― 子供に戻って反省しなさい! シリーズ@ ―

■ 不幸な事故 ■

「ら・・蘭・・・やっぱこれはマズイって・・」
「え?これって死ぬの?」
「いや、まぁ〜死にゃ〜しねぇ〜けど・・」
「だったらいいじゃない。」
蘭は不信気にソファーに座っている新一を見下ろした。
「ちゃんと服部くんは呼んでくれてるのよね新一?」
「一応・・・」
「だったらそろそろ来るころよね。」
「多分・・・」

「工藤〜〜〜!!来たったで〜〜〜!!」

新一の声が消えない内に、玄関のドアが開く音がすると同時に大きな声が響き渡った。
すると、さきまでの不機嫌な顔はどこへやら、蘭が笑顔で平次を迎え入れた。
「いらっしゃい服部くん。」
「お〜ねぇちゃん、なんやもう工藤のかみさんみたいやな〜。」
「もう何言ってるのよ。新一ならリビングにいるから、それより服部くん喉渇いたでしょう?アイスコーヒーでいい?」
「おお、悪いな。ほな、お邪魔すんで〜。」
平次がリビングに入って行くのを確認しすと、蘭はキッチンへと向った。

「はい。どうぞ。」
平次と新一の前に冷たそうな水滴の付いたグラスを、氷の軽やかな音共に置く。
「おおきに。」
平次はそう言うと、喉が渇いていたのだろう、一気にコップの中の液体を喉に流し込んだ。
そしてコップをテーブルに戻そうとしたところで、
「グァッ!!」
突然全身を硬直させて心臓の辺りを掴む。
さらには前のめりになり、ソファーから転げ落ちるとその場で激しく悶え出した。
「く・・・工藤・・・お・・おま・・・」
新一を信じられないという目で見詰め、何か言うつもりだったようだがそのまま気絶してしまった。
一方新一はその様子を、何とも言え無い表情で見ていた。

「お〜〜い!はっとり〜〜!生きてるか〜〜!」
新一はソファーに座ったままの状態で、その物体に呼びかける。
「はっとり〜〜!そろそろ起きろ〜〜!」

「なにさらすんじゃ〜〜!工藤!!」

ガバッと飛び起きたその物体は、へ?という顔で固まった。
「そんだけ元気があるんなら大丈夫だな。」
「は?へ?」
その物体は自分の現状を理解しようと、自らや周りを見回している。

「なっ・・なんじゃこりゃ〜?!」

「工藤!!お前、俺にアポトキシン飲ませよったなっ!!」
そう、平次は縮んでいたのである。
「俺じゃねぇ〜よ。」
「は?」
「私よ。服部くん。」
「はぁ〜?ねっ・・ねぇちゃん?」
蘭は腰に手を当てて上から平次を見下ろしている。
「そう、私なの。」
「な・・なんで?」
新一に向けられていた勢いも、相手が蘭となると流石の平次も削がれてしまう。
「何でかしらね?」
にっこりと笑ったその笑顔は白百合が咲いたみたいに華やかだが、平次の背筋にはナゼか冷たいモノが流れ落ちた。
新一はやれやれといった感じで、天井を仰いでいる。
「そうそう、解毒剤だったら今は無いからね。」
「なんで・・・ですか?」
蘭の気迫に負けて、平次は思わず敬語になってしまった。
「志保さんが学会の発表会の為にニューヨークに行ってるからよ。」
「・・・・・」
「1ヶ月は帰らないらしいから。」
「・・・・・」
「不幸な事故だと思って諦めてね。」
「・・・・・」

蘭の満面な笑顔に、顔が引き攣りつつも何も言い返せない平次であった。




ちゃんちゃん


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