■ サクラチル ■。。。 |
『うっ・・・・・うっ・・・・・・・・。』 『ぐすん・・・・・・・。』 『ええ〜〜話やなぁ〜〜〜〜。』 「「 ・・・・・・・・・・・・・。 」」 「そやろ!ほな、これでみんなOKやな!」 ここは、改方学園3年1組。 集まっているのは、3年生各クラスの代表数名と前生徒会長の華月、そしてもちろん平次と和葉。 何をやっているのかと言うと、改方学園名物卒業生が在校生に残す何かを相談しているのである。 今年は華月の提案で、名物コンビ服部平次と遠山和葉主演の映画を製作することになった。 で、今日はその華月作台本の初お披露目だったのだ。 「ちょう待たんかい!!なんやこれっ!!だいたいや!『サクラチル』って何やねん!まだ受験の終わってないヤツかているやろが!」 平次のその発言に一同ジト目。 「服部くん。あんた自分の同級生をバカにしてへん?!!」 「はぁ?」 華月の一言には一同頷き。 『服部〜〜頭がええ〜んはお前だけやないで〜〜!』 「もう、平次自分が受かってから学校サボってばっかやから知らへんのやね。」 和葉までも呆れ顔。 「やから何やねん!」 「聞いて驚け服部平次!!今年は改方学園3年生総勢268名、全員第一志望に一発合格や!!」 「うっ・・・・ほんまかぁ?」 華月が胸を張っていばってみせた。 その他も平次を除く全員がうんうんと頷いているではないか。 「嘘言うてどうすんよ!改方始まって以来らしけどな。やから、今年は軍資金もぎょうさん出るんやで〜〜!」 それでも平次はこの映画には納得がいかないようだった。 「それやとしても、こん話はあかんで!」 「うっさい男やなぁ。あんたがラブストーリーはあかんやのキスシーンは出来んやの言うから、この華月さまが、大阪人らしい人情をテーマに書き上げたったのに何が気に入らん言うんよ?」 「人情ぉ〜〜?おもっくそ”仁侠”の間違いやろが!!」 「ふん。まぁええわ。ほな、あんたやったら、どんな話やったらOKなん?」 平次は腕を組んで考えてから、 「俺と和葉が出てればええんやろ。やったら、学園の事件もんでもええやんけ。」 とみんなに宣もうた。 すると。 『あんなぁ〜服部よぉ〜。俺らお前らがおるせいで、高校3年間で5回も殺人事件に遭遇してるんやで。』 『そやそや!こんなん日本中探したかて、オレらか帝丹の3年くらいやでぇ。』 『ほんまやわ。私らどんだけナマホンの事件見てるんやろかぁ・・・・不幸やわぁ。』 『今更、作りモンの事件なん観たないで〜〜。』 『同感や!』 などと一斉に返されてしまった。 しかも、 「ちょっと待ってぇな!あたしは関係ないで!事件呼び寄せるんは”平次だけ”なんやから!」 と和葉。 「こらっ和葉!!突っ込むトコはそこなんか!!」 「えっ?何か違ごた?」 平次の剣幕にも和葉はキョトン。 「だぁ〜〜〜もう〜〜〜〜うるさい!!多数決で決めるで!!ええなっ!!」 華月はもう平次の意見は無視することに決めたようだった。 「ほな、賛成の人。」 平次と和葉以外、全員賛成。 「はい!決まりや!決定や決定!」 「あかんちゅうたらあかんのや!!」 平次はまだ一人がんばっている。 「服部くん、ちょっと来ぃや。」 華月はとうとう平次を引っ張って廊下に出た。 「これは、あんたの為でもあるんやで。分かってんの?」 「何が俺の為やねん!」 「あんたまだ和葉に告ってへんやろ?」 「なっ!!!なんで俺が和葉に告らなあかんねん!!」 「声。大きいで。それに今更そんなん言うたかてバレバレやで。」 「うっ・・・・・。」 「分かってへんのやなぁ。ええかぁ、よ〜〜聞くんやで服部くん。卒業したらあんたは東京、和葉は神戸。そやろ?」 「それが何や。」 「和葉あんだけ可愛いんやでぇ〜。大学入って化粧でもしたら、そら今以上にモテルやろなぁ〜〜。」 「和葉がかぁ〜?」 「和葉やからや!!男が放っておくワケ無い思うんやけどなぁ〜〜。」 「・・・・・・・・・・。」 「どうすんの?和葉にめっちゃええ男の彼氏が出来たら?」 「・・・・・・・・・・。」 「あんたがそれで平気なんやったら、うち、もうな〜〜んも言わんけどぉ〜〜?」 華月が覗き込んだ平次の顔は苦虫を噛締めているようだった。 「この映画賛成やんな!」 「・・・・・・・・・・。」 「映画作ってる間に和葉に告るんやで。」 「・・・・・・・・・・。」 「え・え・な!!!」 平次はしぶしぶだがやっと頷いた。 「よっしゃ!!!」 華月はガッツポーズを作り、 「みんな〜〜〜服部くんのOKが出たで〜〜〜〜!!」 と平次を残して教室に戻った。 「早速やけど、場面ごとにクラスで担当してもらうことになるけどええ?」 『ええで〜〜木更津。丁度、6場面みたいやしな。』 『私らのクラスに大病院の息子がいてるから、3組は病院のシーン担当でもええ?』 「それ、ありがたいわ!」 『ホテルはオレん家の使うてええで!』 「やったら、5組はホテルのシーン担当な!」 主役の平次と和葉を抜きにして話はどんどん決まっていった。 「最後の自決するシーンはうちら1組が担当するな。場所は服部邸にて撮影させてもらいたいんやけど、和葉、おばさんに頼んでくれへん?」 ぼ〜〜〜ぜんと今までの状況を見ているだけだった和葉に華月が急に問いかけた。 「へっ?平次ん家?ええけど・・・・。」 和葉は平次がこれも猛反対するだろうと思ったのだ。 「ええよな?服部くん?」 華月が廊下でまだ腕組みしている平次に問いかけた。 和葉も心配そうに覗き込む。 「もう、何でも好きにせぇや。」 投げやりである・・・・がともかくOKみたいだ。 「ほな、みんな明日から忙しくなるけど、ええモン作ろなぁ〜〜〜!!」 こうして、『サクラチル』の制作は実行されることとなったのだった。 一方、和葉はさらに平次の顔を下から覗き込んで、 「どしたん平次?」 と大きな瞳で心配そうだ。 「なっ!」 平次はそんな和葉に慌てて飛びのいて、 「何もないわっ!おっ終わったんやったら、さっさと帰んで!」 とスタスタとカバンを持って行ってしまった。 その平次の耳が真っ赤になっていることに気付いたのは和葉と華月だけ。 だけど、和葉には?で、華月には「ふふふふふ。」だった。 平次がちゃんと告れたかどうかは、出来上がった映画を観れば分かるはず。 おしまい |
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