新蘭の平和観察日記 −7月31日金曜日L−
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「はぁ〜なんとか形になって良かったわ」 「ほんとね。これで明日ちゃんとお礼に行けるね」 私と和葉ちゃんはあいば農場へのお礼を何とか作ることに成功して、やっとお部屋で一息付いてるの。 新一たちに買物を急かされたせいと、その帰りのドキドキで夕食が終わってからも何だか手元が覚束無くてお蔭でいつもなら僅かな時間で作ってしまえるお菓子に倍以上の時間を掛けてしまった。 和葉ちゃんはベットに腰掛けてた体勢から、そのまま後ろにバタッて倒れた。 「ああ〜このまま寝てまいそう・・・」 「ダメよ和葉ちゃん!そのまま寝たらいくら夏だからって風邪引いちゃうんだから」 私たちはノースリーブのワンピースを着たままだから、このまま寝ちゃうと絶対にまずいんだから。 「なぁ〜蘭ちゃん」 「ん?」 「この部屋シャワー付いてるんやけど、どうせやったら下のお風呂に一緒に入らへん?」 「せっかくだもんね。そうしよっか」 バックの中から寝巻き代わりにする短パンとTシャツを出して、その他の小物も準備、タオルだけは部屋に備え付けのものを借りることにした。 そして二人でおしゃべりしながら部屋を出ると、隣の部屋の前に数人、ううん、きっと女の子たち全員が立っていたの。 「あっ…」 一瞬凄く嫌な空気が流れた。 だって彼女たちは私たちを見るなり、とっても露骨に嫌な顔したんだから。 それでも新一たちの為にも穏やかに過ごさないといけないから、私も和葉ちゃんも自慢の演技力を発揮して爽やかにあいさつをする。 「こんばんは」 「皆はもうお風呂行ったん?」 それなのに、返って来たのは険悪な沈黙だけ。 ここはもう、早々に退散した方がいいみたい。 睨み付けて来るだけであいさつの一つも返してくれない彼女たちに、表面上は笑顔を保ったままその横をすり抜けようとしたんだけど、何を思ったのか通せん坊をしてきた。 「あの…お風呂に行きたいんだけど?」 「悪いんやけど、ちょっと通してくれへん?」 こんなに近くに居るんだから絶対に聞こえてるはずなのに、彼女たちはどけてくれるどころか、いつの間にか私と和葉ちゃんは周りをぐるりと囲まれてしまっていた。 「あなたたちこの合宿に何しに来たの?」 リーダー格みたいな女の子が腕組みをして、私たちを睨みながらそう聞いてきた。 もう、どうやらここから出しては貰えないみたい。 私と和葉ちゃんはお互いに小さな溜息交わして、 「あたしは平次に誘われたから」 「私は新一に誘われたから、来たんだけど」 と本当のことを答えた。 「いくら工藤くんや服部くんに誘われたからって、部外者のあなたたちがサークルの合宿に参加するなんて図々しいとは思わなかったの?」 「別に」 「全然」 あなたたちには悪いけど、私も和葉ちゃんもこういう場面には慣れてるのよ。 伊達に小さい頃からずっと、新一たちの側に居る訳じゃないんだからね。 「最低ね。よくそんなので、工藤くんと服部くんの彼女だなんて言ってられるわね」 「そんなん言うたかて、なぁ〜蘭ちゃん」 「そうだよね。本当に彼女なんだから仕方無いよね、和葉ちゃん」 こんな女たち相手にヘタに下手に出てたら逆に付け上がらせるだけだから、言いたいことははっきりと言う。 「少しは遠慮しなさいよっ!」 「誰になん?」 「健司さんも翔子さんも歓迎してくれたわよ?」 「あなたたち生意気なのよっ!」 「工藤くんもこんなののドコが良かったのかしら」 「服部くん可哀想〜」 「もしかして自分のこと可愛いとか思ってるんじゃないの〜」 「最悪〜。鏡見て来いって」 「あんたらこそ鏡見て来たらどうなん?きっとヤマンバが写るから」 「和葉ちゃんそれは言いすぎよ。本当のこと言っちゃたら悪いって」 「ちょっと服部くんに気に入られてるからって、何様のつもりなの!」 「ちょっとやないよ。ぎょ〜さん愛されてるから、心配せんでええよ〜」 「どうやって工藤くんを誑かしたか知らないけど、頭の悪い女はこれだから困るのよ!」 「本当にバカなのはどっちかしらね?新一はそこんとこ、ちゃんと分かってるから」 言い合いは段々とエスカレートしていく。 そして私たちを囲む輪も、段々と小さくなっていっているみたい。 ああ、分かってはいたけど、どうしていつもこうなっちゃうんだろう? 私は新一と、和葉ちゃんは服部くんと一緒に居たいだけなのに。 元々狭い廊下だったから、彼女たちの手はすぐに私たちの元まで届いてしまった。 服や髪を思いっ切り引っ張られる。 「痛い!イタイ!ちょう止めてぇや!」 背中合わせになってしまった後ろから、和葉ちゃんの悲鳴に近い声が聞こえた。 「いい加減してよね!」 そうは言ってみても、流石に女の子相手に技を仕掛けることも出来無いし。 私たちは自分の蒔いた種とはいえ、女の凄まじいケンカの真っ只中。 いつもことだけど、今回は場所は悪かったみたい。 もう少し広い場所だったら、せめて威嚇程度の構えは出来たのに。 「痛いっ!本当に痛いってばぁ〜〜!」 腕に爪を立てられた。 ビリッて何か布が破れる音も聞こえた。 和葉ちゃんの髪が私の頬に当たる。 きっとリボンを取られたんだ。 新一早く来て! いくら私たちでも、これ以上の我慢は無理だから! |
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あ〜あ、収拾付かなくなっちゃいました。(笑) by phantom 「 服部くんは”気障”じゃないわよ。そうね〜、服部くんは”お調子者”かな?だって弾丸トークだもの 」
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