平和のあとに 1
■ 和葉の悩み ■

あ〜どないしょ〜。
うろうろしとっても仕方ないんやけど。
え〜っと。
部屋の内をあっち行ったり、こっち行ったり・・・疲れた・・・はぁ。
「あっあかん!こんな事しとる場合やないやん。」
帰って来てまうやん。
時計止まってくれへんやろか?
うん?
ちゃうちゃう、時計止まったかて意味無いやん。
時間や時間!
「止まれ〜〜〜〜〜!!」


「・・・・・・目覚まし握りしめて何しとんのや?」


ギクッ!
ゆ〜くり振り返って、早くても同じなんやけど、声の主を一応確認する。
平次や。
そうやんなぁ。
ここ平次のマンションやもんなぁ。
窓から東都タワー見えとるし。
「おっお帰り。早かったんやね。」
「おお。今日は青山教授の刑事法だけやからな。それより、オマエこそ何やっとんねん?」
「なっ何でもあらへんよ。」
両手で握りしめていた目覚まし時計を、慌てて元の位置に戻す。
あかん・・・不自然過ぎや。
見上げんでも、平次の視線が痛い。
「和葉?」
「・・・・・・・・。」
「か・ず・は。」
はぁ・・・。
「あんなぁ平次。あたし大阪に帰りたいんやけど。」
「そやったら、今度の土日帰るか?」
やっぱそうくるか・・・。
「そうや無くて、むこうで・・・。」
「あかんで!おっちゃんの許しももろて、来年の受験までオマエの勉強みる約束やんけ。」
そう言うと自分の部屋に行ってしもた。


はぁ・・・。
あたしに、こんな悩みが来る日が来ようとは。


オーストラリアまで平次達が迎えに来てくれて、そのあたし達を園子ちゃんが迎えに来てくれて、途中ハワイで3日過ごして日本に帰って来たんや。
そやのに、日本に帰ってからも大変やったんや。
園子ちゃんが見た言うワイドショウはほんまやって、生まれて初めて報道関係の人らに追いかけ回されたわ。
平次と工藤くんは慣れとるかもしれへんけど、あたしと蘭ちゃんは始めてやん。
パニック起こして当然やろ。
しかも、あたしに向かってあの女のことを矢継ぎ早に聞くんやで。
どうせいっちゅうねん!
何であんたらに、そんな事聞かれなあかんねん。
そこで、平次の一言や。
「自分の女、迎えに行って何が悪いんや!。」
ってその人らの前で、あたしのことを抱きしめてん。
頭真っ白なあたしと、当然の様な平次。
あたしらの後ろでは、工藤くんも当然の様に蘭ちゃんの肩を引き寄せとった。
次の日のワイドショウで見てん。
まさか、自分をTVで見るやなんて。
大阪帰ってからは、もっと大変やった。
おとうちゃんには怒られるし、おばちゃんには心配されて泣かれてまうし、友達からは電話かかりまくりやで。
ついでに訳分からん、ファンレターらしきモンは送られてくるし。
平次のファンの女の子らから、苦情の手紙も天こ盛り。
平次が読まずに全部捨ててしもたわ。
ここまでは、まぁ、仕方ないちゅうたら仕方ないやん。
あたしにも責任あるんやし。
問題なんは、この後やねん。
もちろん、問題の中心人物は平次や。


剥がれへん・・・違ごた・・・離れへん。
平次があたしを側から、離してくれへんねん。






蘭の怒り
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