「 雨隠の館 」 第 四 話 |
キィ・・・・キィ。 「ひっ・・・・・。」 何なんあの音。 どっから聞こえてきてん・・・・。 あたしはしがみ付いている平次の腕に、一層力を込めてくっ付いた。 胸で平次の腕を挟んでるなん関係無い。 やって平次もあたしを落ち着かせるように腕に手を乗せてくれたんやけど、意識はたぶんあの不気味な音の方へいっとるはずやし。 バタン・・・。 ドアが閉まったんやろか? コツン。コツン。コツン。 だっ・・・・誰かが歩いてるんや・・・・・・。 コツン。コツン。コツン。 近付いて来とる・・・。 平次は階段の後ろの方を見とる。 音はあっちから聞こえて来てるんや・・・。 あたしは恐さで、この靴音がどっから聞こえてるんかまったく分からへん。 しかもここ、音が変に響いてんちゃうん・・・。 コツン。コツン。 止まった? 恐うて目ぇ閉じてしもた。 「 おや。お客様でしたか。 」 ひえぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! なっ・・・なんなん・・・こん声ぇ・・・・・・。 人間の声ちゃう!! ひしゃげた蟇蛙がしゃべっとる!! それに・・・・この感じも異常やって・・・・・いきなりさっきより寒なったし、この・・・・腐った様な匂いはなんなん・・・・。 「すんません。急に雨が酷うなってしもて、勝手に雨宿りさせてもろてます。」 平次・・・なんでそんなに普通に答えてるん。 あたしは今だに恐うて、目開けられへんのに。 「 それは、さぞお困りでしょう。 」 「そうなんですわ。そんで何遍か声掛けたんやけど、誰も居らへんようやったんで、ドアも開いてたし、勝手に入ってしもてすんませんでした。」 「 それは申訳無いことをしましたな。ここには、わしとお嬢しか居りませんからな。 」 人ちゃう・・・・・こん声絶対に人とちゃうて・・・・・・・・・。 あたしは平次にこれ以上近づけない程近付いて、ぎゅ〜〜〜て腕に力入れたんや。 オデコも平次ん腕に押し付けて。 「大丈夫か、和葉?」 ぶんぶん、って首を振るんが精一杯や。 「そんなに寒いんか?」 「・・・・・・・・。」 平次の優しい声は嬉しいんやけど、体が震えて声が上手く出〜へん・・・・。 「 そちらのお嬢さんは、どうもお疲れのご様子ですな。お部屋にご案内いたしましょう。 」 「そらおおきに。ほな、お世話になります。」 いやっ・・・・いややぁ・・・・・。 「・・・・・・へ〜じ・・・・・。」 あたしは薄っすらと目ぇ開けて、半泣きの状態で平次を見上げた。 「大丈夫やて。そんなに体も冷えとらんみたいやし、少し休ませてもうろうたら落ち着くて。」 そう言うて、平次はあたしのオデコを指でコツンと弾いた。 そのちょっとした反動で、もう1人の人物が視界に入ってしもた。 「 !!!!! 」 あ”っ・・・・・・・・あっ・・・・・・・・・・!!!!! あれは何やの・・・・・・。 恐いモン見たさ・・・・・・・やなくて・・・・・・・・恐くて目が離せへんようになてしもた・・・・・・・・・・・。 あ・・・あ・・・あ・・・青い・・・・・・・・・顔も手ぇも髪も・・・・・・・・・・青いやん・・・・・・・。 それに・・・・それに・・・・・鱗みたいなんも付いとる・・・・・・・・・・。 目ぇなんぎょろっとしてでか過ぎやし・・・・・・・・・口にあるんは牙ちゃうん・・・・・・・・・・・・・。 「ひぃっ・・・!」 目ぇが合うてしもたぁ・・・・・・・・。 「 さぁさ、こちらへどうぞ。ゆっくりと休まれるがよかろう。 」 顔の端まである口がゆっくりと笑うた。 あたしの気力はここまでやった。 「和葉!!」 平次があたしを呼ぶ声が遠くに聞こえ・・・・・・と・・・・・・・・・・・る・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平次にはあれが見えてへんのや・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 |