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久遠 -KUON- 29 | ||
■ ここまで ■ | ||
「和葉、これはここでええ?」 「うん。華月、その箱もういっぱい?」 「う~ん?もうちょい入りそうやけど、重とうなり過ぎるやろうからこんくらいでええんちゃう。」 「そうやね。ポチ~、次これな。」 他のダンボールにガムテープを貼っていた平次が、顔をこっちに向けてジト目で睨んどるけどかまへん。 貰うたんやし、ご主人様としては名前付けるんは当然やん。 ―――服部ポチ。 うん、うん。我ながらええネーミングやわ。 「あっ、和葉、チョコレートまだ残ってるやん!食べてもええ?」 ポチ~お手、とか言うて平次からかっとったら華月がチョコの袋を見つけたみたいや。 「ええよ。やって~~、あないいっぱいあったらなかなか食べられへんやん。」 「そらそうやわな~。今年のバレンタイン、チョコの獲得数、服部くんより和葉のが多かったんとちゃうの?」 「そんなことはないんやけど・・・。」 あたしはあげる側やったはずなんに、気が付けばチョコを貰いまくっとった今年のバレンタイン。 下駄箱の中、机の中はもちろんやし、女の子から『お姉さま』言うて渡されるし、挙句の果てのは下級生の男のからいくつもチョコを差し出されたんや。 何か間違うてるやろ? 「まぁ、仕方あらへんわ。あの服部平次を投げ飛ばしたんやから、そら男の子も女の子も惚れるって。くくくっ・・・。」 華月はチョコを食べながら、平次の方みて笑っとるし。 「いつの話をしてんの華月!・・・せやけど、誰が誰やら分からへんからお返しも出来へんやん。」 「アホ――!そんなんに、いちいちお返しなんぞいるかい!金がいくらあっても足らへんで!」 後ろから平次の声や。 「平次やあるまいし、あたしはちゃんとお返ししたかったんに~。」 「そんな金あるんやったら、俺に何か寄こせや!」 「はぁ?何でまたあんたにあげなあかんの。あんたがあたしにお返しせなあかんやんか!ほらっ、早うチョウダイ!」 平次の前に右手を差し出してやったんや。 そしたら、平次んヤツ、 「ワンッ!」 言うて右手グ~にして、あたしの手に乗せたんやで。 「”お手”ちゃう!こんな時だけペットになるな~~~~~!」 華月が苦しそうに笑うてんのが、むっちゃ聞こえてきた。 「もう、あんたら最高の漫才コンビやわ。」 「「 漫才コンビちゃうわ!! 」」 「相変わらず、息もぴったりなんやし~~。」 和葉が時々、俺んことをペット扱いするんを知っとるんは、コイツだけや。 毛利のねぇちゃんには絶対言うな!って言うてあるしな。 工藤にだけは知られたらあかん。 アイツのことや、からかうネタが出来た言うて喜ぶんに決まっとるからな。 「そうそう、和葉がご所望の品があったんやった。」 俺がいらんことを考えとったら、木更津がまた余計なモンを出しよった。 誰からやねん? 「総ちゃんから和葉へ、お返しやって。」 「沖田くんからや~~。めっちゃ嬉しい!」 総ちゃん? 沖田? 沖田総司やと―――――――――!! 何でここに沖田が出でこなあかんのや! いやっ、ちょう待て・・・・・・・・・お返し言うことは和葉がまず沖田にチョコあげたいうことやんか! いつの間に、そんなに仲良うなってねん!俺、聞いてへんぞ! そもそも、どこで知り合うたんや! 「かっ和葉、お前どこで・・・・。」 「どないしたん?平次?」 「な~~に焦ってんの?服部くん?」 和葉の?な顔と木更津のニヤニヤした顔がいっぺんに俺の方を向いた。 「沖田くんのこと?沖田くん華月のいとこやで。しかも、華月ん実家の隣やし。あたしもな去年の夏、華月ん家に泊めてもろた時に初めて知ったんやけど。