「 雨隠の館 」  第 八 話
「へい・・・・・わっ!」

体に何か巻き付いたと思った瞬間、物凄い勢いで後ろに引っ張られた。
しかもとっさに目ぇ閉じてしもたから、ドアが閉まったんしか分からへん。
「うっ・・・。」
体中が痛い。
さっき締め付けられた痛みに今のが合わさって、息をするんも辛いくらいや。
「うう・・・・・へい・・じ・・・・・。」
余りの痛さに、なかなか目ぇが開けられへん。
「平次・・・平次?」
何度呼んでも平次からの返事がない。
痛みを我慢しながらゆっくり片目から開けていく。
「・・・・・・・・・ここ・・・・・・・・・どこなん?」
さっきまでおった部屋とちゃう。
薄暗い中にぼ〜っと炎だけがいくつも見えとるんやけど。
両目開いて見ても、他に何も見えへん。
も一度目ぇ閉じてから深呼吸をして立ち上がった。
恐無い言うたら嘘になるんやけど、ここまで来たらそうも言ってられへんし。
「あっ。」
少しづつ暗さに慣れてきた目ぇに、あるもんが見えてきたんや。
暗い壁にびっしりと並んでるんは・・・・・・窓・・・・・・・それとも鏡?
1番近いやつに近付いてみたら、あたしと後ろにある炎が映った。
やけど・・・・・離れると、あたしの姿の中に違う景色が現れる。
数歩下がって、全体を見回す。
「あれは・・・。」
あれはあたしと平次が初めに入ったあの赤い部屋や。
ベットが3つに机やドアがあるから間違い無い。

・・・・・・あのカーテンの後ろにはこの鏡があったんや・・・・・・。

なぜだか突然そう思うた。
やったら、あん時の誰かに見られてるように感じだ理由も納得がいく。
その他のんもよう見ると、見覚えがあるモンがいくつもあるやん。
「あっちのはさっきの部屋や・・・・これは・・・・・玄関やな・・・・・・。」
もう少し下がってみよ。
「平次!!」
もっと全部が見えるように下がろうとして、鏡の中に平次を見つけた。
「平次!!平次!!」
何遍呼んでもまた平次からの返事は無い。
「あたしの声は平次には届いてへんのや。」
鏡の中の平次は、ドアを片っ端から開けていってる。
必死にあたしを探してくれてるんや。
あたしも早、平次を探さな。
体の痛みは酷かったんやけど、そんなん気にしてられへん。
あたしは勢いよく出口を探そうと振り返った。

「ひっ!!」

飛び上がった。
正に、言葉通りにあたしは飛び上がって数歩後ず去ってしもた。

「 やっと気付かれましたか。 」

出た!
出た!出た!
あの・・・・あの・・・・青い妖怪や・・・・・。

「 普通はもっと早く気付かれるもんですけどけどなぁ。 」

「いっ・・・いつからそこに居ったん?」

「 あなた様がここに入らしてから、ずっとここに居りますが。 」

まったく気付かへんかったわ。
きっとこの部屋全体が生臭いからや。

「妖怪のくせにあんた存在感薄いんとちゃう。」

「 ・・・・・・・・・・。 」

あかん・・・・あかんやん、あたし。
こんな挑発的なこと言うてどうすんよ〜〜。
恐さで頭が回って無いんやわ・・・。
きっとそうや。

「 やはりあなた様には、私本来の姿がお見えになっていたんですな。 」

「青いカッパ・・・・やろ?」

「 失敬なっ!あのような下等な者共と一緒にしないで頂きたい! 」

「ほんなら・・・・青いカエルなん?」

「 あなた様はお目が悪いようですな。私はカワエロと申す由緒正しき妖怪でございます。 」

「カワエロ・・・・・エロ・・・・・・・。」

あたしはまた違う意味で、数歩下がってしもた。

「 また、好からぬ事をお考えで・・・・・。 」

妖怪のくせに溜息なん付いてる。
あたしも恐さが自分の許容量をオーバーしたんか、口が勝手に動いてまう。

「 お嬢がお待ちでございます。こちらへ。 」

そう言うて、カワエロいう妖怪はあたしの前を歩き出した。

付いて行くより他に無いんよな。

それが平次に逢える1番早い方法なんやて自分に言い聞かせて、あたしはその不気味な後姿を追いかけることにしたんや。





「落とし穴に落ちて、遠回り」
ああ・・・和葉なんかこんなんばっかや・・・・・すんません。
しかも、和葉ちゃんあまりの恐さに少々壊れ気味?
妖怪相手に喧嘩売っております(笑)

「平次〜〜!早よ見つけてくれへんとあたし何しでかすか分からへんよ〜〜!」

by phantom