久遠 -KUON- 28
■ あたしの ■

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プレゼント?

ってちゃ〜〜う〜〜〜〜!!
目を開けると、至近距離で平次の寝顔。
慌てて飛び起きて、そんままの勢いで平次をベットから蹴り落としたんや。
当然やん!何、勝手に人のベットに入ってきてんねん!

「・・・・・・・。」

そやのに・・・・・・・・起きへん、このアホ。
ほんまに寝てんの?
ベットの上から、そ〜っと覗いて見る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・爆睡・・・・・・ってヤツやんなぁ。

はぁ・・・・・・・一人で赤こうなってるあたしがアホみたいやん。
あたしのベットに入り込んで来て、爆睡かますって・・・・・・・・・・・・・どうなん?
これって、喜ぶべきなん?悲しむべきなん?
絨毯の上で大の字にっなって寝てる平次は、昨日出掛けて行った時の格好のまんま。

「 ? 」

首にリボン?
平次の首に赤いリボンが、リボン結びで結ばれてるやん。

「何でこんなんしてるんやろ?似合わへんのに・・・。」

「あっ!」

急いで平次を飛び越え、窓から庭を見下ろした。
昨日、あたしが足跡で書いた文字。
「はぁ・・・よかった消えとって。」
外は昨日の雪が嘘みたいに、無くなっとる。
でも、やっぱり寒い。
窓を閉めて、振り返って、机に置いたはずのプレゼントが無いことに気が付いた。
部屋ん中を見渡して見ても、見当たらへん。
最後はやっぱり平次を見てまう。
そう〜っと近寄って、ちょっと膨らんでいるセーターの裾を持ち上げる。
思わず笑みがこぼれてもうた。

「まだ、あたしプレゼントしてへんよ。」

セーターの下に大事に隠されとる、あたしが編んだマフラー。

でも・・・・・これやったら・・・・・腹巻みたいやん・・・・・。
って・・・・・・・・・・・・・・・・さずがにいくら鈍い平次でもマフラーくらいは分かるやんなぁ・・・・・・・・。
それに、彼氏に腹巻編む女子高生も普通に考えたらおらんし。
う〜〜ん、でも、相手は平次やし〜〜〜〜。
こと、恋愛関係およびイベントごとに関しては、あたしはまったく平次を信用してへん。
どうも、服部平次の辞書にはそこんとこ載って無いみたいなんやもん。
ほんま、いっぺん平次の頭ん中覗いて見たいわ。
自分のおかしな考えに、ついつい笑ってまう。

首のリボンもよく見れば、あたしがプレゼントに使うてたモンやったけど。

「サンタさんがあたしのお願い聞いてくれたんやったら、ありがたく貰うとこうかな。」

「メリークリスマス・・・・・平次。」

寝てるに平次にそっとそっと、小さなキスを。





「さっ、着替えて朝ご飯作ろかな。」
そう思て洋服箪笥に手を伸ばしたところで、改めて気がついた。

「・・・・・・・。」

いくら寝ているとはいえ、平次の前で着替えるんは・・・・。
「持って下りて、客間で着替えよ。」

「ちっ。」

「えっ?」

見下ろすと平次が慌てて口を押さえとるやん。
「へ〜〜〜い〜〜〜じ〜〜〜!!」
睨み付けて、両膝を思いっきり平次のお腹ん上に落とした。
「ぐえっ。・・・・・・・・・・・・いきなり何すんねん!」
「ほ〜〜〜〜〜、あんたはそんなこと言える立場なん?」
全体重を両膝に掛けてやんねん。
「あっ・・・アホ・・・・・やめぇって・・・・・・つっつぶれる〜〜〜〜。」
「何勝手に人ん部屋入って来て、好き放題してんの?」
「そっそら〜、あんなお願いされたら、ご希望に答えたらんとあかんかなぁ〜〜と。」
うっ・・・・・・やっぱり、あれ見られたんや//////////。
あたしが黙っとるのをええことに、
「お前かて、さっき貰うとこって言うてたやないかい。そやから、キスくれたんやろ。和葉ちゃん?」
なんてぬかしとる。
この男は・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「これ全部・・・・あたしにくれるんやんね。」
「ええで。なんやったら、今から証明したろか?」
ニヤニヤしながら何言うてんの。
「ほな、ま〜〜ず〜〜『ワンッ』って鳴いて〜〜、それから、『お手』。」
「・・・・・・・・・。」
「ほらほら、へ〜ちゃん。『ワンッ』やで、『ワンッ』。」
「・・・・・・・・・。」
「ご主人様の言うとこは、きかなあかんやん。『ワンッ』が嫌やったら、『ニャ〜』でもええよ。」
「俺はペットかいっ!」
「猫やと黒猫んなるしあんまし可愛無いなぁ〜。」
「誰が黒猫やねん!」
「首に鈴付けても、似合わへんやろうし〜〜。そやったら、やっぱ犬やんな〜。黒いペットって他に何がおったっけ〜?」
「やから、誰がペットやねん!」
「う〜ん?すぐには思い浮かばんわ。まぁ、黒色の雑種犬が妥当やんな〜。」
「人の話しを聞け!」
あたしは平次に上で腕組みして考える格好をしてるんを止めて、平次の頭の両側に手をついた。
今度は急に態度を変えてみる。
「昨日、クリスマスイブやったのに、あたし一人ぼっちやってん。」
「そっそれわやな・・・・。」
「めっちゃ寂しかってん。やから、サンタさんにあんなお願いしたんやで。」
「そっ・・・・・そうなんや・・・・・。」
ドキドキやけど我慢して、ギリギリまで顔を近づけて、
「やから〜これは〜あたしのやんな〜〜。」
平次に鼻の頭にチュッっとしてみた。
平次の目が見開かれて、頬がみるみる赤こうなっていっとる。
・・・・・・・・・あたしまで赤こうなったらあかん、あかん。
「お願いやから〜『ワンッ』って鳴いて〜なぁ。」
目ぇ潤ませて・・・・・・・・瞬き我慢すんのて辛い・・・・。
「・・・・・・・・・・・。」
「へ〜ちゃん。」
小首も傾げてみる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウ〜〜〜〜〜〜〜。」
何やの。それ・・・。
「こんなにお願いしてもダメなん?」
「ウオォ―――――――――――――――!!!」
びっくりするような大声で平次が吠えて、体制的にも形成逆転されてしもた。
「アホ―――――!!男やったら、狼やろが!!」
今度は平次が上から見下ろしてくる。

バタンッ!!

「  平 次  」

その一声で、瞬時に平次がフリーズしたんや。冷凍平次の出来上がり!

「あっ、お帰りおばちゃん!」
カチンコチンの平次を横にどけて笑顔でごあいさつ。

さっき、おばちゃんが帰って来たのに気付いとったから。
ちょこっと平次をノセテみたんや。

大成功やん!!

やって、たまには平次に勝ってみたいやん。
昨日をあたしを一人ぼっちにした、お仕置きや。


しっかり、反省してや平次!


そやけど、貰うたモンは返さへんよ。
今日、首輪でも買いに行こかなぁ〜〜。





せっかく ここまで
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