めちゃめちゃおもろいんやで、沖田くん。しかも、華月の剣道の先生なんやて。」 「へっ?いとこ?じっか?となり?おもろい?せんせい?・・・・木更津、お前、何者やねん?」 「何者って、失礼やな~。総ちゃんは、うちのお母ちゃんのお姉さんの息子。ほんで~、うちは改方が近い祖父母のとこに居ったけど、ほんまの家は京都。で~、総ちゃん家はうちの家の隣にあって剣道の道場やってん。そんで~、気さくな総ちゃんは暇な時にうちに剣道教えてくれてんのや。分かった?服部くん?あ~それから、総ちゃんにはちゃんと彼女いてるから心配せんでもええよ。」 「言うてなかったけ・・・・?」 「聞いてへん。」 あの眼鏡だけやのうて沖田まで出てくるんか思うたやんけ・・・・・・・・・・・勘弁してくれや・・・・・まったく。 どうも、この二人つるましとったら碌な事せぇへんで。 「ありがとな華月、おかげで早う出来たわ。」 うちらは、それからもワイワイ言いながら、和葉の荷物纏めて一通り作業は終わりや。 「かまへんよ、どうせ暇やったし。それより、この部屋どうすんの?」 服部くん家にある、この和葉の部屋のことや。 「このままにしとく。おばちゃんが、どうせまた使うことあるやろうからって言うてくれてん。」 和葉がゆっくりと部屋全体を見回しとる。 そして、ダンボールの山を見て、 「まさか、こんなに荷物が増えるなん思うてなかったわ。」 とぽつりとこぼした。 なんやかんやでこの部屋出来てからは、和葉は多分、実家の部屋よりここで過ごす時間の方が多かったはずやからなぁ。 彼氏の部屋の隣に自分の部屋があるって、どんな感じなんやろ? 普通ではありえへんこの状況も、この二人やったから全然違和感が無かったんわ。 「でもこれからは、あたしの部屋の隣は華月やね。」 そうなんよ!4月から、今度はうちが和葉の隣やねん。 うちらは、氷帝の女子寮に入るんや。 「不束者ですが、よろしゅうたのみます。」 「いえいえ、こちらこそお世話になります。」 お互いに正座して、頭下げたりなんかしとると、 「な~~にを今更、似合わんことをしくさってんねん。」 不機嫌丸出しの服部くんの声。 このボケは、東都大の近くで一人暮らしや。 和葉はうちが貰うたわ。 「和葉~、寮ではペット飼えへんよ。」 「庭に繋いどいてもあかんやろか?番犬くらいにはなると思うんやけど。」 「どうやろ?一晩中、吠えられても煩いだけやん。」 「そうやんなぁ、でも放し飼いもあかんやろ?」 「誰かに世話してもろたら?」 「誰かって・・・・・・・工藤くん?」 「ええやない、それで。」 「お願いしてみようかな~。ポチの面倒みて下さい言うて。」 「ダァ―――――ホッ!何ぬかしとんじゃ、お前ら!」 ポチが吠えた。 腕組みして考える格好のうちらは、 「和葉~、ポチの躾けが出来てへんよ。」 「こない育ってもうてると、結構難しいんよ。やっぱ、子犬から育てた方がええやろか?」 「ほな、これ捨てる?」 っと笑わへんようにして、真顔で首を傾げとるんやで。 「ええ加減にせんかいっ!!ペットの遺棄は法律で禁じられとるんやで!あかんやろがそんなん!!」 あっ・・・・・アホや・・・・・・自分でペット言うてるし。 和葉とうちは我慢出来へんようになって噴出してもうた。 うちらの爆笑はなかなか収まらへんで、和葉の肩まで伸びた髪の毛がいつまでも綺麗に揺れとった。 普段はしっかりしてるのに結構天然入っとる和葉と、西の名探偵言われる程頭がきれるくせに和葉のこととなるとボケかましまくる服部くん。 ほんま、ええコンビやわ。 和葉と服部くんの名コンビが、二人が望む『久遠』であるとええね。 「久遠―KUON―」 おしまい |
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