■ 第 3 話 ■   by 大阪花子
「も…もしもし!」

『電話には出るな』と語る平次の目を無視し、和葉は発信者も確認せずに通話ボタンを押した。

和葉にとって、この空気は耐え難いものだったのだ。
自分の方が分が悪い為、余計に。

和葉の動揺したあからさまな行動に、平次の機嫌は急降下していた。

自分の為にいろいろと健気に努力をしていると言った和葉。
しかし、健気な努力をしている和葉など見たこともない平次は、自分の耳を疑った。

しかし、自分の努力が和葉に伝わらないように、和葉の努力も自分には伝わっていないだけかもしれない。
それに、あんなに頬を赤らめて照れたように逃げられたら、期待せずにはいられない。

そんな微かな自信を確信に変える為に、和葉の下を訪れ、この曖昧な関係に終止符を打つ覚悟だったと言うのに、それを拒むような和葉の行動は、空気が読めないにも程があった。


「うん、分かった!じゃあ明日学校で…」


和葉はクラスメイトからの電話を切り、一息吐いた。
電話に出たからといって、結句はその場しのぎに過ぎないと気付いたからだ。

さて、これから平次に問われるであろう事柄に、どう答えればいいのか。


“でも、これで一歩踏み出せたんじゃない?”


先程の東京の親友の言葉を思い出す。

もしかしたら、平次も一歩踏み出すために、ここまでやって来たのかもしれない。
じゃあ何故、こんなに機嫌の悪さ丸出しで自分を睨み付けているのか…
もしかしたら、『迷惑』の一言で片付けられてしまうのかもしれない。
今の平次の顔が、何よりそう語っている気がする…
しかし、期待せずにもいられないのも事実だ。


「オレ、逃げんな言うたよな?」

「え?」


平次は和葉の腕を掴み携帯を取り上げ、そのまま彼女を玄関の壁際へと追いやった。
そして、逃げ場を作らせないように和葉の両隣に手を付いた。


「平…」

「逃げんな言うたよな?」


同じ事を繰り返す平次の、あまりにも近い顔に、和葉は頬を染め直視出来ずに目を逸らした。


「逃げんな」

「…っ」


怒りが込められた平次の声に、和葉は恐る恐る視線を彼に戻した。

至近距離でまっすぐに見つめられ、和葉は自分でも分かる程顔が熱くなり、鼓動も早くなっていた。


「…なんで、逃げるんや?」

「に、逃げてないもん…」

「逃げてるやんけ」


赤くなった顔さえも隠す事を許されず、追い詰められた和葉の目は、不安と恐怖で揺れていた。


「なぁ、今のオレ怖いか?」


そんな和葉の様子に気付いた平次は、少し眉を下げて直球な質問をぶつける。
和葉はそれに小さく頷き、呟いた。


「それに、アタシばっか追い詰めて、逃げてるのは平次の方やんか…」

「なっ…!」


和葉の呟きに、平次は言葉がつまった。

別に逃げている訳ではない。
和葉の気持ちを確認してから、自分の気持ちを伝えようと思っているだけなのに。
つまり、それが逃げていると、和葉は言っているのであった。


「だってそうやんか!アタシ平次からまだなんの言葉も聞いてないもん!」


日頃の負けん気がこうをそうしたのか、今度は和葉が平次を攻め立てた。


「何か言いや!」

「…」

「なんよ!!男のくせに!!」


形では和葉が壁際まで追い詰められているのに、心では平次が追い詰められていた。

逆ギレした和葉に、平次は返答に困ったように目を泳がせ…
平次はこの後どうする?

「適当な言い訳を付けて、和葉の家から逃げ出した」   それとも   「腹を括り、心の内を暴露した」
「 かぼちゃのワルツ 」
< TRICK OR TREAT ? >
■ 「和葉は電話をとらなかった」バージョン  by phantom

和葉は携帯を開きかけたが、そのまま固まってしまった。
平次に腕を捕まれたからだ。
2人の間には場違いなテンポの軽い着メロだけが流れている。

沈黙が続く。

着メロが流れる。

沈黙が・・。

「 ダァ――――ホッ!!いつまで鳴らしとんじゃっ!!ボケッ!! 」

『ごっ・・・ごめんなさい・・・。プチッ。ツーツーツー・・・』

平次は和葉の手から携帯を取り上げると、相手も確認せずに怒鳴り散らしてしまった。
「ほれっ。」
しかも何事もなかったかのように、和葉に携帯を返す。
そして気を取り直して、
「さっきのは・・・」
と再度言いかけたが・・・。

トゥルルルルル。

今度は平次の携帯が鳴り始めた。

沈黙が再び。

トゥルルルルル。
トゥルルルルル。

ブチッ。

「 うっさ・・ 」

『 はっ〜〜〜〜と〜〜〜〜〜〜〜り〜〜〜〜〜〜!!!!!!』

平次の声を遮る程の工藤新一のお叫びが。

『 てめぇ〜〜〜!!蘭に怒鳴りつけるたぁいい度胸してんじゃねぇか〜〜〜〜!!!!』

「へっ???」

どうやら、さっき平次が怒なりつけた相手は毛利蘭だったらしい。
和葉に言い忘れたことがあったらしく、かけ直してきたのだ。
それを蘭の近くで聞いていた新一が、怒って速攻平次にかけて来たのだ。
さらに新一の苦情申し立ては遠山父が帰宅するまで続いた為に、平次はそのまま追い帰されてしまった。

何しに来たんだ服部平次?

平次くん今日の教訓 「 電話の相手はちゃんと確認せなあかんで! 」

ちゃんちゃん。
オマケだよん!
illustration by AMISO-HI MATERIAL
「かぼちゃのワルツ」top るーきー オマケがあるよ ↓
■ 第2話 ■   ■ 第4話 ■
■大阪花子のコメント■

皆様こんにちは(^^)
リレー小説、3番目は大阪花子です。
今回は和葉に携帯を取らして2人を焦らしてみました(笑)
中途半端な終わらせ方ですいません(-"-;)
でもリレー小説はまだまだ続きます!
私もこれからは、一読者として続きを楽しみにしています。
さて、次はどなたが素敵な話を書いてくれるのでしょう?
次回までのお楽しみです(笑)