートな婦人警官に 変身をしていて・・・。 「ブゥ――――――ッッ!!!!!」 (な、なんやねん?! 警官っちゅうより、エロビデオに出てくるミニスカポリスやんけっ!!!) 飲んでいたコーヒーを勢い良く吹き出すほど動揺する平次を見て、 華月は満足そうに、和葉を自分の側に引き寄せたのだ。 「ええやろコレ〜。 イベント会社に勤めてる知り合いから借りてきてんvv ほら、このスカートのスリットなんか超セクシーやろ〜!」 「ア、アホッ//// どこの世界にこんな短いスカートはいた府警さんがおるいうねん!!!」 「どないしたん平次、鼻血出てるで?」 はい。 と、和葉にティッシュを手渡され赤面する平次。 「固いこと言わんでもええやん〜、雰囲気や雰囲気 」 と能天気に笑う華月に、 平次は真剣に殺意が芽生えそうになった。 (こんクソおんな〜〜〜〜!!! オレの反応見て喜んどるな?!) ・・・と言いつつ、目はシッカリと和葉の足を舐めるように見ていたのだが・・・。 そんな平次がおかしくて仕方のない華月は、更に追い討ちをかけるように 次々と和葉にセクシーな制服コスをさせて、いつもはポーカーフェイスを気取る 平次の理性をボロボロに打ち砕いていく。 ナースにCAに女教師風の知的なスーツ。 芸者にメイドに、何故かレースクイーンやチャイナ服まで。 もはや平次は下半身がいうことを効かない状態になり椅子から立つことも出来ず、 その身体は生気を吸い取られた、廃人と化していたのであった。 「なぁ服部くん、どれが一番良かったと思う?」 そう華月が問いかけても、平次は今頭の中が大変な状態で返事することが出来ない。 それどころか刺激が強すぎて、制御不能な自身を抑えることが精一杯。 ・・・二人を正視することなど不可能だったからだ。 多分、今 和葉と二人きりなら襲ってしまうに違いないだろう。 「どないしたん服部くん? なんや大変そうやなぁ・・・」 ニヤリと笑い、勝ち誇った顔の華月は嬉しそうに平次の顔を覗き込んだ。 「うっさい! オマエもうどっか出て行け!!」 そう涙目で訴える平次を満足そうに見つめ、取りあえず 「平次をからかって遊ぶ」という目的を 果たした華月は、ようやくバニーガールに変身した和葉を連れ部屋を出て行くことにした。 「これから和葉ん家で撮影会せえへん? アタシもなんか着てみたいし 」 「ええなぁ。 二人で記念に残しとこか?」 哀れ平次を残し、二人は意気揚々と服部家を後にしたのであった。 その後、結局 平次は和葉に 「オマエは何処にも就職せんでええ! 学校卒業したら、オレんとこに永久就職や!!」 ・・・と命令をし、溜まりに溜まった欲望を半ば強引にぶつけた為、 結果、平次が縮めたかった和葉との距離をようやく縮めることが出来た。 一方、和葉はというと、平次から ほとんどプロポーズと言っていいようなセリフを言われたもんだから嬉しさに逆上せ上がってしまい、隙だらけのまま平次に押し倒されてしまうはめに。 まぁ、結果的に二人の仲が進展したので、めでたしめでたし・・・か? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ その頃、華月はというと・・・? 和葉のお宝写真も手に入り、尚且つ平次をもてあそぶことも出来て 上機嫌なはず・・・だったのだが、実は以前より更に辛い状況に陥っていたのである。 あれから平次と絆を深めた和葉は、華月に 「アタシは平次のトコに永久就職することにしてん」 と嬉しそうに報告をしてきた。 最初は一緒に喜んであげた華月だったが、よくよく考えてみると、 「どうしよう・・・これやったらアタシ、和葉と同じとこに勤められへんやん・・・ 」 和葉が結婚したら一緒に働かれへんやん?!・・・という事実に気付き、焦る華月。 一緒の会社に入って、 一緒に休日を過ごし、 一緒に、人生を楽しむ。 そんな人生設計が、このままでは崩れてしまうのだから。 (アカン! そんなこと絶対させへん!!) なんとしても和葉の側にいたい!! そう思う華月は考えに考えて、ある方法を思い付く。 ( これなら、ずーっと和葉と一緒におれるやん ) 華月は平次と和葉に向かって、とびっきりの笑顔でこう言ったのだ。 「 なぁ服部くん、もし和葉がアンタとこにお嫁に行ったら、 アタシはアンタの家の家政婦になるわ♪ 」 その言葉を聞いて平次がズッコケたのは・・・言うまでもない。 ちゃんちゃん。 |