「 色喰夜会 」 第 十八 話 | |
「へぇじぃ…」 また…怒らせてしもた… 両手は僅かに離れるだけで、背中に手を伸ばすことすら出来へん。 少し体を動かしただけで、繋がれた鎖の音がする。 「へぇじぃ…」 何も身に着けてないアタシには、畳の冷たさがそのまま感じられた。 平次がアタシが体に傷を付けるコトを酷く嫌がることを知ってて、アタシは自分に傷を付けた。 平次にアタシを見て欲しかったから。 アタシのことだけを考えて欲しかったから。 アンナオンナノコトヤナクテ… 鎖を引き寄せると、金属の冷たさが気持ちいい。 篭に入れられたばかりの頃、アタシは体にぎょうさん傷を作った。 それまで服部家でおばちゃんにそれこそ箸させ持たせてもらへん位お世話して貰うてたから、ここに連れて来られて平次と2人だけの生活に少しでも早く慣れたくて無理して篭の中を動き回った結果がそれやった。 「和葉ちゃんはやっぱり家へ連れて帰ります」 少し経って様子を見に来てくれたおばちゃんが傷だらけのアタシを抱き締めながら、平次にそう言うた。 今にもアタシを連れて篭を出て行こうするおばちゃんを、平次は必死で止めてくれた。 アタシも平次と離れるなんて耐えられなくて、平次の言葉を聞こうともしないおばちゃんに縋ってもうむちゃはしないからココに居させて欲しいと懇願した。 それ以来平次はアタシが傷を作ることを、酷く嫌うようになった。 体に鎖を巻き付けるように転がると、畳に乳首が摺れて気持ちいい。 セックスの途中で余りの気持ち良さに、自分の喉を掻き毟ったコトもあった。 でもすぐ平次に両手を捕まえられて、 「そんなに傷が欲しいんやったら、俺に付けたらええ。お前が満足するまで、掻き毟ろうが噛付こうが好きにしたらええ」 とアタシの両手の爪を自分の喉に押さえ付けた。 衝動が止められなかったアタシは、そのまま平次の喉や胸をむちゃくちゃに引っ掻いて肩に噛付いた。 平次の痛みを耐える声が何度も聞こえたけど、止められなかった。 そして気付いた時には噎せ返るような血の匂いと、アタシの手や口や体中に纏わり付く生温かい液体。 アタシは平次を傷付けてしまった。 平次は痛みが欲しい訳やないのに。 言葉にならない叫び声を上げて荒れ狂うアタシを、平次は押さえ付け更なる快楽を与えてくれる。 やから約束を守ろうと思った。 平次が望むように自分に傷を付けないように。 そう…思ってイタノニ… 巻き付けた鎖の間から、柔らかく立ち上がった乳首を摘む。 「あ…ぁぁ…」 平次はあのオンナをヤサシクヤサシクダイテタ… 鎖を解いて、平次があのオンナにしていたように自分の首から胸をそっと撫でる。 「へぇじ…」 何度もソレを繰り返してから再び乳首に触れると、さっきよりも硬く突き出してた。 「はぁぁ…」 平次がしていたように、そっと摘んでは指で転がす。 「ぁ…」 気持ちいい。 けど、足りない。 「へぇじぃ…」 名前を呼んで強く平次を求めたから、暗闇の中にまた水面が浮かび上がった。 水面の中の平次は、今は警察の人らと居るみたいやった。 真剣な表情で話しをしている。 あの眼をアタシに向けてホシイ… アタシの手は繋がれてるから右手に左手も引っ張られて、剥き出しの秘所に下りて行った。 「アタシを見て平次…ぁん…」 平次の姿を視ながら自分で自分を高めていく。 あっ、平次は誰かに呼ばれたみたいや。 振り向いて誰か来るのを待ってる。 あれは、昨日の京都府警の刑事さん。 「ぁぁぁ…ん…」 左手で蕾を撫で右手の中指を中に入れる。 平次は聞かされたコトに驚いてる。 しかもみんな慌てて車に乗り込んだ。 平次どこいくん? 車に乗った平次は、腕組みして目ぇ閉じて何か考えてる。 なぁ、何考えてんの? 中で遊ばせていた指を引き抜いて、今度は2本刺し込んだ。 「ぁ…ぁ…あ…」 アタシが体の向きを変える度に鎖は小さい音を立てて、冷たい感触で巻き付いてくる。 「あんあんあん…」 指先の動きに合わせて勝手に声が出て、体はピクピクと揺れる。 水面の映像は変わらずに平次が車の中で考え込んでる姿を映しだしているから、アタシは自分の指先だけに意識を持っていった。 どのくらいそうして遊んでたんやろう、ふと意識を水面に戻した時には、平次は知らないアパートの階段を登ってるみたいやった。 アタシの知らない誰かの部屋に、警察の人たちと開いたままのドアを入っていく。 そしてその先で数人の警察官に見下ろされて、あのオンナが居った。 「あ…ああ…」 オンナは無様な格好で仰向けのまま寝ている。 「は……ははは……」 流れ出た血は黒く濁り、その汚らわしい血の中で顔を上に向けている。 ナニガミエルン… 「うふふふふ…ははは…」 眼を抉り取られたオンナの顔は、なんてブサイクなんやろう。 ヘイジハアタシノモンヤデ… 「あのオトコにご褒美あげな…」 楽しくていつの間にか外に出ていた手を握り合わせ、アタシは笑い転げた。 微かにインターフォンの鳴る音が聞こえたような気がしたげど、今のアタシにはどうすることも出来ないから何も聞こえなかったことにした。 「……さむい……へぇじぃ…さむい…」 眠ってしまっていたアタシは、肌寒さに身震いし眼が覚めた。 畳みの冷たさはアタシの体温を奪うばかりで、ソファみたいに温めてはくれへん。 しかもいくら病院で点滴されたから言うて、体の気だるさはまだ残っている。 何か羽織るモノでもと思うて辺りを手探りで探したけど、指に触れるのは畳みの冷さだけ。 他の場所も探そうと体を起こしたら、足に巻き付いていた鎖が秘所を擦り上げた。 「あぁぁああ…」 予期せぬ刺激に体が勝手に反応してしまう。 鎖の冷たさが気持ち良くて、引っ張っては秘所を擦り付けてしまう。 「あ…んんん……あんあん…」 寒さを忘れて体を上下に動していたら、胸も大きく揺れて軽い刺激を感じ始めた。 「ぁ…ぁ…ぁ…ぁぁ」 そればかりをやっているともっと感じたくなって、再び指を中に差し入れた。 両手の指を2本ずつ入れて、掻き回す。 「あああああぁぁぁ…」 軽く達してしまったアタシは、そのまま後ろに倒れ込んだ。 「もう終わりか?」 「え?」 突然近くから聞こえた声に、アタシは驚いて快感すら忘れてしまいそうやった。 「えらい楽しいそうやな和葉」 「平次?」 いつ帰って来たん? 「平次!平次!」 声がする方へ必死で手を伸ばすけど、平次はいつもみたいにすぐには側には来てくれへん。 「へぇじぃ…」 「続けろや」 「へぇじ寒い…」 「俺は続けろ言うてんのや」 「いやや。へぇじ抱っこして」 「あかん。命令や。俺がええ言うまでやれ」 「へぇじ。へぇじ。へぇじぃ」 どんなに手を伸ばしても、平次の温もりまで届かない。 「言うこと聞けへんのやったら、今日はずっとこのままやで」 アタシは平次には逆らえない。 平次の視線を感じながらアタシは言われるがままに、再び自分で自分を高め始めた。 |