「服部はええよなぁ〜・・・・・・・腐るほどもらったんやろな〜・・・・・・・・なぁ?」 部活の帰りに男3人でマクドに寄って、腹の減りを満たしていたら一人がそんな事を言い出した。 「あぁ〜?なんの事や」 手にしたポテトを口に放り込み答える。 「また・・・ホンマにこいつはムカツク男やなぁ〜。今日はバレンタインや!チョコや!女や!」 いきなり席を立ってコイツなに叫んどんねん? 「そう考えると服部はええよなぁ〜。確実に一つはもらえるんやから・・・なぁ?」 ニヤニヤしながら2人が俺をみている。 まぁ・・・毎年なんだかんだ言ってアイツに貰ってるんは確かやけど・・・。 「・・・俺は欲しいなんて一言も言ってないで」 俺の何気ない一言に声を合わせて 「「お前は大阪一の幸せ者やぁぁぁぁ〜!」」 目の前で泣き崩れる男2人・・・。 ・・・これ以上何も言うまい。 黙ってコーラを飲もうと手を出したとき、後ろの方で聞き覚えのある声がした。 「和葉は今年のチョコはどないするん?やっぱり服部君にあげるん?」 「ん〜・・・今年は考えてない」 和葉なんでここにおんねん・・・・ん?・・・えっ・・・今なんて言ったんや? 背もたれギリギリまで座り、後ろの方に聞き耳を立てていると俺の連れがいきなり 「あれ?遠山やんけ。お〜〜い遠や・・・」 黙っとれ!話しが聞こえへんやろが!!しばくぞ!!! 「お前・・・連れを無言で威嚇するのはやめえや」 もう一人が俺の方をみてあきれた様にため息をついた。 「なんで今年はあげへんの?去年なんかあったん?お返しもらえへんかったとか?」 「・・・実はお返しも平次のオバチャンが毎年用意しててくれてな。なんかチョコレート以上のお返しをいっつも貰ってしまってて悪い気がするねん。それに・・・あげる意味がないんや・・・・・・去年かて・・・平次がな・・・・・・どうせならチョコレートケーキが食べたいなんて言うからアタシ頑張って作ってん」 俺?そんな事いうたか? 「そやけど結局事件があって行ってしもうて・・・、帰ってきたのがバレンタイン過ぎた4日後やってん。ケーキも硬うなってしまってあげられへん状態で・・・・・・・そんなん渡されへんやん」 おぉ!思い出したわ!そやそや事件があって九州に行ってたんや。 「じゃあ、去年はあげてへんの?」 女友達の問いに、和葉は首を横に振って 「一応・・・あげたよ。平次にも負けへんブラックでビターな市販のチョコ」 オマエなぁ・・・。 「それでも『なんやくれるんか?おおきに』ってもらってくれたんや。受け取ってくれるんは嬉しいねんけど......平次は市販のチョコでもうちが一生懸命作ったチョコレートケーキでもええみたいな感じやった......どっちでもええんやって事がようわかったわ」 まぁ・・・。どっちでも口に入れたら一緒やさかいな。 「口に入れたら一緒とか思ってるんやで。あぁ〜〜!!!こんなんやったらなんもあげへんかったほうがよっぽどかええわ!なぁそう思わん?!」 和葉の友達が大きく頷いて、 「そやね〜。女の気持ちが全く分かってないし、お返しもくれへんし.......服部君って見た目と違って案外鈍感でケチなんやね〜」 和葉の頭を撫でながら 「よしよし・・・ここは私がおごったるから元気だし!」 女共が笑って盛り上がってるとこ悪いんやけど・・・。 俺は笑われへんで。 毎年当たり前のように和葉からチョコもらって安心してたけど・・・。 今年は“ナシ”・・・・なんやな。 「おい服部!生きてんのか?少し白め剥いてるぞ」 「そらそうや。遠山の言う事はもっともや・・・お前が悪いんや。お前は大阪一最低な男や!」 俺の連れがなんや言うとるようやけど。 もうええ・・・なんとでも言ってくれ。 「・・・そや服部!気分転換にカラオケ行こうや!」 「おぉ!そりゃええ考えやなぁ!パァと騒いで男3人で今日の日を乗り切ろうや!」 そんな気分やないけど、家に帰って一人でおるのもなぁ・・・・・・・・・・・・よっしゃ! 「ほんなら行こか!」 和葉達に気がつかれんように店を変えて、その後カラオケいって家に帰ったんは夜の10時頃やった。 俺の家の前で和葉が空を見上げて立っていた。一瞬その横顔に見惚れてしまったが、俺はマクドでの会話を思い出し無愛想に和葉に近づいた。 「・・・なにしてんねん」 「平次!遅いやん!どんだけ待たす気なん!」 「誰も約束なんてしてへんやんけ」 俺は和葉を無視して家の中に入ろうとした。 「ちょっと待って・・・・・・・・・・はい・・・これ」 怪訝な顔で振り向くと白くキレイにラッピングされた箱が目の前に出された。 「なんや・・・このでっかい箱は?」 「チョコレートケーキや。うちが作ってんで。ありがたくもらっときや」 和葉が箱を押し付けるように渡してきた。 「チョコレート・・・」 「ちゃう!チョコレートケーキや」 こういう時は『ありがとう』やな。和葉がせっかくくれるやさかい。 「ありがとう・・・胃薬いるんか?」 「アホ!そんなんゆうなら返して!」 箱を取り返そうと必死な和葉を上手くかわしながら 「なんや・・・ちゃんと用意してあるんやったら、さっさとくれたらええのに。ケチくさいなぁ・・・」 俺が笑いながら言うと 「・・・・・・なぁ!・・・・もう知らん!」 和葉は真っ赤になって唇を尖らせて怒ってる。 また、やってしもうた・・・。 「・・・一緒に食べよか?」 俺がそう言うと嬉しそうに笑顔で振り向いた・・・・・・・今、怒ってたんちゃうんか?まぁ、ええけど。 近くの公園に行き箱を開けると 「なんや?これは?」 「なんやって・・・平次の顔をモチーフにした芸術的チョコや」 あぁ・・・ホンマや。色の黒いところとかそっくりやなぁ〜・・・・・・・・・って! 「生クリームがすくな過ぎるやんけ!俺はどんだけ黒いねん!」 「なんでぇ?見たまんまやん」 俺の横で大笑いしている和葉をみて俺は思った。 こ・・・こいつは一回仕返しせなあかんな・・・。 「なぁ和葉・・・去年チョコのお返しするの忘れてもうたから・・・いまからやるわ」 1度ケーキの箱を閉じて大事に横に置いた。 そして軽く和葉を引き寄せて・・・唇にキスをした。 ![]() 「これで去年のチョコのお返しはチャラやな」 「..・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「おい・・・大丈夫か!」 和葉が石のように固まったかと思えば、顔を真っ赤にしてオロオロし始めた。 「な・・・・・なん・・・・・な・・・・・・にし......たん今・・・・・・?」 俺がキスしたらそんなんなるんやぁ・・・・・・・へぇ・・・・・・・。 なんや..........・・・・・・・・・・・・・・・・・オモロイなぁ。 「今年のお返しは何がええか言うてみい?出来るだけ叶えてやるさかい」 「えっ!・・・そん・・・なら・・・・・・・・・」 今度は俺の方は不覚にも照れてもうたやんけ。 ほんま・・・オマエに振り回されぱなっしで癪やけど、まぁ・・・そんな俺も嫌やない。 たまにはチョコよりも甘い関係も悪うない・・・よな? |