新蘭の平和観察日記 −7月31日金曜日D−
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「部外者の人には遠慮してもらいたいんだけど」 急にミーティングをする事になってどうしていいのか分からない私と和葉ちゃんに、そんな言葉が投げかけられた。 「別にいいだろう?どうせ蘭たちも一緒に行動するんだからさ」 「そやそや。大野さんかて了承しとるしな」 そう言って新一と服部くんはそのまま私たちを席に座らせようとしたんだけど、 「どういうことですか部長?」 「今日はサークルの合宿ですよね?部外者は関係無いと思うんですけど?」 「今回の合宿はお遊びなんですか?」 と女の子たちの矛先が部長の大野さんに向けられてしまった。 「あっ、いやっ、合宿って言うより少旅行的な……」 「「 合宿ですよね!! 」」 何とかその場を取り繕うとした大野さんの声を遮って、女の子たちの声が響く。 「そ…そうだね……」 ここに居る私たち以外全員の女の子に声を揃えて言われてしまい、大野さんは申し訳なさそうにこっちに向いた。 「蘭がダメなんだったら、俺も遠慮する」 椅子に手を掛けたまま止まっていた私の腕を引っ張って、新一がそう言ったの。 「和葉行くで」 しかも服部くんは和葉ちゃんの腕を引っ張って、この場を立ち去ろうとしているし。 「ちょっと待ってよ工藤くん」 「服部くんも。これはサークルの合宿行事なのよ」 そんな女の子たちの悲鳴に近い声がしても、二人はまったく気にも留めていない。 はぁ… 口には出さなかったけれど、心の中で盛大に溜息が零れた。 新一と服部くんの態度も気持ちも嬉しいけど、流石にこの状況に流される訳にはいなかいから。 一度足元に落とした視線をそっと和葉ちゃんに向けると、苦笑しながらも小さく頷いてくれた。 そして、 「平次。あたしらのことやったら、気にせんでええよ。それにここに居る間は、健司さんと翔子さんのお手伝いするつもりやから」 とやんわりと服部くんの手を自分の腕から外したの。 だから私も、 「サークルのミーティングなんだから、新一と服部くんは参加しないとダメでしょ?」 と下から上目遣いに少し戸惑っているその顔を見上げた。 「私たちのことはいいから。ね?」 本当にもう十分満足している。 私は新一に、和葉ちゃんは服部くんに大切にされているって分かったから。 新一は凄く不満そうに私を見下ろしていたけど、仕方無いって感じに肩の力を落とし「まったく…」と呟いてくれた。 これは新一が私の意見を聞き入れてくれた時の口癖みたいなモノ。 いつもこうやって仕方が無いなぁって振りをしながら、私の我侭を許してくれる。 だけど今日は少し違ったみたい。 「また後でね」 そう言って新一の背中を押そうとしたら、 「少しだけ待っててくれ」 と言う言葉と同時に額に優しい温もりが降って来たから、一瞬で私の顔は真っ赤に茹で上がってしまった。 新一はよくこういうことをするけど、まさかこんな注目の中いくら額とはいえキスをくれるとは思ってもいなかった。 「ちょ…平次…」 どう返していいか戸惑っていると、和葉ちゃんの慌てた声が聞こえたの。 だから額に手を当てたままそっと視線だけを向けると、服部くんが和葉ちゃんを抱き締めていた。 「すぐ終わるさかい、ええ子にしとれ」 それは和葉ちゃんの耳元で囁やかれた小さな小さな声だったけれど、近くにいた私はそのとてつもなく甘い声を拾ってしまった。 「……」 余りに驚きすぎて、何もかもが止まってしまった。 だって普段の服部くんからは、想像も出来無いような声音だったから。 和葉ちゃんも真っ赤になって、コクコクと頷いてるのが精一杯みたいだったし。 それから私たちはどうやってキッチンまで戻って来たのか覚えていない。 余りにも衝撃的な出来事が多すぎて、どうも自分たちの許容量を遥かにオーバーしたみたいなんだもの。 「ふふふ…圧勝おめでとう」 翔子さんが楽しそうに、声を掛けてくれた。 「なかなかヤルねぇ〜君らの彼氏殿は」 いやぁ〜まいったまいった、って健司さんは半分呆れたみたいに頭を掻いている。 「もう他の子たちは最後ので、完璧に固まってたわよ」 「若いって恐いなぁ〜」 「「………」」 もう、返す言葉もありません。 私たちは只管照れまくって、赤い顔を更に紅くするしかなった。 しばらくそうやって4人で楽しく時間を潰していたけれど、新一たちのミーティングはなかなか終わりそうになかった。 「なんか白熱してるみたいだ」 健司さんが様子を見て来てくれたんだけど、どうにも終わりそうにないらしい。 「まったく往生際が悪いわね。女は諦めも肝心なのに」 そう言ってる割には、どこか楽しんでる雰囲気が漂ってるんですけど。 「そうだ!少し散歩にでも行って来たら?」 今度は突然そう言われた。 「さん…ぽ…ですか?」 ここまで散々炎天下の中を歩いて来たんですけど。 「そう、散歩!健司とね」 「は?健司さんとあたしらが?」 益々意味が分からない。 ぽかんとしていると、 「ああ〜なるほどね。だったら、丁度夕食に使うチーズを近所の農場まで貰いに行くから、散歩がてらこの辺を案内してあげるよ」 と健司さんまでもが言い出した。 しかも、 「さっ着替えていらっしゃい。とびっきり可愛らしくね」 とウィンクまでされてキッチンから追い出されてしまう。 何だかよく分からないけどせっかくの好意を無駄にしたく無くて、私たちは部屋に戻って急いでまたワンピースに着替えた。 ここに来た時と同じく帽子も持って階段を下りると、 「うんうん。可愛いねぇ〜」 と健司さんがすでに出かける用意をして待っていてくれた。 「これ持って行ってくれる?」 翔子さんが私に差し出したのは白い花の花束、和葉ちゃんに渡したのは黄色い花の花束。 「うちで咲いた花なの、あいば農場の奥様に渡してね」 「「はい」」 可愛らしく綺麗に咲いた花を両手に抱えて、私たちはドアの外に出た。 翔子さんもドアの外まで見送ってくれて、 「行ってらっしゃい!!」 となんだか必要以上に大きな声で送り出してくれるから、 「「行ってきます!」」 とついつい釣られて私たちまで少し大きな声になってしまった。 笑顔で返してふとテラスの奥の窓を見上げると、新一と服部くんが驚いた顔をしてこっちを向いていたの。 |
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ああ〜なんだか意味無く甘〜いモードが意味無く続く展開に・・・はは・・・。 たまにはいいさ。蘭ちゃんだし。目指せ激甘!お〜!(笑) by phantom 「 ふ〜ん。見ているだけでいいんだ?だったら見ててね。私、健司さんとお散歩に行って来るから 」
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