「ははは・・・・・・。」
あたしは携帯切って、思わず乾いた笑い声を上げてしもた。
「アホやん・・・・あたし・・・・。」
理由は簡単や。
平次にすっかり忘れられただけなんやから。
大学生になって、いくら同じ東京の大学やいうてもなかなか会えへんあたしら。
あたしは大学の寮に住んどって、平次はアパート借りて1人暮らし。
そやけど恋人や無いただの幼馴染のあたしらは、お互いの生活が忙しうて高校生の頃程会うてへん。

今日は偶然にも夕方に本屋で会うて、
「久しぶりやから飯でも喰い行くか?」
言うて平次が誘うから、一緒にお好み焼き食べに行った。

そして、お約束の事件。

「ちょい様子見て来るから、お前はこの辺で待っとれ。」
で、行ってしもた。

あたしは平次に逢えたんが嬉しうて、言われた通りに近くの喫茶店で平次が戻って来るんを待った。
平次は絶対に戻って来てくれるて思うて。
やって。ほんまに、久しぶりやったんやから。

そやけど。

あのアホは、一向に戻って来ぇへん。

1時間。
2時間。

「あっ。門限過ぎてしもた・・・。」

3時間。
4時間。
午前さま。

そんで痺れ切らして平次の携帯鳴らしたら、
『あっ!!!そやった!!!』
て返事が返って来た。

どうやら、あたしのことなんかすっかり忘れて自分の部屋に帰ってたらしい。

『すまん。すまん。そやけど、お前もいつまで待ってんねん。』
「・・・・・・・・・・。」
『ええ加減には、気ぃ付いて帰れやボケ。』
「・・・・・・・・・・。」
『ほんで、まぁ・・』

ブチッ。

『ほんで、ま〜だアホみたいにそこに居んのかぁ?』

みなまで聞かんでも分かるわアホ。

「ははは・・・・・・。」
携帯は電源まで落としてから、カバンに仕舞もうた。
「アホは・・・・あたしやん・・・・。」
何を嬉し気に、1人でウキウキしてたんやろか。
ほんま、アホやんあたし。
そやけど、これで、よ〜〜分かったわ。

平次にとってあたしは、その程度の人間やってことや。

「はいはい。ほんまに、あたしがアホでした。」
声に出してみたら、余計アホみたいやったけど。

なんや、すっきりしたわ。

あのアホは、存在の耐えられへんお気楽さや。

うん?何かそんな映画があったような?
あれは浮気男の話やったっけ?
まぁ、何でもええけど。

平次の中のあたしは、きれいさっぱり忘れてしまえる様な軽い存在で。
あたしの中の平次は、もう耐え切れへんくらいのお気楽野郎やわ。


アホらし。

他ん男探そ。

 
あたしは終電もない今、どこで朝まで時間を潰そうかと周りを見渡したんや。
すると。
以外とぎょうさんの男の人が、あたしのこと見てるんに気ぃ付いた。

そうや!ええこと思い付いた!

今まで平次しか見てへんかったから、恥ずかしいんやけどあたしまだ真っ新ピンやねん。
やからこの際、ここらで潔うそれ捨ててしまお。

そうしよ!
そしたら朝まで時間も潰せるし、一石二鳥や。

あたしは物色する為に、再度回りの男たちを見ながらゆっくりと歩き始めることにした。

あれはパス。
あっちもイマイチ。
その横は問題外。

ゆっくり、ゆっくり歩く。
1人、2人と男たちがあたしの周りに集まり始めた。

この人カッコええかも。
こっちの人も優しそうやな。
あっ、今笑った人ステキやん。

どれにしよ?

そう思うたら、いきなり右腕を後ろに引っ張られた。
「きゃっ・・。」
「何やってんのやお前は!!!」
「・・・・・・・。」

今ごろ来た人に言われた無いんやけど。

「ボケッっとすんな!帰るで!」

勝手に現れて、勝手にあたしが集めた男たち蹴散らして、勝手に帰ろうとしとるこの男。
よく見れば汗だく。
息も切れてるようや。

今夜のあたしの相手として、選んで上げてもええかも。


そう。


平次も今のあたしには、その他大勢の1人でしかないんやから。






noveltop contens
読んでくれてありがとうございます。
「イケイケ悪女ちゃんシリーズ 3 」でした。
この「かるーい存在」は、、2008年3月に書いたお話です。
clapping(拍手)に一度UPして、すっかりサイト自体にUPするのを忘れてました。
このシリーズは私のお気に入りですが、皆様にはいかがでしょうか?
by phantom

−イケイケ悪女ちゃんシリーズ1− 「リボンをほどいて」
−イケイケ悪女ちゃんシリーズ2− 「鈍感なボウヤ」
−イケイケ悪女ちゃんシリーズ4− 「triangle」