新蘭の平和観察日記 −8月1日土曜日D− | |||||
私たちは笑顔で新一たちを送り出した。 「行ったね」 「うん。行ってもうたね」 新一の運転する車が先頭でその次が服部くん、最後に大野さんが運転する車が発進したんだけどペンションの敷地を出る手前で一度止まって、それから再び私たちの前までバックで戻って来たの。 その理由はきっと私たちが一緒に行くことを新一たちが居る前では言えなかった二宮さんが、車が動き出してからやっと大野さんに伝えたからだと思う。 「お待たせ。さっ、蘭ちゃんと和葉ちゃんも早く乗りなよ」 ほらね。 助手席から降りて来てくれた二宮さんが、後部座席のドアを開けながら私と和葉ちゃんを呼んでくれたから。 「ほな、あたしらも行って来ます」 「たまには影から彼氏の行動をチェックするのも面白いわよ」 「あは。なんだか私たちが探偵になった気分かも」 「おっ!浮気調査か?」 「もう何言うてるんですかぁ〜」 楽しそうに見送ってくれる翔子さんと健司さんに笑顔で手を振って、私たちは車の後部座席に少し大きなクーラーボックスを持って乗り込んだ。 すると大野さんが、 「君たちが一緒に行ってくれるなんて思わなかったよ」 と笑顔で話し掛けてくれる。 「迷惑やなかったですか?」 「そんなこと絶対に無いって。むしろ大歓迎かな」 「でも、彼女たちにはきっと嫌な顔されますよ?」 「行ってしまえばこっちのもんだって。それに女の子たちにはもちろんだけど、工藤や服部にもなるべく気付かれないようにすればいいさ」 二宮さんはもちろん、大野さんまでなんだかとても楽しそうなんだけど。 だから私たちも、 「よろしくお願いします!」 って笑顔で返したの。 それから最初の目的地である有名な作家の記念館まで、4人でずっと楽しくおしゃべりをしていた。 大野さんも二宮さんも私が思ってた以上に話し易い人たちで、会話は途切れることも無く気付いたら目的地に着いちゃったって感じ。 早い時間だったから駐車場にはそんなに車はなかったんだけど、大野さんは新一たちの車から少し離れた場所に車を止めてくれたの。 もちろん、駐車場に入る前には一応私と和葉ちゃんは外から見られない様に隠れたんだけどね。 「俺は先に行くけどさ、君たちはニノと後から来た方がいいよ」 そう言って車を止めると大野さんは、急いで新一たちと合流する為に行ってしまった。 もちろん私と和葉ちゃんはまだ隠れた姿勢のまま。 「もう少しだから我慢してな」 顔を下に向けたままだから、外がどんな状況なのか分からない。 だけど声だけは聞こえて来た。 『このまま2つのグループに分かれて行動しましょう。その方が狭い館内で、込み合わなくていいでしょ?』 『好きにしてくれ』 『では、車のグループでいいですよね?』 『ああ、ええで』 『やった!だったら私たちは服部くんに付いて行きま〜す!』 『でしたら、私たちは工藤くんのお供をさせて頂きますわね』 「まるで引率の先生やん…」 隣りからボソッて聞こえて来たのは、多分和葉ちゃんの独り言。 「カルガモ一家かもしれないよ」 だけど、ついそれに返してしまった。 「ぷっ…蘭ちゃん、それええわ」 私たちは変な姿勢のまま、声を抑えてお互いに笑いあったの。 「お待たせ。もういいよ」 外の声が聞こえなくなったころ、二宮さんが声を掛けてくれた。 やっと車の外に出ると、私たちは大きく背伸びをして綺麗な空気を思いっ切り吸い込む。 「もしかして、嫌な想いさせちゃったかな?」 そんな私たちに二宮さんが、申し訳なさそうな顔をしてそう言ってくれた。 「そんな事ありませんよ」 「そうそう。こんなん慣れっこやから、気にせんといて下さい」 ねっ、なんて私たちは笑って見せる。 「蘭ちゃんも和葉ちゃんも凄いな。俺だったら絶対にキレてるけどなぁ〜」 「だって、昨日より全然マシですよ?」 「ほんまやわ。この位やったら、いつものコトやし」 本当に昨日の女の子たちに比べたら、今の子たちはとても大人しい部類に入るもの。 「それにこんな風にこっそり新一たちの様子が覗ける方が、なんだかドキドキして楽しいかも?」 「それ言えてるわ。普段平次らが女の子らにどういう態度取ってるんか見れるんやからね」 そうなのよね。 こっちの方に興味が有るのよ。 だって、普通なら絶対に見ることなんか出来無いんだもの。 「やっぱ、君らは凄いよ」 流石工藤と服部の彼女だね、と言われてしまった。 入り口の所では、大野さんと松本さんと松岡さんがすでに入場券を買って待っていてくれた。 「あっ、いくらでした?」 「そんなのいいから、それよりこれ被ってくれるかな?」 差し出されたのは、お洒落なキャップ帽だった。 「俺と松岡ので悪いんだけど、一応念の為にさ」 そう言えば、さっき松本さんと松岡さんが被ってた帽子かも。 「ありがとうございます」 「ほな、お借りします」 私たちの今日の格好は、和葉ちゃんが袖がふんわりしたTシャツに短パン、私が半袖のシャツに膝上のGンズだからこのまま被っても可笑しくないはずだから、松本さんたちの好意に素直に甘えることにした。 「おっ、どんな格好しても可愛いね」 「もう、大野さんお世辞はええからぁ〜」 「煽てても何も出ませんよ」 可愛いなんて言われて、ついつい声が大きくなってしまった。 「しっ!あんまり騒ぐと名探偵たちにばれるよ」 「し〜〜」 「シ〜〜」 皆して、し〜〜〜、とやってから揃って小さく噴出した。 「俺たちが回りを囲む格好の方がいいと思うから、蘭ちゃんと和葉ちゃんはここね」 そう言われて私たちは背の高い大野さんたちに囲まれる形で、室内に入っていったの。 |
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なんか蘭ちゃんと和葉ちゃんが、名探偵二人を尾行してるみたいで楽しいです!(笑) by phantom 「 /////もう!強引なんだからっ!!でも、こんなコトで誤魔化されないんだからねっ!! 」
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