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nightmarenoveltop 「 Ⅳ 」
「 鈍感なボウヤ オマケ ―平次はどうしてたんだ?― 」

和葉に振られてからの平次は、新一や蘭が見ていられない程だった。
平次にとって初めて自覚して好きになった相手だった上に、振られたのも始めてだったから。
しかも、その相手が和葉ときた日には、自暴自棄になっても当然だろう。
余り笑わなくなり、誘われれば女と一晩過ごすようになっていた。
自分の部屋に帰りたくないのだ。
もちろん、大阪には一度も帰っていない。

さすがにこのまま放ってはおけない、と思った蘭は和葉から聞いた話を平次に無理矢理聞かせたのだった。
当然、蘭が伝えるのだから和葉の意図がストレートに表現されるわけがない。
その話には、大いに蘭の解釈が含まれていたのだ。

蘭は和葉が平次に罠を仕掛けたのは、最後の望みを賭けたと解釈していた。
そして、その望みも見付けてしまったリングによって砕かれたとも。
だから、もう初恋を忘れて自分を自由にするのだと。

平次にとっては、しかし、それは十分衝撃的な話だった。

まさか和葉が、18年間も自分のことを想っていてくれたなどとは想像だにしなかったからである。
あれだけ酷い扱いをしていたのに。
すぐには信じられなかった。
だが、和葉のあの言葉「これ以上平次に振り回されて辛い想いしたないねん」あの言葉は。
その時は、これ以上は「失恋したばりなのに」のことだと思った。
本当は「18年間の想い」のことだったのだ。

平次はこっそり和葉の様子を見に行った。

そこで、もう一度考え込む。

蘭の話とは、どうも和葉の様子が違う。
あれは、本当に自由を満喫しているようにも見える。

悶々と考え込むが、元来負けず嫌いな平次は、今回どうみても完敗な自分にムカついてきた。
しかも、このままでは和葉の勝ち逃げが決まってしまう。
何より、いくら他の女を相手にしてみても和葉ほど欲した相手はいなかったのだ。
この自分を完膚無きまでに負かした女が忘れられるはずがないと。

そして出た結論が、


 『自由が欲しいんやったらくれたるわ。
  そやけど、それは俺が大阪に帰るまでやで。』


なのである。

それからの平次は、いつもの彼に戻っていった。
和葉がそうなのだから、多少自分が遊ぶことも許されるだろうと。
しかし、どんなに申し込まれても彼女だけは作らなかった。
あの指輪の女も、あれ以来一度もまともに相手にせずに。


その後、大阪府警への配属が決まると和葉への見合い話を持ちかけ、
さらに、和葉の意見など無視して結婚してしまったのでした。



ちゃんちゃん。



by phantom