久遠 -KUON- 24
■ あのぼけ ■

「・・・・・やったら・・・・・やり直したる。」
「・・・・・平次?」
「お〜お〜、始めっからやり直したるわ!」
「あんた・・・・何言う・・・・てんの?」
「もう待てへんからな!思うてること全部言うたるわ!ちゃんと聞けや和葉!」

扉の裏側で一同、息を呑んで服部くんの次の言葉を待ってんのや。

「俺は和葉んことが好きや!!」
「・・・・・・・。」
「前におまえんこと『子分』言うたけど、あん時は自分の気持ちに気付いてなかっただけや!
 工藤にも散々ガキ呼ばわりされたしな、やけどほんまに分からへんかったんやから仕方ないやんけ!
 今は自覚しとるし問題ないやろが!
 それに、おまえも好きなら好きって何ではっきり言わへんのや!!
 お前がはっきり言うてたら、こんなややこしゅうなんでもえかったんやないかい!!」

『お〜〜〜やっ〜〜〜〜〜と言うたであいつ!』
『ほんまに今まで、ただの幼馴染やったんやなぁ。』
『うっうっ〜〜〜和葉〜〜〜よかったやん・・・・。』
皆は感動してるようやけど、うちの感想はちゃうで。
・・・・・・・・誰かあのアホ殴ってんか・・・・・・・・。
和葉が唖然とした顔してるんが目に浮かぶわ・・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・。」
「それにや、おまえ警戒心無さ過ぎや!!
 もっと男を警戒せんかい!!
 どこでも、無防備に寝くさりおって!
 それと勝手に一人でふらふらすんな!!
 何かあったらどないすんねん!!
 おまえは俺の側におったらええのや!!
 自分が女やってこともっと自覚せんかい!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「髪も早よ伸ばせ!!
 おまえにはそんな短いんより、馬のしっぽん方がよう似おうとる!!
 あん眼鏡が何言うたか知らんけど、もう絶対に切ったらあかんで!!
 ついでに、他ん男にヘラヘラすんな!!くっつくな!!話かけんな!!ええな!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

和葉の沈黙が怖いんはうちだけやろか・・・・。

「答えんかい和葉!!」
「・・・・・言いたいことはそれだけ?」

あっ、今の和葉の静かな一言で皆になったわ。

「それだけって・・・・・・・・。」
「言いたいことはそれで全部なん?平次?」

うちは思わず強張って力の抜けた手を押しのけて、ドアの隙間から二人を見たんや。
和葉の全身から絶対零度のオーラが出てるやん。
服部くんの不機嫌をあっさり凌駕しとるし。

「おっ・・・おまえはどうやねん。」
「あたし?もちろんあたしにも言いたいことはぎょうさんあるに決まってるやん。」
「やったら言えや!」
「う〜ん。そやけど、その前に・・・・。」


バタン―――――――――――ッ!!!


一瞬何がおこったんか分からんかった。
そん位、何の前触れもなく行き成りやったから。
余りの早業に流石の服部くんも対応出来へんかったみたいやわ。

和葉は綺麗に、あの服部平次を投げ飛ばしたんや。

「なっ・・・・何さらすんじゃボケッ!!」

しかも慌てて立ち上がった服部くんの胸倉掴んで、さらに屋上のフェンスまで追い詰とるし。
和葉がキレルとこうなるんやな・・・・・覚えとこ。
後ろん方からは、生唾飲み込む気配なんかもしとるやん。
これで少しは和葉にちょっかい出すヤツも減るやろ。
つでにあのボケのもな。

「ほなっ、あたしも言わせてもらうな。」

和葉がゆっくり息を吸い込んだんが、後ろ姿からでも分かる。
思いっきり言うたれ和葉!!


「   な〜〜に勝手なことばっかり言うてんの、こ〜〜の〜〜ドアホッ!!!!!   」


「いっつもいっつも、飛び出して行ったきりで危ないこと平気でしとるし、連絡もまったく寄こさへんの誰やったっけ?
 約束しても、ドタキャンに遅刻の常習犯やし、挙句の果てには完璧に忘れ去ってんのは誰なん?」
「うっ・・・。」
「好きなら好きって言えやて〜〜?
 蘭ちゃんたちの前で、どキッパリっと『お前のこと子分て思うてる』ってのたまう男に、可愛く告白出来きる女の子がおったらあたしが見てみたいわ。
 平次もそう思わへん?」
「いっ・・・。」
「それに前には『全っ然関係ない、ただの幼なじみでやましいてしょうもない女』とも言うてたよなぁ。」
「そっ・・・・・そうやったっけ・・・・ははは・・・・・。」
「お守りんことも『気色悪ゥ!早捨てそんな物!』って言うとったよね。」
「すっすまん・・・・・。」
「何や京都で初恋の人に会えたみたいやし。・・・・ほんま、これで誰が誰に何を言え言うん?・・・・ええ加減にしてほしいわ・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「ただの幼馴染で、推理ドアホで、工藤!工藤!ばっかりで、無神経で、デリカシーものうて、鈍感でさらに鈍うって、女の子に囲まれてはデレデレして、愛想だけはようて、態度もでこうて、言葉使いも悪うて・・・・それに・・・。」
「まだ、あるんかいっ・・・・・。」
「何か文句あるん?!」
「いっいえっ・・・・。」
「あたしより事件やし、あたしより剣道やし、あたしよりバイクやし、あたしより推理小説やし、あたしより工藤くんやし・・・・・。」




「それやのに・・・・・・・・・それやのに・・・・何で・・・あたしは平次やないとあかんのやろ・・・・・・。」


「何で・・・あたしは・・・・こんなにも平次のことが好きなんやろ・・・・・・・      えっ       !!!」




『『『『『あっ//////////////。』』』』』
//////////・・・・・・・・我慢出来へんかったんやな・・・・あのボケ。





そうなん いつまで
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