「 色喰夜会 」 第 一 話 | |
「あ…ああっ……ふっ…あ…へ…じぃ……」 明るい風呂場に、和葉の甘い声が響く。 震える足を、つい今しがたまでベッドでオレが注ぎ込んどったモノが伝い落ちた。 「しゃんとしとらんと、綺麗にならんで?」 「あ…せやけどっ…んっ……へいじぃ」 目ぇ見えへんでも不自由せえへんようにて取り付けた手すりに縋りつきながら、和葉は下の口にオレの指を呑み込んだまま悩ましげに腰をくねらせる。 その度に、背中から抱え込むようにしとるせいで密着しとるオレのモノを、和葉の滑らかな尻が擦り上げる。 その柔らかな快感に、収まりきれとらんかった熱がまた溜まっていく。 「へいじぃ…おねが…あっ…お願い、ちょうだいっ……へいじをちょうだいっ!」 和葉がカラダを捻るようにして、その見えへん眼をオレに向けた。 金を積んで作らせた義眼は、人工物とは思えへんくらいに熱く潤んで、しっかりとオレを捕える。 「さっき、散々シテやったやろ?まだ足りひんのか?」 「やってっ…んっ……全部、くれる…てっ…ああんっ!」 「ああ、全部やるで?オマエが望むんやったら、命やってくれたる」 オマエが望むんやったら、何でも手に入れたる。 それが何やろうと、どんな手を使ってでも、屍の山を築いてでも手に入れて、オマエにくれたる。 昔のどこぞの狂王みたいに、頭蓋骨で杯作りたいて言うなら、この首をくれたってもええ。 「せやけど、オマエも全部寄越せや?」 「あっアタシはっ…あんっ…平次しか欲しないっ……へいじぃ…」 不自由な姿勢で苦しげにオレを求める和葉の赤い唇から、ちらちらと小さな舌が覗く。 誘うように見え隠れするその舌に噛み付き、硬く立ち上がった乳首を抓る。 合わせた唇の隙間から、和葉のくぐもった嬌声が零れ落ちた。 「コレが欲しいんやろ?存分に味わえや」 和葉の中で遊んどった指を引き抜いて、代わりにオレのモノを呑み込ませる。 「あっはっ…あっ……もっと…もっと奥まで…っあ……あああっ!」 請われるままに、腰を支えて和葉の足が浮くくらいに突き上げた。 和葉は、こんなセリフを吐けるオンナやなかった。 セックスの味を知って、カラダが快楽を覚えてからでも、恥かしさからか声すら抑えようとするオンナやったから、自分から誘って来る事すら数える程やった。 そんな和葉が変わったんは……いや、そんな風に和葉を変えたんは、あの鏡が引き出したオレの狂気。 痛みすらも快楽に変えて、ただひたすら溺れるようなオンナにしたんは、間違いなくオレや。 そして、それを後悔もせんと、返って満足感すら覚えとるんも、このオレやった。 「…っふ…く……」 「ひゃあっ…ああっ!」 濡れた髪が張り付く背中に思わず歯を立てたなるが、傷なん付けて誰かに見られでもしたら折角作ったこの篭から和葉を取り上げられるかもしれへんから、代わりに強く吸い付いた。 キスマークの1つくらいなら、オンナが持ってても不自然やない。 何しろ、オレらは『新婚の夫婦』なんやから。 「……っく」 カラダ中を駆け巡る熱が、出口を求めてオレを突き動かす。 滾る熱を思う存分中に放つと、和葉は一際高い嬌声を上げてぐったりとオレに凭れた。 「和葉……」 「……んっ……なに?」 絶頂の余韻に震える和葉の中からオレのモノを引き抜くと、和葉の蜜と混じった白濁液がぱたぱたと床に零れる。 湯に流され消えていくソレにまた劣情を掻き立てられそうになって、さり気に目を逸らした。 このままベッドに戻って精も根も尽き果てるまでヤリたいて気持ちもあるが、普通の大学生を装う手前やらなならん事もある。 「明日から、オレの大学で学祭やて言うたやろ?」 「うん……」 「オマエも連れて行くから」 「え?せやけど……」 「ちょお煩い外野がおってな、オマエがオレの女房やて宣言したろ思て」 結婚してから和葉をこの新居という名の『篭』に閉じ込めて滅多に外出させへんからか、オレの結婚指輪はただのフェイクでとっくに別れたんやと思い込んで纏わりついてくるオンナが増えた。 そいつらを一掃するのに、学祭は丁度ええ機会やった。 「オレにはオマエがおるんやて、たっぷり見せつけたる」 「うん」 和葉のお気に入りのボディーソープで汗と情事の跡を綺麗に流して、長い髪を手入れしてやる。 気持ち良さそうにカラダを預けてくる和葉をバスローブで包み込んで脱衣所に送り出すと、オレもシャワーを浴びた。 |