■ 19時大阪城 ■ 服部平次 | |||||
携帯のアラームを止めて、表示されたスケジュールと現在時刻の確認。 自分では選ばへんメロディーはこのアラームをセットした和葉のチョイスや。 朝昼に続く本日3度目のアラームは、約束の時間まであと1時間を告げとった。 いや、アラームはカウントダウンするように一昨日に1回、昨日は2回鳴ってたんやけどな。 和葉曰く、それくらいしとかんとオレが忘れるからゆう事らしい。 そこまでボケとらんわて反論してみても、過去のアレコレを根拠に持ち出されては素直に携帯を渡すしかなかった。 「こっからやったらまだまだ楽勝やな」 手にしとったメットを棚に戻して、グローブの品定めをする。 来年のお年玉の使い道第一位はメットとグローブて決めてあるから、今のうちにじっくり見とかんとな。 午前中は部活、そのあとツレらとラーメン食ってゲーセン適当にフラついてから家帰った。 勿論、待ち合わせまでは充分過ぎるくらい余裕アリでやったから、こうやって馴染みのバイクショップに寄り道かて出来たワケや。 「今度はこっちがええかなぁ……」 「せっかくやし、可愛いカノジョの分も新ししたり」 独り言にさらっと入ってきたんは、このショップの店主。 バイク買うた時から何やかやとずっと贔屓にしとって和葉連れて来た事も何度もあるもんやから、すっかり顔馴染みや。 「彼女やなくて幼馴染みやていつもゆうとるやろ。それに、アレのドコが可愛いんや。ボケるんは早いで、オッチャン」 「いっつもバイクのケツに乗っけとるオンナは世間様ではカノジョゆうんやで、兄ちゃん」 ニヤニヤ笑いながら届いたばかりらしい新作のライダースジャケットを並べとる店主のオッチャンに、効き目ナシとわかっとりながらも軽くガン飛ばしておく。 「今日はデートなんやろ?初売りは4日やで。ソレの色違いも入る予定やし、カノジョ連れて来いや」 「せやから彼女ちゃうて」 きっちり否定だけは入れといて携帯見たら、丁度ええ時間になっとった。 「ほな、年明けにまた来るわ。ええ年迎えてや」 「兄ちゃんもな」 店主のオッチャンに片手上げて挨拶して店を出る。 日が落ちたイブの街には華やかなイルミネーション。 『大阪城』なんアバウトな指定でも待ち合わせ場所がピンポイントで理解出来るんは、もう回数もわからんくらいに繰り返してきたからや。 「何や、まだ来とらんのか」 珍しくオレの方が先に着いたようで、いつもん場所に和葉の姿はない。 念のために辺りをぐるっと見回して和葉がまだ居らん事を改めて確認してから携帯を見ると、約束の時間にはまだ10分もあった。 「ま、こんな事もあるわな」 どっかソワソワと浮かれとる自分に苦笑したなるが、工藤なん昨日から電話にも出えへんくらい徹底しとるんやし、こんくらい可愛えモンやろ。 ……別に言い訳ちゃうし。 ポケットん中で携帯握り締めて、人混みに視線を流す。 人波の向こうからほっぺた赤くして走ってくる和葉を見つけてチラリと携帯に目をやれば、約束の時間を5分過ぎとった。 珍しい事もあるモンや。 ここはひとつ、先に来て待っとってやった事を主張しとこか。 「遅いで、和葉!」 |
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メリークリスマス! 何とか間に合いました。 今回は初心に戻ってピュアな高校生幼馴染みの平和です。 ……そうなってればいいのですが。 by 月姫 「 遅刻やで、和葉!寒空に待たせるなや!……ホンマに奢りやろな? 」
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