新蘭の平和観察日記 −7月31日金曜日P− | |||||
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「蘭ちゃん、その腕の傷けっこうヒドない?」 「そう言う和葉ちゃんだって、その肩凄く痛々しいよ」 私たちは5人位は余裕で入れそうな大きなお風呂に浸かってるんだけど、和葉ちゃんは肩まで浸かれないし、私の左腕は浴槽から出ている状態。 和葉ちゃんの右肩には4本、私の左腕には3本の赤い痕。 その他にも小さな引っ掻き傷だったら、かなりあるかも。 だって、お風呂に浸かってると結構あっちこっちが沁みるから。 あの後、階段を下りながら私の傷を確かめていた新一が、 「やっぱり風呂は止めておけ」 って言出したくらいなんだから。 それでもどうしても入ると言い張った私たちに、 「シャンプーも石鹸も使わんのやったら許したる」 と何とか服部くんのお許しを得たのだけど、 「それやったら意味無いやん」 て和葉ちゃんが言っちゃったもんだから、お風呂場からすべてのシャンプーや石鹸が撤去されてしまった。 もちろん、私たちが持っていた旅行用のモノも全部。 「ああ〜、髪洗いたぁ〜い!」 「今日いっぱい汗掻いたもんね」 せめて髪だけは洗いたかったっていうのは、私たち共通の女心。 大好きな人の前ではいつも綺麗でいたい、恋する女の子には当たり前のことなんだけど新一たちにはまったく分かって貰えない。 「髪は女の命!そんなに情けない声出さなくてもいいわよ」 「「翔子さん?!」」 何故だか翔子さんが体にタオルを巻いて、入って来たの。 「私もご一緒していいかしら?その代わり、あなたたちの髪は私が洗ってあげるわ」 ってその手に有名メーカーのシャンプー、リンス、トリートメントのスペシャル3点セット。 「これ、私のお気に入りなんだけど、今日は特別よ」 「翔子さんが女神様に見えるわぁ〜」 健司さんに続き、翔子さんまで神様に昇進させてしまった私たち。 それから翔子さんは私、そして和葉ちゃんと順番に傷に注意しながらとても丁寧に髪を洗ってくれた。 「それにしも凄いわね、最近の肉食系女子は」 流石にちょっと呆れたわ、と言いながらも翔子さんの口元は笑ってる。 「今回はちょっと油断しちゃったかな。まさか掴み掛かって来るなんて思わなかったんだもの」 「まぁ、あなたたちにしたらいい迷惑でしょうけど、肉食系なんだから仕方無いわね」 「それって男に対してだけちゃうの〜?」 「弱肉強食の世界は厳しいのよ」 「そんなぁ〜〜」 和葉ちゃんが悲壮感漂う声で、天上を仰いだ。 「でも代わりの女の子たちが登場したのには、流石に驚いたけどね」 「私なんて凄過ぎて声も出なかった」 「平次も工藤くんも相当びっくりしたんやろなぁ、固まってたやん」 「普通に考えたら有り得ないわね。ほんと頭のいい女って何考えてるか分からないから恐いわ」 「もしかして、まだ他にも居たりして」 「居るんちゃう?やって総勢108とか煩悩みたいな数字言うてたやん」 「ああ〜やだ。くわばら、くわばら」 私たちは3人で湯船に浸かりながら、少し引き攣った顔で笑い合った。 あんな女の子たちがまだ何所かに居るんだなんて、想像しただけでちょっとしたホラーだもの。 それからもう少しだけ3人で楽しく話してから、私たちはやっとお風呂から出ることにした。 すると待ち草臥れたのか、新一と服部くんの機嫌は最悪だった。 「まったく、何時間入ったら気が済むんだ」 「傷口悪化したら、どないすんねん」 そんなに言わなくてもいいじゃない、って時計見たら私と和葉ちゃんがお風呂に入った時より確実に1時間半は経っていた。 これは流石に長かったかも。 って思ってたら、 「女を待つのも男の甲斐性よ。さっ、傷の手当てして上げて、それが終わったら彼女たちの髪も乾かして上げてね」 と翔子さんが脱衣所にあったドライヤーを新一と服部くんにそれぞれ手渡していた。 「髪洗ったのか?」 「もう、そんなことで怒らないの。私が洗って上げたのよ。ちゃんと傷には当たらないように気を付けたから。心配なのも分かるけど、少しは女心ってのも理解して上げなさい」 翔子さんて思った通り、ほんと姉御肌って感じ。 だって何か言い掛けた新一と服部くんを、ぴしゃりと黙らせちゃったのよ。 これってとても凄いことなんだから。 でも翔子さんはそのまま、 「今日は私も疲れたからもう寝るわね。部屋に戻る時は、ここの電気だけ消してってくれたらいいから。じゃ〜ね〜、おやすみ〜〜」 ってさっさと自室に帰っていっちゃった。 「あの人もパワフルだな」 「ああ、逆らわん方が身の為や」 やっぱり凄いよ翔子さん。 「あれ?健司さんは?」 「オーナーやったら、もう好きにしてくれ、言うてとっとと寝てもうたで」 「そうなんや…」 健司さんも相当お疲れなんだろうな。 「いつまでも突っ立ってないで、こっちに来いよ蘭。まずは傷の手当てからだろう」 「うん」 私は新一の横に、和葉ちゃんは服部くんの横に座ってお互いに傷の手当てをして貰った。 手当てが終わったらそのままここで髪を乾かせてくれるもんだと思ってたんだけど、何故だか新一も服部くんも救急箱を片付けるとドライヤーを片手に私と和葉ちゃんの手をもう一方の手に歩きだしてしまったの。 「え?ここで乾かさないの?」 「部屋の方がいいだろ」 それって私たちの部屋に4人で帰るってことよね。 って思ったんだけど、これも大間違いだった。 「ちょ…平次。あたしの部屋ここなんやけど?」 そうなの、服部くんは和葉ちゃんを服部くんたちの部屋に連れて行こうとしてる。 「そこは工藤と姉ちゃんや。ほんで、俺らはこっちや」 「えっえっ??」 その後は私も和葉ちゃんも、問答無用でそれぞれの部屋に引きずり込まれてしまった。 だから次ぎに和葉ちゃんに会えたのは、「おはよう」って言った時だったの。 |
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まったく色気も素っ気も無い入浴シーン!だからオマケのセクシーQP(笑)→ by phantom 「 …ぷっ…ご…ごめ〜ん。なんか服部くんが薔薇を咥えてフラメンコ踊ってる姿が……ぷっ…あはは…くくく…苦しい… 」
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