久遠 -KUON- 1
■ ここから ■
はぁ〜、やっぱり来いへんのかなぁ。
あたしはもうかれこれ1時間以上は余裕で待ってるやん。
いつものことやけど。
しかも、今日の約束は昨日今日したもんやないしなぁ・・・。
平次やっぱり覚えてへんのや・・・。
きっと今日が何の日なんかも忘れてるんやろうなぁ・・・。

「  和葉 !! 」

俯いてしもたあたしに、突然降ってきた声。
平次!
覚えてくれてたん?!
って喜んで顔を上げたあたしに、

「何してんのや?こんなとこで?」

っと疑問満載の一言が続いた。
しかも、隣に綺麗な女性を伴なってや。

「あっ・・・・。」

「どないしたんや?誰かと待ち合わせか?」


・・・・まったく覚えてへんのや・・・・。


「・・・そうや。華月(かづき)待ってんのや。」

「ふ〜ん、そうか。俺はこれから府警や。ほなな、あんまし遅そうならんうちに帰れや。」

さっさと、それだけ言い残して女性を連れて行ってしもた。
あっ、人にぶつかった女性がとっさに平次の腕を掴んだ。
しかも、そのまま腕を組むみたいな形になって・・・見えんようになってしもた。


・・・・・・・平次を待ってたんに・・・・・・・・何やってんやろあたし・・・・・・・・・・・・・。


変やなぁ・・・・・・涙も出てきぃへんし・・・・・・。


・・・・・・・・・あんな綺麗な女性と腕組んで歩く姿を見たんに・・・・・嫉妬心も沸いてきいへん・・・・・・・・・・・。


何も感じへん・・・・・・・・・ナンニモヤ・・・・・・・・・・。


それから、どんくらいの時間そうしてたやろか。
何も考えずにただただその場に立っとった。

『引ったくりや〜〜〜〜!!誰かその男捕まえて〜〜〜〜〜〜〜!!』

おばちゃんの悲鳴に我に返り、慌てて声のする方へ目をやると、男がこっちに向かって走ってくるんが見えた。
『そこの女どけや〜〜〜〜!!』
あたしのことなんやろな・・・・って思った時には勝手に体が動いとった。
男の腕を掴んで走って来た勢いを利用し、そのまま男の体を宙に浮かせる。
あっあかん!!
男を投げ飛ばす方向に子供がおる!
「かまへん!そまま投げや!」
えっ?!
思った瞬間には、男を放しとった。
次にあたしが見たんは、真横に吹っ飛んでいく男の姿。
男はそのまま背中から噴水に突っ込んだ。
なっ何がおこったんやろか?
「いさましい女やなぁ。まさか、投げ飛ばすとは思わんかったわ。」
長身の男の人が吹っ飛んだ男を蹴り飛ばしであろう、右足を下ろしてるとこやった。
「あんたかてええ反射神経してるやん。投げ飛ばされとる男を真横に蹴り飛ばすんやから。」
あれっ・・・あたし初対面の男の人にこんな風に口答え出来てたやろか・・・・・。

『ありがと〜〜〜。あんたら、格好ええなぁ〜。』

おばちゃんのその一言に、周りから歓声が上がり始めた。
はっ恥ずかしい・・・・はよ、この場から逃げよ。
あたしがそう思うって早足にその場を去ろうとすると、さっきの男の人も一緒に付いてきた。
「なぁ、自分まだ時間あらへん?」
「それナンパしてんの?」
「ちゃうちゃう、俺、大阪ほんま久しぶりやねん。行きたいとこあるんやけど、案内してくれへんやろか?」
「はぁ?そのわりにはメチャメチャ関西弁やんか。」
「そらぁ、中学上がるまではこっちに住んどったからや。」
あたしらは小走りに噴水から遠ざかりながら会話してんねん。
何なんやろか、この眼鏡男は。
どっかで見たことあるような気もするんやけど・・・。
「もう、ここまで来ればええやろ。」
そう言うってあたしの腕も引っ張ってるやん。
「なぁ〜頼むわ〜〜。」
「そんなん言われたかてな〜〜。あたし初対面の男は信用せんようにしてんのや。」
「つれないなぁ。ほな自己紹介するわ。俺は、氷帝学園高等部3年 忍足侑士や。自分は?」
「あたしは、改方学園高等部3年 遠山和葉。」
あたしなんで自己紹介なんかしてんのやろ。
ほんま不思議やわ。
それより・・・・氷帝学園・・・・・忍足・・・・・・・あっ!
「あんたもしかして、テニスで有名やあらへん?」
そやっ、肩に担いでるんもラケット入れるバックやん。
「おっ、俺って有名やなぁ!」
「そやそや、友達が何や雑誌みて騒いどったわ。」
「和葉ちゃんは?」
「何勝手に名前で呼んどんの?!」
「そんなに睨まんでもええやん。俺のことも名前呼んでくれてかまへんで。」
「侑士ちゃん。」
「うっ・・・それはかんべんして〜や。せめて、侑士くんとか。」
「侑ちゃん。」
「まぁ、それでええわ。和葉ちゃんて、おもろい子やな。」
「あたしもテニスが格闘技やて知らへんかったわ。」
「うん?ああ〜さっきのは、たまたまやで。」
この人、ほんま不思議や。
すんなり、あたしの心に入り込んでしもてる。
さっき、あんなことがあったのにあたし笑ろうてるやん。

どっか壊れてしもたんかな・・・・あたし・・・・・。





すっかり
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