平和のあとに 14
■ 蘭と探に和葉と快斗 ■

「それで、蘭さんはどこから外に出たいのですか?」
私と白馬くんは、図書館の中を人目に付かないように移動してるの。
「やっぱり、正門から出たいかな・・・。」
すると白馬くんは拳を口元にちょっと当てて笑ったのよ。
「蘭さんならきっとそう言うと思ってましたよ。」
どういう意味かな?
私が不思議がってると、目の前のドアを開けて、
「では、ここで作戦会議といきましょうか。」
ってレディファーストみたいに先に私を中に即したの。



「どうせ和葉のことだから、正面突破とか考えてんだろう?」
快斗が腕組みして見下ろしてくるんや。
「あっあかんかな?やっぱり・・・。」
「別にいんじゃねぇの。その方が、アイツに与えるショックも大きいだろうしよ。」
なんか、楽しそうやね快斗。
「しかし、正門となるとここから結構距離あるんだよな〜。」
「ええ〜そうなん?どうすんの?」
「こうすんの!」
快斗はポケットから携帯を取り出して、どこかに掛け始めた。



私が案内された部屋には、数人の人がいてその人達の視線が一斉にこっちを向いたのよ。
「みんなにご紹介します。こちらは、毛利蘭さんっと言ってあの工藤くんの彼女ですよ。」
いきなりそう言って白馬くんは、私の背中をそっと押し彼らのテーブルに近づいていった。
「今日は彼女の為に、少し力を貸して欲しいのですが。」
「もしかして、さっきから工藤が探し回ってる彼女?」
「そうですよ。彼はここにも来ましたか?」
「来た、来た。」
「では。」
「いいわよ。面白そうじゃない。」
なんだろうこの人達。
「蘭さん、彼らは『推理小説愛好会』のメンバーで僕の協力者ですよ。」
「初めまして、毛利蘭です。お世話になります。」
早速、彼らは相談を始めたの。



快斗がどこかに電話してから、数分、続々と学生が集まって来たんや。
「心配すんなって。こいつら、みんな工学部のオレのダチ。」
そやかて、いったい何人いるんやろか。
「よう快斗。これで、一応全員揃ったぜ。」
「サンキュー弘希。」
「何始める気だ?」
「ちょっとしたゲームだよ。悪り〜な、わざわざ集まってもらってよ。こっちが遠山和葉ちゃん、あの服部の彼女だよ。」
「なっ。」
あたしが言いかける前に、快斗に「まぁ、黙って聞いてろ。」っと言われてもうた。
快斗は大ざっぱに経緯を説明して、
「だからよ、彼女を服部から守り通して無事に正門から外に出してやりてぇんだ。おめぇらももち協力してくれるよな。」
と締め括ってしもた。
全員賛成で、『和葉ちゃん脱出大作戦』って勝手にそこにあったホワイトボードに誰かが書いて、話し合いが始まったんや。



ジーンズのポケットに入れていた携帯が音も無く振動した。
新一?って思ったけど、小窓を見ると和葉ちゃんの名前だった。

「もしもし、和葉ちゃん?」
『蘭ちゃん、今、大丈夫?』
「うん、平気よ。和葉ちゃんは?」
『あたしは大丈夫や。それよりな、あたし工学部の人らに助けてもらうことになってん。』
「えっ、和葉ちゃんも!私も白馬くん達に協力してもらうことになったのよ。」
『ええ〜、蘭ちゃんもなん!白馬くんって、あの白馬探くん?』
「そうなのよ、たまたま図書館で会ちゃって。」
『そうなんや、やったら蘭ちゃんも何とかなりそうやね。』
「うん。和葉ちゃんも工学部の人達に助けてもらえるのよね。」
『うん。ほら前に蘭ちゃんが工藤くんと間違えた黒羽くん。偶然、彼にぶつかってもうてな、話ししたら工学部の人らと助けてくれる言うてくれたんよ。』
「え〜そうなの?」
『ほんま、世間って狭いって言うか。あたしも、ビックリやわ。それより、もしかして蘭ちゃんも正門目指してへん?』
「そう言う和葉ちゃんも、正門なの?」
『やっぱ、正面突破やないとな。』
「そうよね。」
『ほな、正門の外で会おうな蘭ちゃん。』
「いいわよ。じゃぁね、和葉ちゃん。」

これなら和葉ちゃんも大丈夫そうね。
「蘭さん、今の電話、和葉さんですよね。」
「はい。和葉ちゃんも工学部の黒羽くん達に助けてもらうみたい。」
あっ、名前言っても分からないよね。
「黒羽・・・そうですか。」
あれ?白馬くん知ってるのかな?
「やはり、プランBを先に実行しましょう。では、蘭さん行きましょうか。みんなも打ち合わせ通りにお願いします。」
なんだか、白馬くんさっきと雰囲気違うんだけど・・・。



快斗に言われて蘭ちゃんに電話したけど、これでよかったんやろか。
でも、快斗と始めて会ったようにせなあかんし、蘭ちゃんにああ言うのは不自然やないやんな。
「和葉ちゃん、どうだった?」
「えっ。」
あっ、そうや。快斗はあたしを”和葉ちゃん”、あたしは快斗を”黒羽くん”って呼ぶんやった。
初対面でいきなり呼び捨ては不自然やもんな。
「蘭ちゃんも白馬くんに助けてもらうみたいやわ。」
快斗、知ってるかな。
「白馬だ〜〜〜!?」
あれ?いきなり不機嫌になってしもた。どうしたんやろ。
「おいっ!早速、行動に移すぜ!まずは、偵察部隊。逐一報告よこせよ。次、カムフラージュ部隊。白いTシャツあるだけ集めて、女子に着せるんだぜ。最後、妨害部隊。出来るだけ服部の足止めしろよな。」
かっ快斗〜、気合い入り過ぎやで・・・。



いいのよね、これで・・・ただ新一に捕まりたくなかっただけなんだけど・・・・・ちょっと違う不安がよぎるんだけど・・・・大丈夫よね・・・・・・。



ええんかな、こんな大事になってもうて・・・・・平次から逃げ切りたかっただけなんやけどなぁ・・・・・何や先行が心配になってまうわ・・・・。






快斗と和葉に探に蘭 彼らの事情
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