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■ 第 6 話 ■ by micky |
部屋からでると、和葉が心配そうに平次を迎えた。 「…お父ちゃん、なんて?」 「…ん?……和葉に告白した事を言うたら、まぁ…ええで言うてた」 「ホンマに!」 「あぁ」 和葉は自分の両手を合わせ、大きく息を吐くと安堵の表情を浮かべた。 「…よかった…ありがとう、平次」 「………」 「…平次?」 「……俺、帰るわ」 そう言うと平次は玄関の方へと向かった。 「なっ!……ちょう待っ…待って平次!」 和葉が平次の後を追う。 玄関で靴の紐を結んでいる平次の腕を、和葉は思い切り掴んで揺すった。 「なぁ…お父ちゃんになんか言われた?そうなんやろ?」 「……アホォ。…大丈夫やって何遍言わす気や」 「やって…平次おかしいやん!なんかアタシに隠してるんとちゃう………えっ」 平次は自分の腕を掴んでいる和葉の手を引き寄せて……額に軽くキスをした。 そして互いの体を少し離して、平次は和葉にニッと笑った。 「…何があっても大丈夫や。なんせ鎖で繋がれた仲やしな。…ちゃうんか?」 「……うん。……そやけど」 心配する和葉の頭に、平次はポンと手を乗せた。 「…和葉はホンマにアホやなぁ。なんで俺みたいな男を好きになったんやろな」 「なっ、なに急に言うてるん」 「…でもしゃーなかぁ。俺みたいなええ男もそうそうおらんし」 「……自分で言うてたら世話ないわぁ」 「…お前みたいな女も…そうおらんし。…俺をいきなり投げ飛ばすんやもんあなぁ。おっそろしい女やぁ」 「…もう一回、投げよか?」 クスクスっと和葉が笑うのを見ると、平次はジーンズの後ろに挿していた帽子を取り出し、軽く払ったあとにツバを前にしてしっかりと被った。 「じゃあボチボチ…行くわ」 「…うん。気をつけてな」 平次は「おぉ」と、軽く手を上げると、玄関をあとにした。 「…もう平次君は帰ったんか?……なんかお前に言うてなかったか?」 「…ううん。なんも」 「…そうか」 「うん」 平次がどういう判断をしたのかは遠山には分からなかった。 目の前の和葉は寂しそうな表情をしているようだが、それでも何故か幸せそうな表情もしているようにも見えた。 「なぁ…和…」 「お父ちゃん!お茶でも入れよか?」 「え…あっ…あぁ。頼む」 和葉は台所へと足早に戻っていった。 遠山は平次の出て行った玄関を睨むように見ると、フッと笑って和葉の待つ台所へと戻っていった。 そして翌日、平次は四国へと向かった。 それから1週間が経つが、平次は和葉には何も一切連絡はない。 |
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和葉は平次の事を? 「探して会いにいく」 それとも 「信じて待っている」 |
「 かぼちゃのワルツ 」 |
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< TRICK OR TREAT ? > |
■「受けない」バージョン by 月姫 「事件解決への協力の依頼、残念やけどお断りします」 「そうか」 娘を優先させた決定は親としては嬉しい事だが、同時に立場は違えども『事件を解決する』という同じ目標を持つ者としては残念でもある。 遠山父のそんな気持ちを察したように深く頭を下げた平次は、顔を上げて『せやけど』と続けた。 「事件解決の力になれるかもしれんのに放っとくんはオレの性に合わんし、和葉もきっとオレらしないて言います。せやから、おっちゃんが紹介してくれるんなら、和葉にちゃんと言うてから行きたいて思います」 二択を迫ったのに第三の選択肢を出してきた平次に、遠山父は再び鋭い視線を投げた。 「和葉護るためなら嘘なんいくらでもつき通すし、必要なら離れます。オレが何も言わんといなくなったら、そら心配するやろし泣くやろけど、待っとってくれると思います。せやけど……」 遠山父の強い視線を真っ直ぐに受け止めていた平次が、一旦言葉を切ってふと視線を逸らした。 「オレが言える事ちゃうけど、和葉の性格、おっちゃんもよう知っとるやろ?」 どこか遠い目をする平次に、遠山父も娘の姿を透かし見るように目を細めた。 誰に似たのか、明るくて優しくて涙もろくて素直な可愛い娘は、ちょっとばかり意地っ張りでちょっとばかり気が強くてちょっとばかり頑固な所もまた可愛いのだが、ちょっとばかり勘が鋭くてちょっとばかりパワフルでちょっとばかり行動的な所が油断ならないのも事実だ。 もし平次が何も言わずにいなくなったとしたら、和葉は心配して泣きながらも待とうとするだろうけれど、その一方で彼を捜して無意識のうちに危険に近づきかねないのは想像に難くない。 または、和葉を優先して依頼を断ったとして、それを隠していたとしても、勘のいい彼女は恐らく気付いてしまうだろう。 もし平次が事件解決よりも自分を優先してくれた事を知ったなら素直に喜んで、けれど次の瞬間には彼に助けを求めていただろう人たちを思い出して深く悩んで、結局は背を押して送り出してしまうのだろう事も容易に想像できる。 「平次君の方が、和葉の事よう知っとるようやなぁ……」 少し寂しげに呟く遠山父に、平次は知らず知らずのうちに握り締めていた拳を緩めてほっと息をつく。 苦笑しているような平次の瞳が『そんなトコも全部ひっくるめて好きなんやけど……』と語っているのを読み取って、遠山父は楽しげに笑った。 |
オマケだよん! |
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