■ 19時大阪城 ■ 遠山和葉 | |||||
「髪型よし!服よし!バックよし!ほんでもって笑顔もよしっ!」 鏡の前でくるっと回って、本日のお出掛けスタイルチェック完了。 平次との待ち合わせんときには、必ずやるもう癖みたいなもんやな。 ここまで来るんにすでに2時間くらいかかっとるけど、平次にはこのあたしの涙ぐましい努力は伝わってないんやろなぁ。 そう想うと少しだけ顔が引き攣ってまうわ。 「……」 案の定、鏡の中の笑顔は我ながら、ぶっさいく、やった。 「あかん。あかん。アホ平次に相手に自滅したらドツボや」 気持ちをしっかり持たんと、がんばれあたし! ベットの横にある目覚まし時計を見ると、待ち合わせまでにはまだ余裕のある時間やったけど家でじっとしとるんもあれやし出掛けることにした。 家を出て通いなれた駅までの道を一人で歩く。 「あら和葉ちゃんおめかしして、今日はへ〜ちゃんとデートかい?」 「もう、おばちゃん。平次とはデートちゃうて言うてるやんかぁ。ご飯食べに行くだけやで」 「ふふ…相手がへ〜ちゃんいうことは否定せんのやね」 「お父ちゃんがディナー券くれたから、寂し〜平次を誘ってあげたんや」 「へ〜遠山さんも洒落たことするんやね〜」 駅までまだ半分いうとこで捕まってしもたこのおばちゃんは、長話で有名な上に機嫌を損ねると後が怖い。 以前、話を途中で断ったら、あたしと平次が婚約したいう噂が広まってしもて、あたしん家も平次んとこにもお祝いの品が届いたりして大変やったことがある。 怒った平次が噂の出所を調べたら、このおばちゃんやったんや。 ここはまだ時間もあるし、少しは話相手にならんとあかんのやろなぁ。 って思うてどうでもええ話に付き合っとったら、解放されるまでに30分以上の時間が過ぎ去っていってしもてた。 それでもまだ時間的には余裕があるから、いつものペースで駅に向かう。 その途中で今度は見慣れた後ろ姿を発見。 「大滝さん、こんなところでなにしてるん?」 「ああ、和葉ちゃん、久しぶりですなぁ。今日はへ〜ちゃんとクリスマスデートやってな」 「デートちゃうて。いつものご飯だけやで」 「まぁまぁ、そう言わんと。丁度本部に戻るとこやさかい、送って行きますわ」 出会って1分もせんもうちに、何でか覆面パトの助手席に。 まぁ、えっか。 「今日のデートは…その…おやっさんが」 「そやで。珍しゅうお父ちゃんが平次と行け言うてくれたディナー券やけど」 「やっぱりそうですかぁ…」 それがどないしたんやろか? 「そのレストランにへ〜ちゃん連れて行かんほうが」 「何でなん?」 「それはですなぁ…」 「もう、どないしたん?大滝さんらしゅうないで」 その後、大滝さんから聞きだした内容はあたしを慌てさせるに十分なもんやった。 やってな、そのレストランのあるビルで一昨日”密室殺人”があって、しかも未だに未解決。 そんなトコに平次連れて行ったら、ぜ〜ったいにクリスマスディナーなん食べられへんやんか。 「おやっさん、へ〜ちゃんが事件の謎解いてる間に、自分が和葉ちゃんとディナーするつもりなんですわ」 お父ちゃんも姑息やぁ… いやいや、感心しとる場合やないやん。 大滝さんはそれがどうしても気になって、わざわざあたしをあっこで待っとったらしい。 そんでもって場所の変更を勧めてくれたんやけど、クリスマスイブ当日に新しいお店を見つけるんは無理や。 「大滝さん、その事件詳しゅうおしえて!」 平次との待ち合わせまで後2時間、その間になんとしても事件解決せんと。 って言うてもあたしがそんなこと出来るはずもないから、ここは親友にさくっとヘルプコールや。 「あ、蘭ちゃん。今、工藤くん家?」 蘭ちゃんからの報告では、今日は1日中工藤くん家でラブラブ2人っきりのクリスマスのはずやから。 しかも工藤くんは昨日から携帯の電源切っとる言うとったし。 事情を説明したら蘭ちゃんから全面協力の申し出があった。 大滝さんから工藤くんに事件の説明をしてもらいながら、一路待ち合わせ場所やのうて事件現場へ直行。 渋滞は赤ランプとサイレンで難なくすり抜けたんやけど、それでも1時間くらいかかってしもた。 到着するとやっぱり黄色いテープや見慣れた制服がうようよ。 それらを突破して事件現場に突入。 工藤くんが気になる箇所を徹底的にチェックして、電話越しに報告する。 あたしと大滝さんの努力のかいあって、工藤くんの推理は一人の容疑者に絞られた。 すぐさまその人物の元に捜査員派遣。 「和葉ちゃん。落ちたそうや!」 事件現場で待つこと30分、やっと犯人確保の報告が大滝さんの元に届いたみたいや。 やっぱ持つべきものは、優しい親友と名探偵やな。 蘭ちゃんと工藤くんに心からのお礼を言うて、次の作業に取り掛かる。 警察、報道陣、野次馬の完全排除や。 警察関係者は顔見知りが多て、しかもどうやらあたしの事情を知っとるみたいでみんな協力的やった。 「和葉ちゃん、もう行ったほうがええで」 「そやそや、平次くん待たせたらあかんで」 「後は任せとき。なぁ〜んもなかったようにしといたるから」 「おおきに〜!ほな、たのむなぁ〜」 腕時計を見ると待ち合わせの時間まであと10分しかないやんかぁ。 あたしは可愛い格好なん気にせず、ダッシュで人ごみの中を走り出した。 明日、みんなにお礼と感謝の気持ちを込めてお菓子を作って差し入れしよう。 蘭ちゃんと工藤くんには、今度会うときに何か持っていこう。 そんなことを考えながらも足はせっせと動かす。 それでも約束の時間を過ぎてしもた。 このあたしが平次との待ち合わせに遅刻するなん初めてや。 平次のことやからきっとまだ来てへんとは思うけど、それでも心は焦りだす。 あと少し、あの… 「遅いで、和葉!」 |
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みなさまお久しぶりでございます。 もう今年は時間がないないで、結局最後の最後になってしまいました。 しかも、あまりに久しぶりに書いたので文章がおかしいですがお許しを〜 やっぱ平和っていいなぁ〜メリークリスマス♪ by phantom 「 5分なん4時間の1/48やで。待ったうちに入らへんわ。それに今日は”お父ちゃん”の奢りやから心して食べや! 」
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