新蘭の平和観察日記 −8月1日土曜日21− | |||||
普通の大きさの車の後部座席に大人4人はやっぱり窮屈で、私と和葉ちゃんはほとんどくっ付いてる状態。 松岡さんと松本さんも頑張って端に寄ってはくれてるみたんなんだけど、2人とも体格いいから仕方ないんだけどね。 しかも私たちの膝の上には、大きなクーラーボックス。 さっき急いで乗り込んだから後ろにしまう暇はなかったし、二宮さんがオレが持つよって言ってくれたんだけど、これは”あいば農場”へのお礼だからと断ったの失敗だったかも。 狭い空間でこうも周りを囲まれちゃうと、いくらエアコンの効いた車の中でもとっても暑い。 「和葉ちゃん大丈夫?」 「そういう蘭ちゃんこそ」 でも結局”あいば農場”に着くまで、この状態が維持されたの。 だって窓を開けたりしてくれたんだけど、余計に暑くなっただけだったから。 だから車から降りたときに、後ろに座ってた私と和葉ちゃんと松岡さんと松本さんがいっせいに背伸びをしたのはお約束だよね。 「ああ〜気持ちええ〜〜」 大野さんが車を止めた場所はちょうど日陰になってて、気持ちのいい風も吹き抜けていた。 「オレら役得だったけど、蘭ちゃんと和葉ちゃんには悪かったね」 「仕方ないですよ。だってあの場合はああするより他に方法がなかったんだから」 松岡さんの言ってる『役得』って意味が分からないけど、あの場合は仕方ないよね。 命が掛かってたんだから。 「それにしても工藤と服部マジ怖ぇ〜!」 「それだけ蘭ちゃんたちがあの2人に大切にされてるってことだろ」 「そうそう。オレなんか服部に睨み殺されるかと思ったよ」 松本さんが肩を竦めると、大野さんと二宮さんもため息零してそれに答えてたから、 「新一いつもはもっと優しいんですけど…」 って新一のためにもフォローしてみたんだけど、 「「それは蘭ちゃん限定だよ」」 とあっさり返されてしまった。 しかも和葉ちゃんまで加わって。 新一、いつもみんなにどんな態度とってるの? 私がそんな疑問を浮かべてる横で、和葉ちゃんも私と同じことみんなに言われてた。 でも服部くんの優しさが和葉ちゃん限定ってのは、もちろん私も大賛成なんだけどね。 こんな風にみんなでワイワイ騒いでたからか、建物の中から武志さんが声を掛けてくれたの。 「いらっしゃい。よく来てくれたね。大野たちも久しぶり」 そしたら、 「ご無沙汰してます、相場先輩」 と大野さんたちが私たちより先に返してしまった。 え? せんぱい? 私も和葉ちゃんもぽかんとした顔をしたものだから、みんなから逆に不思議そうに見られてしまった。 「あれ?知らなかったの?」 「どうやら健司のヤツ何も言ってないみたいだな。まったく」 二宮さんが不思議そうに、武志さんが呆れたようにそう言ったけど、私たちは本当に何も聞いていない。 「相場先輩は健司先輩と同期で当時『探偵倶楽部』の部長と副部長だったんだ」 「え〜!そうやったんや。健司さん何にも言うてへんかったから、サークルとは関係ないんやって思うてたわ」 私も和葉ちゃんの言葉に、うんうん、と頷く。 「あいつはその時その時の会話に必要ないことは、全部省くからな。だからいつも肝心なことが相手に伝わらないんだ」 「去年はオレたちも紹介されなかったよなぁ〜」 「だったなぁ」 松本さんと松岡さんも、私たちと同じ経験したってことよね。 「まぁ、もうあいつのことはいいか。どうせあの性格は今更どうしようもないしな。それより、こんな所で立場話もあれだから、中においでよ。冷たいモノでもご馳走するからさ」 「流石、相場先輩は気前がいい」 「健司先輩はコーヒー1杯でも、金取るからな」 「頼むから、俺とあいつを一緒にしないでくれ」 二宮さんと大野さんの言葉に武志さんがあまりにも嫌そうに言うものだから、 「「 は〜い ! ごちになります ! 」」 って、私たちみんなでそう返した。 「……お前ら、彼女たちと随分仲がいいんだな?」 クスクスと笑いだした私たちに、武志さんはとても不思議そう。 「なんせオレたち戦友ですから、なっ和葉ちゃん、蘭ちゃん」 「はい。共にコソコソした仲なんです」 「それにみんなで大脱出もしたし」 益々に不思議そうな武志さんに、これまでのコトを話しながら昨日健司さんと一緒に行った涼しい室内に向かったの。 そこにはもちろん武志さんのお母さんがいらしゃったから、持っていたクーラーボックスから今朝和葉ちゃんと2人で焼いたケーキを取り出して、昨日のお礼です、と差出すととても喜んでくれて、それなら今早速頂きましょう、と言ってくれて私たちみんなに切り分けてくれることになった。 そして冷たくて美味しいジュースと一緒に出された私たちが作ったケーキは綺麗にデコレートされてて、本当にお店で出されるケーキみたいになってたの。 「凄いな。これ、2人で作ったの?」 「私たちが作ったのはケーキ本体だけです」 「それがこんなにオシャレになるなん、おばさま凄い!」 「そんなに煽てたら、今日も大量のお土産持たすわよ」 「あ、いえ、それ…は……」 とてもおちゃめなおばさまで、みんなも私たちのケーキを美味しそうに食べてくれたから私も和葉ちゃんも大満足。 それから暫くみんなで楽しい時間を過ごして、いざ帰ろうってなったときに和葉ちゃんが、 「車にまた6人も乗ったら暑いやんかぁ?やから、アタシはこっからは歩いて帰るわ」 だって。 確かにね、私も流石にあの状態には戻りたくないかも。 そうしたら、武志さんがとてもステキな提案をしてくれたの。 |
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蘭ちゃんと和葉ちゃんは、いつもステキな人々に囲まれて幸せそうです。 そしてステキな提案とは? あ〜あ、○数字がなくなっちゃった・・・(笑) by phantom 「 ダメ!もう待てないんだから!行くわよ!新一覚悟っ!! 」
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