― 子供に戻って反省しなさい! シリーズA ―

■ これどうすんの? ■

小さくなった平次が唖然としていると、工藤家のチャイムが鳴りました。
「蘭ちゃんいてる〜〜?」

「あっそうだった。和葉ちゃんも呼んでたんだった。」
蘭がいかにもワザとらしく、今思い出したと言わんばかりにポンッと右手を握って左手の上に置いた。
新一と小さくなった平次が、「ウソつけっ!」と心の中でツッコミを入れたのはここだけの話。

「いらっしゃ〜い和葉ちゃん!」
そんな二人にはお構いなしに、蘭はにこやかに和葉を迎え入れる。
「あれ?平次も居てんの?」
「うん。新一が、ちょっとね。」
「ふ〜ん、そうなんや。お邪魔しもてええん?」
「どうぞ。遠慮なく上がって。」
「ほな、お邪魔しま〜す。」
女子大生が二人揃えば、玄関からリビングまでのちょっとした間でさえ、話題は盛り沢山。
ワイワイ、キャイキャイはしゃぎなら新一と小さい平次が待つリビングへ。
「工藤くん、久しぶり〜。」
「いらっしゃい和葉ちゃん。」
「あれ?平次は?」
和葉はキョロキョロとリビングを見回すが、平次の姿が見付けられないようだ。
不思議に思いながらもソファーを回り込んで、そこで初めてその物体を見付けた。
「わ〜〜!何この子?めっちゃ可愛ええ!平次の小さいころにそっくりやん!・・・・・てか平次やん!!あんた何やってんの?」
と1人でボケとツッコミをこなし、難無く正体を見破った。
「流石は和葉ちゃん。大正解、その小さくて黒い物体が服部だ。」
新一は平次を露骨に指差して答えている。
「どしたんこれ?」
「これって言うなや!工藤も指差すなっ!」
「これやん?これ、これ。どしたんこのこんまいの?」
悲しいかな、和葉に動揺の色は一切見られず。
「さっきね、間違えて例のお薬飲んじゃったみたいなの。」
蘭は困ったねと言いたげに、溜息を付いた。
「何言うてんねん!ねぇちゃん・・・が・・・・・さっ・・・・・・・・・・・き・・・・・・・・・・・・・」
小さい平次の声は尻すぼみにフェードアウトしていった。
和葉の後ろから蘭に、さっきと同じ満面の笑顔で見下ろされたからである。

・・・・・・・・・・・こ・・恐い・・・恐過ぎやで・・・・ねぇちゃん・・・・・・・・・・・

「うん?蘭ちゃんがどないしたん?」
「な・・なんでも・・・ありません・・・」
「?」
急に俯いてしかも敬語で答える小さい平次に、和葉は不思議そうに小首を傾げた。
「ほら?アポトキシンの刺激って強いから、きっと服部くんまだ混乱してるのよ。」
「そうやんなぁ。そやけど、相変わらずアホやなぁ平次わ。」
笑顔を崩さずさらっと言う蘭に対して和葉はまったく疑うことをせず、さらには平次をアホ扱い。

「そやけど、志保さんが居てるんやからすぐ元に戻れるんやろ?」
「それがね。無理みたいなの。」
「何かあったん?それとも志保さん居てへんの?」
「そうなの。ニューヨークに1ヶ月程滞在するんですって。」
「そうなん?やったら、これどうすんの?1ヶ月このままなん?」
「仕方無いけど。」
二人して小さい平次を見下ろしている。
「その間、蘭ちゃんが面倒みるん?」

「ぜって〜〜にダメだっ!!」

今まで黙って聞いていた新一だったが、そこだけはどうしても譲れないらしい。
「やったら、工藤くんがこれの世話するん?」
「誰がこんなヤツの世話なんかするかよ。」
「やったら誰がすんの?あたしは無理やで?」
あっさり自分も却下した和葉。

「へ?」

今度は俯いて聞いていた小さい平次が、縋るような眼差しで和葉を見上げた。
平次は当然和葉が自分の面倒を観てくれるものだと、思い込んでいたようだ。
「そやって、あたし1人暮らしやし。それに、今週も来週もコンパの予約でいっぱいなんやもん。」
「こ・・コンパ〜?コンパって何やねん!俺そんなん聞いてへんで!!」
小さい平次は一瞬驚いて、それから怒鳴ってみせたが、何分コンパクトサイズなので迫力には多大に欠けてしまった。
その為、和葉にペシッと頭を叩かれて、
「何でた〜〜〜だの幼馴染のあんたに一々報告せなあかんの?関係無いやん!」
と一喝されてしまう有様。


はてさて、小さい平次の引き取り先はいずこに?




ちゃんちゃん
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