■ 第 1 話 ■ by phantom |
改方学園高等部2年C組の教室で、和葉はポツンと1人窓の外を眺めていた。 「う〜〜ん。ぎょうさんいてんのに・・・。」 視線の先には、部活をしている生徒たち。 「1人くらいやったら掴めるんちゃうん?」 和葉の場所からだと、彼らは全員お人形さんくらいのサイズ。 だから窓から腕を伸ばして手で捕まえるポーズをしてみることにした。 「ああ〜〜。やっぱあかんわ〜〜〜。って・・・・・・何やってんやろ・・・・・あたし・・・・・・。」 もしかして欲求不満なん〜〜?とか思いながら、 「が〜〜〜ん。虚し過ぎや・・・。」 と頭を抱えて今度はショックのポーズ。 そんな和葉が独りモンモンと色んな考えを巡らせていると、 「きゃっ!」 ポニーテールを行き成り後ろに引っ張られてしまった。 「な〜〜にを1人で唸ってんねん。腹でも痛いんかぁ?」 「唸ってへんし!腹も痛無い!」 自分の頭に手をやってリボンが崩れてないか確認するのに、後方確認はしない。 「ウ〜〜!とかブ〜〜!とか言うてたで?」 「ブ〜〜!は言うてへん!」 「やったらウ〜〜!は言うてたんやな。」 そこでやっと、ギロリといちゃもんを付けてくる男を睨み返した。 「何か用なん平次?」 「何やってんねん?」 和葉の質問に対してケロリと質問で返す。 「別に何もしてへん。」 そう、確かに和葉は何もしていなかった。 ただ教室の窓から校庭を見下ろしていただけ。 放課後の誰もいない教室で、平次が入って来たことにも気付かないくらいに、窓の外に向って唸っていただけなのだ。 「誰か見てたんか?」 「平次こそどしたん?」 今度は平次の質問に対して、和葉が疑問を返した。 「どうもせん。」 「・・・・・・・。」 まったく話が進まない。 流石にこれでは埒が明かないと思った和葉は、 「振られてん。」 とポツリと一言漏らした。 「はぁ〜〜?」 平次にしてみれば余りに予想外な言葉だった為に、マヌケな声が出てしまった。 「おっ・・・おま・・・・。」 いきなり狼狽え出した平次に、 「今日な、真沙子らと買い物行く予定やったんやけど、みんな彼氏からお誘い掛かってそっちに行ってしもてん。」 はぁ・・・、と和葉は気にせず続ける。 「そっそうか・・・。」 誤解が速攻で解けたのに、平次の声は上ずったままだ。 「そうやねん。そんでな。あたし考えてん。」 和葉は腕組みをして外を見ながら話している為に、平次の動揺にはまったく気付いていない。 「こっから見えるとこにもええ男ってぎょうさんいてるやんかぁ。改方って大阪でもイケメンが多いんで有名やし。やったら、あたしでも数打ったら当たるんやないんかなぁなんて。どう思う平次?」 どうもこうも、平次の頭は真っ白になってしまい、それどころでは無い。 平次は密かに、和葉は自分のことを好いてくれているのではと思っていたのだ。 和葉は和葉で、まったく何も言ってくれない平次に、押しても駄目なら引いてみろ的気分になっていた。 「やってなぁ、これだけ男がいてるのにだぁれもあたしに何も言うてくれへんのやで。」 それは平次が和葉に近付こうとする野郎を排除しているからであって、決して和葉のせいでは無いのである。 寧ろほっとけば、和葉に群がる野郎は蟻のごとくいるはずなのだ。 「蘭ちゃんには工藤くんやろ。園子ちゃんには京極さん。真沙子らにも彼氏いてるし。」 ・・・・・・・・・・お前にはオレが居るやんけ!! と平次が心で思っても和葉に伝わることは無く、和葉の愚痴はまだまだ続く。 「高2にもなって彼氏がいっぺんもいてへんて、あたしくらいやないんかなぁ?」 「オレもや。」 「はぁ?当然やん。男に彼氏がおったらキモイわ。」 「・・・・・・・。」 「何があかんのやろ?もっとしおらしくした方がええんかな?」 と両手を合わせて頬に当て、小首を傾げてみる。 「似合わへん。」 平次は素の一言。 それでもめげずに、 「髪とかも下ろした方が可愛く見えるやろか?」 とリボンを解いてみた。 「見えへん。」 引き攣りかけた顔をなんとか維持して、 「・・・・・・・。もっと笑顔振りまこうかな。」 とニッコリ笑顔。 「恐いで。」 ピキッ。 とうとう和葉の顔には青筋が。 「・・・・・・・。・・・・・・・。平次。あんた、あたしに恨みでもあるん?」 「あったらどうやねん。」 いかにも自分以外の男が欲しそうな和葉に、元来短気な平次は限界も早い。 「へ〜〜。あるんや。ええ機会やし、聞いたるわ。」 「おお。耳穴かっぽじってよう聞いとけや。」 和葉も平次の態度が気に入らない。 せっかく何か言うチャンスを挙げているのに、これは無いだろうと。 「お前はニブ過ぎるんじゃボケッ!!」 「あんたにだけは言われとうないわ!超鈍感ドアホッ!!」 「少しはオレの苦労も分からんかい!!」 「あんたが何苦労してん?!それを言うならあたしのめっちゃ健気な努力どうしてくれんの!!」 もうここまでくればお互い告ってるのと変わらないのに、合いも変わらず気付かない。 「健気〜〜?笑わしよるの〜。お前が誰に健気やねん?!!」 「そんなん決まってるやんか!へい・・。」 和葉は慌てて自分の口を両手で塞いだ。 「へ?」 平次は一瞬怪訝そうな顔をしたが、もう一度、ほんの少しだけ期待を込めて聞き返した。 |
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和葉は平次に「誰にやて?」と再度質問されます。 さて和葉の答えは? 「 平蔵 」 それとも 「 平次 」 |
「 かぼちゃのワルツ 」 |
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< TRICK OR TREAT ? > |