新蘭の平和観察日記 −8月1日土曜日25−


やっと涼しいお部屋の中に入って、翔子さんの出してくれた冷えた麦茶で一息ついたまでは良かったんだけど。
新一と服部くんはあっと言う間に飲み干しちゃって、しかもまだ半分も飲んでいない私と和葉ちゃんを引っ張って部屋に戻ろうとするの。
「ちょっと待ってよ、新一。もう少しゆっくり飲ませて」
「平次もや。何でそんなに急がなあかんの?」
しかも私と和葉ちゃんがそう言ったら、2人とも私たちのコップを持ってまた行こうとするのよ。

「工藤くん!服部くん!まだ今日の予定が全て消化されていないことは、もちろん知っていますよね」

私と和葉ちゃんが半分持ち上げられるように椅子から立ち上がろうとしたことろで、逆巻さんがそんな2人を呼び止めたの。

「お〜知ってるで。そやけど、俺はここでリタイアさせてもらうわ」
「どうしてですの?」
「俺らは元々ここに着いたら好きにしてええ、言われたから来たんやで。それやのに自由になる時間はないわ、大切な女に怪我させられるわでまったくええこと無しや。なぁ、工藤?」
「ああ、服部の言う通りだ。最初に言われた条件と違い過ぎる。ってぇ〜ことで、俺たちはこれで帰らせてもらうぜ。いいですよね、大野さん?」

服部くんから新一に、そして新一から話を振られた大野さんが、ごほごほって飲んでいた麦茶に咽たのが聞こえた。
大野さんは何て答えるのかな?
って期待の篭った眼差しを向けると、隣で和葉ちゃんも服部くんに掴まれていない左手を握り締めて大野さんのことを応援してる。

だって、私たちはまだ帰りたくないんだから!

昨日は探偵倶楽部の女の子たちが凄くて、やっぱり来るんじゃなかったかな、とも思ったけど。
今日はそんなこと気にならないくらいに、楽しかったんだもの。
むしろ彼女たちが居てくれたお蔭でいつも新一が女の子たちにどんな風にしてるのか見ることが出来たし、大野さんや二宮さんに松岡さん松本さんていう、とても楽しい人たちともお友達になれたし。
それに健司さんと翔子さんもとっても素敵で、もっともっとおしゃべりしたい。
でも、やっぱり一番は武志さんがしてくれたもう一つのステキな提案。
さっきこっそり伝えたら、和葉ちゃんも目を耀かせて喜んでた。

だから、私たちはどうしても今はここから帰りたくないの!

がんばって大野さん!

私たちの余りに力の篭った視線に大野さんは少し驚いたようだったけど、それでもふ〜って息を吐いて何か考えてくれてる。
ここは大野さんの何とかっていうコミュニケーション術に期待していいわよね。

「まぁ〜お前たちがそう言うのなら帰ってもいいんだけどさぁ〜」

え?
お、大野さん…新一たちの味方なの……

大野さんのそんな言葉に新一も服部くんももう用は済んだとばかりに、更に私たちの手を引いてこの場からさっさと出て行こうとした。
でも、大野さんの言葉はまだ続いてたの。

「この後にやる探偵倶楽部夏合宿恒例きもだめし大会、お前たちは蘭ちゃん和葉ちゃんとペアにもなる予定だったんだけどなぁ〜」

ええ〜〜?!
き、きもだめし…

私は思わずそこに驚いちゃったんだけど。
何故か、新一と服部くんの動きもピタッて止まったの。

「ここからスタートして、遊歩道をぐるっと回って帰って来るコースなんだけどさぁ。途中に墓地やお寺なんかもあって結構スリルあるんだよなぁ」
「そうそう、女の子なんかちょっと風が吹いて林がざわついただけで、キャーキャー言ってたよな」

大野さんに二宮さんまで加わって、去年のきもだめし大会の話をしてるんだけど。
このサークルって去年、そんなに女の子いたのかな?
なんて私がまた違うとこに意識を持っててると、隣でガタッて音がした。
?って思って隣を見ると、あれ?新一がまた席に座ってる。
和葉ちゃんの方を見ると、その向こう側に服部くんまで。

え?
何でなの?

今の大野さんの話のどこに、新一や服部くんを引き止めるモノがあったのかな…

和葉ちゃんと顔見合わせて、2人で首を捻ってみる。
さっぱり分からない。
でも、これって、今日はもう帰らないってことだよね。
新一と服部くんが椅子に座ったってことは、そういうことだよね。
今度は和葉ちゃんとニコッて笑顔を見合わせて、その顔のまま大野さんに尊敬の眼差しを送ったの。

大野さんてやっぱり凄い。
私たちには分からない暗号か何かで、新一と服部くんを一瞬にして引き止めてしまうんだもの。
東都大に通ってる人たちって、新一や服部くんもそうなんだけど、きっと頭の作りがぜんぜん違うのね。

そんな私たちの視線に気付いてくれた大野さんが少し照れながら笑顔を返してくれたんだけど、次の瞬間にはビクッてして顔を引き攣らせたみたいだったけど、それは逆巻さんの声に驚いたからなのかな。

「大野部長!では早速、きもだめしのペアを決めてしまいましょう!」

ってはりきっちゃったから。
しかも健司さんまでもが、
「チェックポイントのお寺と公園には俺と武志が待機してるからね〜」
って可愛らしいクマさんのスタンプをぽんぽんって押す格好までしてるのよね。

でも誰も新一と服部くんに、あれ帰るんじゃなかったのか?って聞かないところは流石だと思う。
それしちゃうと、絶対新一はまたスネちゃうから。





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あ〜お久しぶり過ぎる「新蘭の平和観察日記」
文体が違うのはもうどうにもなりません〜感覚取り戻すまで見逃して下さいまし(><)
それにしても蘭ちゃんと和葉ちゃんは、やっぱり可愛い♪♪
by phantom

「 ドライフラワーにするから、そんな心配しなくて平気よ 」



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