久遠 -KUON- 26
■ わからん ■

『ああ。かまへんわ。』
「ほんまに〜〜〜?」
『ほんまやて。華月ちゃんかて、これでよかった思うてんやろ?』
「そうやけど・・・・・。ほんまにほんまに、ええの?」
『疑り深い子やなぁ華月ちゃんは。俺ってそんなに信用性無いん?悲しいなぁ・・・。』
「 ない!! 」
『うわっ・・・ひど〜〜〜〜。』
「うちには、忍足くんがそんなに親切な人やとは思われへんからなぁ。」
『・・・・・・・・・・・。』
「それに、和葉のこと諦めたとも思えへんし。ほんま、何考えてんの?」
『・・・・・・・かなわんなぁ。そやけど、これも和葉ちゃんらには内緒にしてや。』
「わかった。誰にも言わへんわ。」
『俺、和葉ちゃんの側におれへんやんかぁ。そやけど、自分の話し聞いてたら危なっかしいやん和葉ちゃん、色んな意味で。今の俺にとっては、和葉ちゃんの安全が第一やねん。それになぁ、あの幼馴染くんもそのままやったら、あんまし当てにならへんやろ。心配やんかぁ、そんなんやったら。自分らがこっち来るまでの数ヶ月、俺安心出来へんことになるやん。それやったら、有名な西の名探偵くんに守ってもらった方が安心やんかぁ。』
「そうれはそうやけど・・・・・納得でけへん。」
『はぁ・・・・まぁ、後はこっちに来てからのお楽しみ!ちゅうことでええやんか。』
ほんま、何考えてるか分からん男やわ・・・。
いきなりうちに電話して来た思うたら、例の情報誌の提案やったし、しかも、和葉と服部くんをほんまにくっ付けよう言うし。
最初は冗談かと思たけど、どうもそやないみたいやったから、言われた通りにしたらほんまにその通りになってまうんやもんなぁ。
和葉のことを一番に考えてるんは、間違いないみたいなんやけど。
服部くんを和葉のボディガード代わりにしよう言うことなんやろなぁ。
確かに、服部平次の彼女にちょっかい出すアホも関西にはそうそうおらんやろうから。
そやけど、一番危険なんはあのボケちゃうん?
『後はこっちに来てからのお楽しみ』言うことは・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・まっ、ええか。
和葉が幸せなら、うちは何でもええわ。


それから、例の情報誌に二人のことが掲載されて、名実共に二人は恋人同士の称号を得たんや。
えっ?名実共にって何かやて?
それは、あれやんか、和葉のお父さんのお許し。
和葉の話やと、あの服部くんが緊張し過ぎて次の日、熱出して寝込んだんやて。
分からんでもないわ、和葉のお父さん、和葉のこととなるとめっちゃ人格変わってまうから。
服部くんとこのおばちゃんは、そらもう大喜びやったわ。
ほんまに、お赤飯炊いてもうたくらいやから。
うちも、ご相伴にあずかってん。めっちゃ美味しかってんで。


あの屋上は、今ではすっかり告白の名所になってしも〜てん。
やから、いつ行っても誰かおって、うちと和葉の内緒話の場所は図書室の隣にある書庫に移動や。
「和葉〜、来週のクリスマスはどうすんの?」
「どうもせんよ。何で?」
「何でって・・・・服部くんと恋人同士になって初めてのクリスマスやんか。二人でらっぶLOVEのクリスマスにせなあかんやん!」
「らっぶLOVEって華月・・・・・平次がそんなん出来る思う?」
「・・・・・・・・・う〜〜〜ん・・・・・・・・・・無理かも。」
「そやろ。そもそも、クリスマスをちゃんと覚えてるかどうかも疑問やねんから。」
「約束とかしてへんの?」
「してへんよ。約束したかて、どうせ事件が入ったらドタキャンされるだけやし。」
そうなんよなぁ、あのボケそこんとこちっとも直ってへんのやもんなぁ。
「和葉はそれでええの?」
「ええ・・・・ことは無いけど・・・・。」
「そやったら、やっぱりちゃんと約束した方がええんとちゃう?プレゼントにするんやろ、それ?」
和葉とうちは話しながら手も動かしてんねん。
和葉は深緑の毛糸で、うちは真紅の毛糸で定番やけどマフラー編んでるんや。
和葉、今はほとんど毎日服部くん家におるから帰ったらなかなか出来へんのやて、ばれるから。
「うん。やけど、ええわ。どうせ平次ん家におるんやし。約束してもせぇへんでも同じやんか。それに・・・・・。」
「それに?」

「・・・・・・・それに・・・・・・・・・何もないんやったら・・・・・・平次きっと側におってくれるから・・・・・・・・・・・・。」

そう言うて耳まで真っ赤にして俯いてしもた。
「和葉、めっちゃ可愛い!!!」
思わず抱きついてしもたわ〜〜〜。
ほんま、あのアホにはもったいない!
「かっ華月!縺れる。毛糸が縺れるって!」
うちらは、じゃれ合いながらまたマフラーを編み始める。
「忍足くんには?」
和葉は服部くんの彼女やけど、忍足くんの友達でもある。
服部くんは嫌がったみたいなんやけど、和葉は彼のことを友人と位置付けとるみたいや。
「侑ちゃんには、ちゃんとカード送るよ。」
「それだけ?」
「あかんかなぁ?」
ちょっと首を傾げて考えてるようや。
「今はそれでええんちゃう。」
「今は?」
「そう、今は。」
「何なん?その今はって言うの?」
「秘密や。」
「 ? 」
和葉の顔に?が出てるけど、彼が『後はこっちに来てからのお楽しみ!』言うたんは内緒やから。
やから、和葉は今は服部くんのことだけでええねん。
「服部くんもしかしてクリスマス楽しみにしてるんちゃう。絶対そうやで。和葉からのプレゼントぜ〜たい期待してると思うわ。」
「う〜ん。そうやろか?そやけど、平次のプレゼントは期待せんとこ。」
「え〜〜どうしてなん?」
「やってなぁ、今まで一度もくれたこと無いんやもん。もしかせんでも、プレゼントなん頭に無い可能性大やで。」
「・・・・・・。」
あのボケへの注意事項がまた1コ増えてしもた。
話題変えよ。
「それより和葉〜、例の鍵は毎日使ってんの?」
和葉が編んでいた手を止めて顔を上げて、笑った。
「使ってんで。寝る前にきっちりかけさせて頂いております。」
「あれもおばちゃんの提案やったけ?」
「そうやよ。平次に有無も言わさず取り付けたんやから。」
服部くんの部屋のドアの外に取り付けられた鍵のことや。
何の意味があるんかよう分からんのやけど、和葉の部屋には2コも鍵ついとるし。
そやけど、外から鍵が掛けられるようになってんねん。
和葉の終身以降、服部くんは部屋から外には出られへんってことなんや。
西の名探偵を毎日監禁できんのは和葉だけやろなぁ。
「文句言うてるやろ〜〜。」
「言うてる言うてる。何だかんだで、めちゃ煩い。」
「そうやろなぁ〜って和葉〜〜〜時間時間!!」
うちはふと目に止まった壁の時計を見てびっくりや。
気付けば外は真っ暗やった。
ついつい時間忘れてしもたわ。
「今日は・・・・。」
って言いかけたら和葉の携帯が鳴った。
もちろん、そこから飛び出してきたんは、いつもの怒鳴り声や。

「こ〜〜ら〜〜和葉〜〜〜どこで道草くっとんや〜〜〜!!!」





いつまで せっかく
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